脱毛化を防ぎ、ふさふさした毛髪を取り戻す方法として、幹細胞を使って、消失したり、死滅していく毛包を再生させる方法が可能性として残されている。ただし、これまで、毛包を生成する幹細胞を十分な数だけつくり出すことが不可能だった。University of Pennsylvania (Penn), Perelman School of MedicineのPathology and Laboratory Medicine and Dermatology准教授、Xiaowei "George" Xu, M.D., Ph.D. と同僚研究者の研究論文が2014年1月26日付Nature Communicationsオンライン版に掲載され、その中で成体細胞を上皮幹細胞 (EpSCs) に変換する方法が述べられている。

 

ヒトあるいはマウスの成体細胞を使って上皮幹細胞をつくることに成功したのは世界でもこれが初めてである。免疫系を損なわれたマウスに上皮幹細胞を移植すると、様々なタイプのヒトの皮膚や毛包の細胞を再生し、構造的にまぎれもない毛幹さえ形成しており、研究が進めば人の毛髪を再生することができるようにさえなる見通しも出てきた。
Dr. Xuの研究チームには、PennのDepartments of Dermatology and BiologyやNew Jersey Institute of Technologyの研究者も参加し、皮膚繊維芽細胞と呼ばれるヒトの皮膚細胞の研究から取りかかった。


研究チームは、細胞に3種類の遺伝子を加えて人工多能性幹細胞 (iPSCs) に変換した。iPSCsには体のどの細胞タイプにでも分化できる能力がある。
さらに、iPS細胞を上皮幹細胞に変換した。通常上皮幹細胞は毛包のバルジと呼ばれる部分に見られる細胞である。
Dr. Xuと研究チームは、これまでに他の研究チームが実現したiPSCsを角化細胞に変換する手法から始め、細胞の受け取る成長因子のタイミングを慎重に調節し、iPSCsに大量の上皮幹細胞をつくらせることができた。
Dr. Xuの研究チームのプロトコールは18日間でiPSCsの25%を上皮幹細胞に変換することに成功している。生成された上皮幹細胞はその表面に滲出するタンパク質で浄化された。
ヒトiPSC由来の上皮幹細胞の遺伝子発現パターンとヒト毛包から採取した上皮幹細胞を比較し、研究チームが目標としていた細胞ができていることを確認した。
次に、研究チームは、生成した細胞をマウスの毛包誘導真皮細胞と混ぜ、免疫系を損なわれたマウスの皮膚に移植した。その結果、それぞれがまさしくヒトの表皮と構造的にヒトの毛包と似た毛包を形成していた。
Dr. Xuは、「毛包の上皮部分を生成できる上皮幹細胞をさらに規模を拡大できる量で生成したのは世界でもこれが初めてだ」と述べている。
さらに、「この細胞は、傷の治療、美容、毛髪再生など様々な用途が考えられる」とも述べている。とはいえ、Dr. Xuによれば、「iPSC由来の上皮幹細胞はまだヒトに使う段階には至っていない。まず、毛包には、体の管壁や腔壁の内側を覆っている上皮細胞の他に真皮乳頭と呼ばれる特別な種類の成体幹細胞が含まれ」ている。

Dr. Xuの研究チームは、毛包を生成するためにiPSC由来のEpSCsとマウスの真皮細胞を混ぜ、毛包の成長に成功している。
Dr. Xuは、「毛が抜けるとどちらのタイプの細胞も消失する。私たちの研究で、毛包の上皮部分という難問の一つは解決したが、もう一つの真皮乳頭細胞を再生する方法を見つけ出さなければならない。しかし、まだ誰もその難問を解決していない」と述べている。
さらに、Dr. Xuの研究チームがiPSCsを生成するために用いたプロセスでは、発がん性のあるタンパク質をエンコードした遺伝子を含むヒト細胞の遺伝子組換えを行っているため、この部分をさらに改善しなければならない。それでも、Dr. Xuは、「幹細胞研究者は様々な代替策を開発しており、化学薬品のみを用いる方法も考えられている」と述べている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Gone Today, Hair Tomorrow !

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