ミシュラ研究室、ミトコンドリア損傷で細胞を餓死させるPDK4酵素を特定。
テキサス大学サウスウェスタン医療センター(UT Southwestern)付属の小児医療センター研究所(CRI)のプラシャント・ミシュラ博士(Prashant Mishra, MD, PhD)らの研究によると、肝細胞は再生時にミトコンドリアが損傷した細胞を餓死させることで、損傷の拡大を防ぐ代謝の柔軟性を持っています。この研究は、2024年6月14日に科学誌Scienceに発表されました。
研究内容の詳細
ミシュラ博士のチームは、肝臓の主要な機能を担う肝細胞(ヘパトサイト)が再生時に脂肪酸をエネルギー源として使用することを発見しました。しかし、ミトコンドリアが損傷を受けると、肝細胞は代謝酵素PDK4を活性化し、他のエネルギー源へのシフトを阻止し、細胞は死滅します。この仕組みは、損傷した細胞が生き延びてしまう代謝の柔軟性の「負の側面」を抑制することで、損傷の拡大を防いでいると考えられます。
実験結果
研究者たちは、健康な肝臓のミトコンドリアを調査し、通常の状態と再生条件下でのエネルギー代謝を比較しました。健康な肝臓は脂肪酸を使って再生を促進し、脂肪酸の供給が遮断されると、糖など他のエネルギー源にシフトする柔軟性を示しました。一方で、ミトコンドリア遺伝子に変異を持つマウスの肝臓は、この柔軟性を欠き、再生が阻害されました。
この柔軟性の欠如の原因を探るため、研究者らは細胞のエネルギー源を制御する遺伝子を調査しました。その結果、PDK4遺伝子のレベルが上昇しており、これはグルコースからエネルギーを生成する経路の負の調節因子であることが確認されました。PDK4を阻害すると、損傷した細胞は代謝の柔軟性を取り戻し、他のエネルギー源を使用して増殖できるようになりました。
ミシュラ博士のコメント
「肝臓は驚異的な再生能力を持っていますが、重要なのは健康な細胞のみが増殖することです。我々の発見は、代謝の柔軟性が損傷細胞の排除に役立つことを示しています」とミシュラ博士は述べています。
研究の意義と今後の展望
この研究は、PDK4がミトコンドリア損傷によって代謝の柔軟性を制御し、損傷細胞の拡大を防ぐ役割を果たしていることを明らかにしました。PDK4の抑制が健康に悪影響を及ぼし、肝脂肪症(脂肪肝)などのリスクを高める可能性が示唆されています。ミトコンドリア損傷はがんを含む一般的な人間の疾患にも見られるため、これらのメカニズムの理解が、病気と戦い、健康を維持するための新しいアプローチにつながることが期待されています。



