11,000年前の伝染性イヌがんゲノムの秘密
サイエンス出版部 発行書籍
通常、がんは患者が死ぬと一緒にがん細胞も死んでしまうが、イヌのある種の性感染性がんはそうではない。2014年1月24日付Science誌に掲載された研究論文で、Director of the Sanger InstituteのProfessor Sir Mike Stratton (写真) の率いる研究チームは、11,000年にわたってイヌの体内で生きてきたこのがんのゲノムとその進化過程について述べている。 この研究結果について、イヌ科遺伝子学専門家のDr. Heidi ParkerとDr. Elaine Ostranderが著した解説がScience誌の同じ号に掲載されている。研究チームは、イヌに伝染する性感染性器がんという現存する世界で最も古いがんのゲノム配列を解析した。このがんは、世界中に見られ、イヌの性器にグロテスクな腫瘍ができるというもので、11,000年ほど前にただ一匹の犬がこのがんにかかったのが始まりである。そのイヌは死んだが、その前に交尾して他のイヌにがん細胞を伝染させており、がんは他の患者の中で生き残った。この11,000年の寿命を持つがん細胞のゲノムはこれまでに200万回の突然変異を繰り返しており、これはヒトのがんの大部分が1,000回から5,000回程度の突然変異しか繰り返していないことを考えるとケタ違いである。 研究チームは、定期的に突然変異を繰り返す「分子時計」のような遺伝子を調べ、このがんが地上に現れたのは11,000年前と推定した。Science誌掲載の研究論文の第一著者で、Wellcome Trust Sanger InstituteとUniversity of Cambridgeに所属するDr. Elizabeth Murchisonは、「驚くほど長寿なこのがんのゲノムは、適切な環境条件の下では、がんは累積で何百万回も変異を繰り返
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