マイクロバイオームの個人差にヒト宿主の遺伝子は関与していないことが判明
遺伝環境論争は、ヒトが腸内に持っている通常有益な細菌群、マイクロバイオーム(微生物叢)の構成にまで広がっている。研究に次ぐ研究でマイクロバイオームが私達の健康のほぼ全ての面に関わっていることが突き止められており、また、人それぞれに異なっているマイクロバイオームの構成が体重増加やその人の気分にまで関わっている可能性も示されている。
一部のマイクロバイオーム研究者は、このような個人差は遺伝子の違いから始まっているのではないかとしているが、イスラエルのWeizmann Institute of Scienceで行われた大規模な研究はこの遺伝子説に反証しており、さらにマイクロバイオームと健康の間には私達が考えている以上に重要な関係を示す証拠を提出している。事実、その研究でも作業仮説としてマイクロバイオームの個人差に遺伝子が大きく関わっているのではないかと予想していた。その仮説に従えば、遺伝子がマイクロバイオームの棲息する環境を決定し、さらに個々の環境がそこで繁殖する細菌種を決定するはずだった。ところが、実際には宿主の遺伝はマイクロバイオームの構成にごくわずかしか関わっておらず、大人口で考えた場合、わずか2%程度の違いにしかならないことを突き止め、Weizmannの研究チームにとってはむしろ意外だった。
この研究は、Weizmann Institute of Science, Computer Science and Applied Mathematics Department, Professor Eran Segal研究室のDaphna Rothschild研究生、Dr. Omer Weissbrod、Dr. Elad Barkanらと、同じWeizmann Institute of Science, Immunology DepartmentのProfessor Eran Elinav研究グループの共同で行われた。この研究は個別化栄養指導の追跡調査に参加した約1,000人のイスラエル市民のデータベースというユニークなデータに基づいており、その論文は、2018年2月28日付Nature誌に「Environment Dominates Over Host Genetics in Shaping Human Gut Microbiota (遺伝よりも環境が決める人の腸内細菌叢の構成)」の表題で掲載されている。
イスラエル国民の民族的構成はかなり多様で、遺伝子の違いの影響を調べるのに適した条件が揃っている。遺伝学的データとマイクロバイオームの構成に加え、各研究参加者の食習慣、生活習慣、投薬などの他、各種測定値も記録されている。研究チームは、これらのデータを分析し、個人のマイクロバイオーム構成を形成する最大の要因は食習慣と生活習慣であると結論した。
マイクロバイオームの構成が遺伝子によって形成されないのなら、マイクロバイオームはどのようにして遺伝子と相互作用し、人体の健康状態に影響するのか? 研究チームは、マイクロバイオームと、データベースに記録されたコレステロール値、体重、血糖値その他の臨床的な数値との関連を調べた。その結果、驚いたことに、その臨床的測定値のほとんどすべてが、マイクロバイオーム宿主のヒト・ゲノムと同じくらい、あるいは場合によってははるかに強い関連性を示していたのである。
科学者によれば、これらの知見は、マイクロバイオームを形作る要因を理解することが、多くの一般的な健康問題を理解し、治療する上で鍵となる可能性があるという確固たる証拠を提供する。
シアガー教授は、私たちは遺伝子を変えることはできませんが、私たちが体内で宿主となる細菌の種類に影響を与えることができ、さらには形を変えることさえできることを知っています。 私たちの微生物が健康を改善するための強力な手段となりうることを示唆しています。
マイクロバイオーム研究の分野は比較的最近です。
ワイズマン研究所で収集された1,000人のデータベースは、世界で最も広範なデータベースの1つです。 シーガル教授とエリナヴァ教授は、研究のデータや他者のデータをさらに追加することにより、これらの最近の知見がさらに検証され、我々の微生物と遺伝学と健康との関連がより明確になると信じています。
【BioQuickNews:Genetics of Human Host Plays Very Minor Role in Determining Microbiome Variation; Diet & Lifestyle Are Most Dominant Factors Shaping Microbiome Composition, New Study Suggests; Modification of Microbiome May Have Major Influence on Health】
生命科学雑誌バイオクイックニュース: 2024年8月号
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Edited by Michael D. O'Neill
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