カンサス大学の研究チームを含む共同研究によって、動物の健康が改善され、米国の養豚産業が毎年数100万ドルの節約が出来るようだ。ウィルス学者で、診断医学と病理学教授のレイモンド・“ボブ”・ローランド博士は、共同研究の分担として、PRRSウィルスにより発症するブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)に対し易感染性のブタを、認識する遺伝子マーカーを発見した。
PRRS">による米国養豚業界の年間被害額は6億ドル以上にのぼる。「本発見は、まさに“初”です。PRRSの類いではもちろん、大規模な家畜感染病でも初めての発見です。私はこの業界に20年いますが、このような大きな進歩は初めてです。」と、ローランド博士は語る。ローランド博士はアイオワ州立大学のジャック・デッカーズ博士、そして農業研究事業団のジョアン・ラニー博士と共に、 量的形質遺伝子座(QTL)と呼ばれる遺伝子マーカーを発見した。このマーカーが、PRRSウィルスに対する易感染性に関連しているのである。2011年12月28日付けのJournal of Animal Science誌にオンライン掲載された本発見は、ウィルスを制御し、排除するためのスタート地点となる。プロジェクトはカンザス州立大学を中心に進められる、とローランド博士は言う。
これはローランド博士が、本研究を開始し、また500万ドル以上もの研究費を提供したPRRS Host Genetics Consortium(PHGC)と呼ばれる機関に関わっているためである。このコンソーシアムは米国農務省(USDA)、全米豚肉委員会、そしてゲノム・カナダなど、様々な大学および産業界のメンバーによる共同機関であり、ローランド博士はその共同責任者である。ローランド博士はまた、USDAより資金提供を受けているPRRS Coordinated Agriculture Project(PRRS CAP)のディレクターでもある。
「PRRS Host Genetics Consortiumは基礎科学を実用的なものに変えていきます。」と、ローランド博士は語る。プロジェクトの実験のほとんどが、カンザス州立大学の大動物研究センターで行われ、研究チームは成長、体重増加、活動やウィルス値など、様々な計測をとる。2007年に研究を開始してから既に2000頭ものブタのサンプルを収集し、コンソーシアムの共同研究者に配布されたものも入れればサンプル数は10万以上になる。
カンザス州立大学は、6万以上もの遺伝子の違いを識別するため、ゲノムDNAを作成する農業研究事業団にサンプルを送った。
データは遺伝子解析のためアイオワ州立大学にまわされ、QTLの発見につながったのである。アイオワ大学の研究チームはプロジェクト中収集された全てのデータが研究者や育種業界など複数の場所からアクセス出来るよう、共同データベースを作成した。「本プロジェクトのユニークな所は、様々な感染症に対し長期耐性をもつかもしれない遺伝子を研究しているということです。治療法やワクチンが存在しない疾患が数多くある中、このような研究は非常に重要なのです。我々は今、このような疾患を研究するための道具を手に入れたのです。」と、ローランド博士は語る。
これらの知見はカンザス州立大学バイオセキュリティー研究所や国立生物農産物検疫施設と共に、新たな可能性を提示する。
研究者はこの新たな遺伝子ツールを用いて様々な感染症を、世界クラスの施設で研究することが出来るのである。本発見は動物の健康においてあらゆる面で役割をはたし、大きな経済動力となるであろう、とローランド博士は考える。
ワクチン開発への可能性に医薬品業界の興味は大きく、どの遺伝子がより良いワクチン反応に関連しているかを見つけるのが次のステップである。「我々はより健康な動物を作っているだけでなく、宿主と病原体の生物関係の基礎を理解しているのです。ヒトにも同様の科学や関係性が存在するため、これはヒトの医療にも直接関係しています。」と、ローランド博士は語る。
カンザス州立大学研究チームはPRRSウィルスのモデルを提供するだけでなく、企業が次世代診断テストを検証および開発するためのサンプルを何千と収集したのである。その一つが、口腔液を使用したテストである。
これはブタがロープを噛み、そこに残った唾液を調べるという非侵襲的なテストである。
この研究では重症複合免疫不全症(SCID)のブタの発見につながった。このようなリサーチはこの疾患をより細かく研究し、研究結果をヒトのガンまたは抗ガン剤の研究に適用することを可能にする。本プロジェクトにはカンザス州立大学の獣医学、または獣医学部に入るためのコースに在籍する生徒および大学院生20人以上が参加したため、非常に貴重な教育の場ともなった。
「動物の扱い方やバイオセキュリティーの基礎を学び、研究を行う。学生にとっては実践的な知識を身につけられる、信じられないほど貴重な機会です。と、ローランド博士は語る。他のカンザス州立大学の共同研究者には、獣医診断研究所、そして診断医学および病理生物学准教授、キャロル・ワイアット博士が含まれる。
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