糖尿病治療に膵臓細胞リプログラミング
サイエンス出版部 発行書籍
長年、研究者はインシュリン産生膵ベータ細胞を再活性化することで糖尿病を治療する方法を探してきたが、ほとんど成果が得られていない。しかし、類似したアルファ細胞をベータ細胞に「リプログラミング」することで、いつか、2型糖尿病に対して、現在の治療法を補完する方向の新しい治療法が可能になるかも知れない。ヒトとマウスの細胞使って、細胞核内の染色質 (クロマチン) と呼ばれる物質を変化させる化学物質で処理するとアルファ細胞中でベータ細胞遺伝子が発現したという研究論文が、「Journal of Clinical Investigation」の2013年2月22日付オンライン版に掲載されている。 この論文の筆頭著者で、ペンシルバニア大学Institute of Diabetes, Obesity and Metabolism, Perelman School of Medicineのメンバーであり、遺伝学教授を務めるKlaus H. Kaestner, Ph.D.は、「この研究成果から治療法が確立すれば、インシュリン産生ベータ細胞が増え、グルカゴン産生アルファ細胞が減ることになるから、糖尿病患者にとっては一挙両得になるはず」と語っている。 2型糖尿病では、インシュリンが欠けるだけでなく、グルカゴンが過剰になる。糖尿病は1型も2型もインシュリン産生ベータ細胞が不足することによって引き起こされるのであり、理論的には、健康なベータ細胞を移植すれば、病気の進行を止めることができる。ただし、1型糖尿病の場合には自己免疫を抑制するために免疫抑制薬なども併用しなければならない。しかし、まだ誰も、胚性幹細胞を使っても、あるいは成熟細胞のリプログラミングの方法を使っても、実験室レベルでさえ効率的にベータ細胞を産生することができないでいる。アルファ細胞は、ベータ細胞と同じように膵臓内の内分泌細胞であ
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