見えなかった病原菌を可視化。結核との闘いに光明をもたらす新技術

見えなかった病原菌を可視化。結核との闘いに光明をもたらす新技術

今なお世界で年間100万人以上の命を奪う恐ろしい感染症、結核。その強さの秘密は、私たちの免疫システムの攻撃をものともしない分厚い「細胞壁」にあります。この難攻不落の壁に、化学の力で初めて「目印」をつけることに成功した研究が登場しました。これまで見えなかった病原菌の姿を捉えるこの新技術は、結核との闘いに大きな転機をもたらすかもしれません。MIT(マサチューセッツ工科大学)の化学者たちは、世界で最も致死率の高い病原体である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の細胞壁に存在する、複雑な糖分子を特定する方法を発見しました。 世界で最も致死率の高い感染症である結核は、毎年約1000万人が感染し、100万人以上が死亡すると推定されています。一度肺に定着すると、細菌の厚い細胞壁が宿主の免疫システムと戦うのを助けます。その細胞壁の大部分は、グリカン(糖鎖)として知られる複雑な糖分子でできていますが、それらのグリカンがどのようにして細菌を防御するのに役立っているのかは、よくわかっていませんでした。その理由の一つは、細胞内でそれらを簡単に標識する方法がなかったためです。 MITの化学者たちは今回、その障害を克服し、特定の硫黄を含む糖と反応する有機分子を用いてManLAMと呼ばれるグリカンを標識できることを実証しました。これらの糖は3種類の細菌種でしか見つかっておらず、その中で最も悪名高く蔓延しているのが、結核を引き起こす結核菌です。 グリカンを標識した後、研究者たちはそれが細菌の細胞壁内のどこに位置するかを可視化し、結核菌が宿主の免疫細胞に感染する最初の数日間にそれに何が起こるかを研究することができました。 研究者たちは現在、このアプローチを用いて、培養液中または尿サンプル中の結核関連グリカンを検出できる診断法を開発したいと考えています。これは、既存の診断

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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