働きバチか女王蜂かを決めるタンパク相互作用
サイエンス出版部 発行書籍
ミツバチが女王蜂になるか働き蜂になるかは、幼生の頃に与えられる餌に依拠する。その餌とはロイヤルゼリーであることはよく知られているが、何故餌の違いで女王蜂になるのかという分子レベルの機構は謎のままだ。しかしこの度、アダム・ドールザル博士とグロ・アムダム博士に率いられたアリゾナ州立大学の研究チームは、他の研究所とも共同して、蜂の成長とインシュリン及び相補的タンパクとの競合の回避に役立つことを発見した。 「幼若ホルモンを介して活性化するIRSとTORという二つの栄養シグナルパスウェイが握るミツバチの運命」というタイトルの論文が、Journal of Experimental Biology誌の2011年12月号に掲載された。「誰が女王蜂になるのか」という大命題については、富山県立大学バイオテクノロジー研究センターの鎌倉昌樹博士が、画期的研究成果を2011年にNature誌に発表した。ロイヤルゼリー中の一つのタンパクであるロイヤルアクチンが、上皮細胞増殖因子受容体との相互作用によって、蜂の幼生に作用し女王蜂へと成長させることを明らかにしたのだ。これによれば、先に報告されたアムダム博士のチームが草分けであるインシュリン受容体タンパクは、インシュリンシグナルは女王蜂への成長には関与していないということが示唆されていることになる。 一方で、博士課程のドールザル氏とビューバイオメディカル研究員兼ASU生命科学大学教授のアムダム博士は、鎌倉博士チームとの研究結果の相違について、その矛盾を解決する方法を探索してきた。 アムダム博士のチームが最初に実施したのは、インシュリン受容体がシグナル発信に利用する相補的タンパクであるIRSに着目した。IRSをブロックすれば成長ホルモン系統が阻害され、たとえ幼生にロイヤルゼリーを与えても働き蜂にしかならないことを明らかにした。アムダム博士のチームは「働き
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