犬の脳サイズ減少は家畜化の結果ではない?新研究が示す進化的要因
サイエンス出版部 発行書籍
家畜動物の脳サイズ減少は「例外」ではない――新しい研究が示す犬の脳進化の再考。 ハンガリーのエコロジー・ボタニー研究所(Centre for Ecological Research, Hungary)に所属するラースロー・ゾルターン・ガラムセギ博士(László Zsolt Garamszegi, PhD)と、スウェーデン・ストックホルム大学(Stockholm University, Sweden)動物学科のニクラス・コルム博士(Niclas Kolm, PhD)は、犬の家畜化が脳サイズの減少を引き起こす主要な要因とされる従来の考えに疑問を呈する研究を発表しました。本研究は、系統比較手法(phylogenetic comparative method)を用いて、家畜化された犬(Canis familiaris)が他のイヌ科動物と比べて、体サイズに対して特異的に小さい脳を持つかどうかを検証しました。 この研究成果は2024年8月5日にオープンアクセスジャーナルBiology Lettersに掲載され、「The Reduction in Relative Brain Size in the Domesticated Dog Is Not an Evolutionary Singularity Among the Canids(家畜化された犬の脳サイズ減少はイヌ科における進化的特異性ではない)」という論文タイトルで発表されました。 家畜化と脳サイズ減少に関する従来の仮説とは? これまでの研究では、家畜化は脳サイズの減少に大きな影響を与えると考えられてきました。その理由として、採餌、競争的な交配、捕食者からの回避といった行動が家畜環境では求められず、脳の代謝コストが高いために選択圧が緩和されることが挙げられています。例えば、家畜化された犬は、その野生の祖先であるオオカ
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