Buck Institute for Research on Agingの研究によると、ごく一般的なOTC医薬品の鎮痛解熱剤イブプロフェンが健康長寿に役立つかも知れない。2014年12月18日付オープンアクセス・ジャーナル「PLOS Genetics」オンライン版に掲載された研究論文は、イースト、ワーム、ミバエにイブプロフェンを継続的に投与した結果、その寿命が伸びたとしている。

 

Buck Institute のCEO、Brian Kennedy, Ph.D.は、「非常に興味深い研究結果が出た。人間の通常服用量相当量のイブプロフェンを継続的に投与した結果、実験生物の寿命が平均15%伸びた。いずれも単に寿命が伸びただけでなく、投与したミバエもワームもいずれも非常に健康が向上したようだった。研究の結果、まだ判明していない何らかの加齢プロセスにイブプロフェンが影響を与えていることが推察される。この結果から、加齢現象を研究し、理解する新しい方向性がつかめた」と述べている。


Dr. Kennedyは、「しかし、何よりも重要なのは、この研究からいわゆる『アンチ・エージング』医薬品を開拓する新しい戸口が切り開かれたことだ」と述べ、さらに、「イブプロフェンはどの家庭の薬箱にも見つかる比較的安全な医薬だ。
既存の療法には人の健康寿命を延ばす効果を持つものがあると信じて間違いないし、それを研究しなければならないと思う」と続けている。この研究は、Buck InstituteとTexas A & M's Agrilifeプログラムの共同研究の成果だった。
AgriLife Researchの生化学者、Michael Polymenis, Ph.D.は、研究の手始めにまずイーストを使い、その後ワームやミバエに移った。
Texas A&M Universityで生化学と生物物理学学部の教授も務めるDr. Polymenisは、「3年間の研究プロジェクトで、あらゆる生命体の細胞に必ず存在するアミノ酸の一種、トリプトファンをイーストの細胞が摂取する能力がイブプロフェンで強化されることが突き止められた。

人間は、人体にも不可欠な栄養素、トリプトファンを食物のタンパク質から摂取している。Dr. Polymenisは、「まだその機序はつかめておらず、研究する価値があると思うが、この研究で、ごく一般的で人体にも比較的安全な医薬が基本的に様々な生命体の寿命を延ばす効果を持っていることが証明された。
従って、イブプロフェンよりも寿命を延ばす効果を持った薬剤を見つけることができるはずだ。そ
れができれば人間の健康寿命を引き伸ばす可能性も生まれる」と述べている

。Dr. Kennedyは、「Dr. Polymenisが私のところに来て、博士の細胞サイクル解析と私達の加齢研究とにどんな関係が成り立つだろうかと言った。彼はきわめて独特な特性を持つ薬剤をすでにいくつか見つけていた。私達もその薬剤で加齢に何らかの影響が出るかどうか調べてみたかったから、ラボで実験してみた。一方、Buck Instituteの研究者は、なぜ人は老いると病気になるのかを突き止めようとしていた。そこで私達は、加齢プロセスを理解すれば、老化を調節し、加齢プロセスを遅らせることで人間の健康な長寿化も可能なのではないかと考えた。それが私達の究極的な研究目標だ」と述べている。

イブプロフェンは、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) に分類される薬剤で鎮痛、解熱、消炎などの効能がある。
1960年代初期にイギリスで開発され、当初は処方薬だったが、広く用いられるようになると、1980年代には世界的にOTC医薬品として市販されるようになった。

世界保健機関は、イブプロフェンを基本的保健医療制度に必要な「必須医薬品リスト」に加えている。イブプロフェンは比較的安全と考えられ、広く用いられているが、副作用もあり、高用量では消化器官や肝臓を害する。
Buck Instituteのポスドク・フェローで、この研究論文の筆頭著者を務めているChong He, Ph.D.は、実験生物での健康寿命の伸びは人間の場合には12年くらいの健康寿命に相当すると述べ、「私達の研究の予備的データでは、イブプロフェンはワームの寿命も伸ばすことができた。
健康なワームはよく動き回るが、イブプロフェンを投与したワームは通常予想するよりもかなり長時間動き回った。また、加齢しても予想以上に早く食べ物を取り込んだ」と述べている。

この研究の他の参加者: Buck Institute のDr. Scott K. Tsuchiyama、Dr. Bhumil Patel、Dr. Alena R. Faulkner、Dr. Ruilin Tian、Dr. Mitsuhiro Tsuchiyaの各氏、Texas A & M University, the Department of Biochemistry and Biophysicsの Dr. Quynh T. Nguyen、Dr. Samuel R. Terrill、Dr. Sarah Sahibzadaの各氏、ロシアのRussian Academy of Science (RAS), Syktyvkarの Institute of Biology of Komi Science Center of Ural BranchのDr. Ekaterina N. Plyusnina、Dr. Mikhail V. Shaposhnikov、Dr. Alexey A. Moskalevの各氏、University of Washington, Department of PathologyのDr. Matt Kaeberlein。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Ibuprofen May Extend Heathy Lifespan

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