ハチの巣フェンスで人と象の共存を実現:ケニアでの9年間の研究が示す成果と課題

ケニアにおける画期的な9年間の研究により、小規模農家を象の襲撃から守るために設置されたハチの巣フェンスが、象を最大86%の確率で寄せ付けない効果を持つことが確認されました。この自然を利用した防衛方法は、農家の収入増加にも寄与し、人と象の共存に向けた新たな解決策として注目されています。本研究結果は、2024年10月29日付でConservation Science and Practice誌に「Impact of Drought and Development on the Effectiveness of Beehive Fences As Elephant Deterrents Over 9 Years in Kenya(干ばつと開発がケニアにおけるハチの巣フェンスの効果に与える影響:9年間の研究)」として発表されました。

ハチの巣フェンスの仕組みと成果

ハチの巣フェンスは、Save the Elephants(STE)、ケニア野生動物サービス(KWS)、およびオックスフォード大学が共同で2007年に導入した技術です。このフェンスは、生きたハチの巣を柱の間に吊るすことで構成され、象に物理的、聴覚的、嗅覚的な威嚇効果を与えます。象は蜂に刺されることを恐れるため、ハチの巣フェンスが設置された農場に近づくことを避けます。この仕組みは農作物を守るだけでなく、蜂蜜や蜜蝋の生産を通じて農家の収入を増やす利点も持っています。

研究の概要と主な成果

調査対象:ツァボ東国立公園近くの2つの村にある26の農場。フェンスを設置した農場には365のハチの巣が使用されました。
研究対象期間:2014年から2020年までの6つの主要作物成長期を含む全期間で約4,000件の象の接近を分析。
成果:
作物が最も栄える時期には、象の襲撃を平均で86.3%の確率で阻止。
研究期間全体では、年間平均76%の象をフェンスで撃退。
ハチの巣が生産した蜂蜜1トンは約2,250ドルで販売され、農家の収入増に貢献。

持続可能性への課題と展望

研究は、干ばつや生息地の乱れがハチの巣フェンスの効果を低下させる可能性を指摘しています。2017年の干ばつでは、巣の占有率が75%減少し、蜂蜜の生産量が減少しました。この影響はその後3年間も続きました。さらに、ケニアの急速な人口増加(2000年から2020年で59.4%増加)が象の生息地の縮小を加速させています。
STEのルーシー・キング博士(Dr. Lucy King)は、「ハチの巣フェンスは象の襲撃を非常に効果的に防ぎますが、生息地の乱れや頻繁な干ばつがこの自然に基づく共存方法の効果を低下させるリスクがあります」と述べています。
ケニア野生生物研究研修所(WRTI)のパトリック・オモンディ博士(Dr. Patrick Omondi)は、「ハチの巣フェンスのような解決策は、地域社会が自ら農場を守る力を持つことを可能にします。さらなる研究と支援が必要です」と強調しています。

過去の研究と広がる展望

STE、KWS、オックスフォード大学の以前の研究では、象が蜂の音に強く反応し、頭を振ったり、埃を巻き上げたり、仲間に警告を発する行動を示すことが確認されています。この特性を活用し、アフリカとアジアの97箇所で14,000以上のハチの巣が象避けのために設置されました。
今後、さらなる研究で干ばつや開発の影響を評価し、ハチの巣フェンスの効果を最大化するための方法を探る予定です。

[News release] [Conservation Science and Practice article]

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