ホオズキが昆虫から身を守る防御化合物を逆に利用する蛾がいた

ホオズキが昆虫から身を守る防御化合物を逆に利用する蛾がいた

植物の中には、生き延びる仕組みとして、草食生物を遠ざける毒性物質や抑制物質をつくって身を守るものも多い。また、昆虫の中には進化の過程で宿主植物の防御化合物に適応し、植物の防御機能をかいくぐることに成功したものもたくさんいる。ところが、植物も負けずにその防御系をさらに適応させ、敵に対する防御機能を強化し、昆虫の適応進化に対抗するようになってきた。生物学者はこれを植物と昆虫の間の「進化の軍備競争」と呼んでいる。

多種の昆虫が植物害虫であり、「単食性・狭食性」と「広食性」とに分けることができる。広食性昆虫は何種類もの植物を食べることができるが、単食性・狭食性昆虫は単一または少数のごく近い種の植物しか食べることができない。この新研究で分析された蛾の一種、Heliothis subflexaは、そのようなただ一種の宿主植物しか食べない単食性昆虫である。

研究チームは、単食性のHeliothis subflexaと広食性のHeliothis virescensという2種の蛾の相対的体重増加、生存率、免疫状態に対するウィタノリドの効果を測定比較した。以前の研究から、単食性の蛾は、非常に近い種ながら広食性の蛾と比べると免疫反応が弱いことが突き止められている。

この研究を指導したMax Planck Institute for Chemical EcologyのHanna M. Heidel-Fischer, Ph.D.は、「ウィタノリドには、Heliothis subflexaだけに幼虫の成長や免疫系活動を高めるという効果があるが、近い種のHeliothis virescensにはそのような効果が見られなかったので、私達も驚いた」と述べている。
この研究論文は、2016年8月26日付Nature Communicationsオンライン版に掲載され、「Immune Modulation Enables a Specialist Insect to Benefit from Antibacterial Withanolides in Its Host Plant (免疫調節で単食性昆虫が宿主植物の抗菌性ウィタノリドの恩恵を受ける)」の表題でオープン・アクセス論文として収録されている。さらに、Department of Entomologyの研究チームは、ウィタノリドは、単食性蛾を病原菌Bacillus thuringiensis感染性の成長不全から守る効果があったが、広食性蛾には効果がなかった。共同著者のHeiko Vogel. Ph.D.は、「Heliothis subflexaの幼虫は、理論的にPhysalisの実から2つの利益を受けることができる。まず、ウィタノリドの抗菌性と免疫刺激作用だ。次に、Physalisの実は外敵を寄せつけない空間をつくる萼に覆われている」と述べている。

 

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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