細胞膜の規則正しい構造形成機序に新たな仮説
サイエンス出版部 発行書籍
細胞膜の規則正しい構造がどのようにできるのかということについて、新しい仮説が注目されている。ドイツ連邦ポツダム市にあるMax Planck Institute of Colloids and Interfacesの科学者チームが、糖脂質と呼ばれる糖と脂質の複合体が、細胞膜においてどのようにしてそれ自体でラフト、つまり非常に規則的な微小な領域を持った構造物を形成することができるのかという謎を説明する仮説を提出している。植物や動物の細胞膜表面の糖脂質配列は様々な細胞プロセスを制御しているが、このプロセスにエラーが発生すると、発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH) や牛海綿状脳症 (BSE) などの疾患が起きる。 この研究論文は、2012年12月14日付「Angewandte Chemie International Edition」初出掲載。脂質、つまり、脂肪や脂肪に似た物質は、人体のあらゆるところにできる。脂質は身体の中でもっとも重要なエネルギー貯蔵源であると同時に細胞膜の形成に不可欠な構造材料でもある。複合糖質と脂肪から合成される化合物は糖脂質と呼ばれ、人体のすべての細胞膜に含まれる重要な情報伝達物質で、細胞のタイプや状態を常に情報交換している。様々な新陳代謝プロセスは糖脂質とそれの認識に依存している。免疫系も、病原体を判定し、これと戦う際には、病原体細胞表面の特定糖構造を手がかりにしている。 グリコシルフォスファチジルイノシトール (GPIs) は天然糖脂質の一種で、植物や動物の細胞膜の表面にあり、遊離分子として或いはタンパク質のアンカーとして細胞膜表面に存在している。細胞膜中の糖脂質クラスターは、その配列や偏在性、そして、部分的には非常に規則正しい微小な領域を形成しようとする傾向は、細胞が効率的に機能するために重要な特性と考えられている。このような微小なクラス
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