ワニだけが持つ超効率的ヘモグロビンの謎を解明
サイエンス出版部 発行書籍
インパラは時速80キロ以上のスピードで駆け抜け、9メートルもの距離を一気に跳び越えることができる。しかし、その金メダル級の運動能力は、サハラ砂漠以南の川辺では通用しない。水中から姿を現したナイルワニがインパラを捕らえるとき、その悪名高い歯は後ろ足に食らいつき、2000キログラム以上の力で顎を食い込ませる。しかし、インパラが死ぬのは水が原因である。深い呼吸をするワニは獲物を深いところまで引きずり込んで溺死させるのだ。ワニが待ち伏せに成功したのは、ナノサイズのスキューバタンクであるヘモグロビンが血流に乗って、肺から組織へゆっくりと、しかし着実に酸素を送り込むからである。この特殊なヘモグロビンの超効率性から、生物学者の中には、なぜ世界中の顎のある脊椎動物の中で、ワニだけが呼吸を最大限に活用する最適な方法を発見したのだろうと考える者もいる。 ネブラスカ大学リンカーン校のジェイ・ストルツ博士らは、ワニや鳥類の祖先である2億4千万年前の古生物のヘモグロビンを統計的に復元し、実験的に復活させることによって、その理由について新たな洞察を得た。ワニのヘモグロビンのユニークな特性は、以前の研究で示唆されたようなわずか数個の重要な突然変異を必要とするのではなく、赤血球の複雑な構成要素を散在させる相互に関連した21個の突然変異に由来していることが判明したのである。この複雑さと、1つの突然変異がヘモグロビンに引き起こす複数のノックオン効果により、自然界が数千万年かけても辿り着けないほど迷宮入りの進化経路が形成されたのかもしれないと、この研究者は述べている。 この研究の筆頭著者で、ネブラスカ大学のウィラ・キャザー生物科学教授であるストルツ博士は、「もし、そんな簡単なことなら、ほんの少し変えるだけで、誰もがやっていることだろう。」と語った。ヘモグロビンはすべて、肺で酸素と結合してから血流に乗り、
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