強力なデング・ウイルス抗体発見される

強力なデング・ウイルス抗体発見される

Duke-National University of Singapore (Duke-NUS) が主導する新しい研究で非常に有望なヒト・モノクローナル抗体が突き止められた。この抗体は極微量でデング・ウイルスを無力化する強力な効果がある。2015年2月20日付Nature Communicationsのオンライン版オープン・アクセス論文として発表された研究報告は、新発見の5J7という抗体がデング・ウイルスを殺すのに非常に効果があり、10[sup">-9[/sup">gの抗体でデング・ウイルス3型 (DENV-3) の感染を防ぐことができるというもので、デング熱研究の分野で長足の進歩を画している。論文は、特定DENV対応の抗体5J7は非常に効力が強く、ナノグラム単位の抗体量で50%のウイルスを無力化することができると報告しており、この研究結果から効果的なデング熱治療法の前途が有望になってきている。報告はさらに、Fab 5J7-DENV複合体を低温電子顕微鏡で解析した結果、単一のFab分子が、並んだ外被タンパク質3個と結合し、さらに各外被タンパク質を通して3箇所の機能的に重要な領域に結合していることを実証したと述べている。これらの領域は受容体結合とエンドソーム膜融合に重要な役割を果たしている。5J7抗体が複数の領域に結合できることからわずか60コピーのFabでデング・ウイルスの表面を完全に覆うことができる。この数字は他の抗体に比べると約半数である。研究論文は、「5J7の研究で、この抗体が分子レベルで認識するメカニズムは他に例のない非常に効率的なものであることが明らかになった」と述べている。この研究論文は、「A Highly Potent Human Antibody Neutralizes Dengue Virus Serotype 3 by Binding across Three Surface Proteins」と題されている。


過去50年間、デング・ウイルス感染症例は世界中で30倍に膨れあがっている。このウイルス感染の症状として熱、発疹、関節痛の他、重症の場合には出血やショックも引き起こすことがある。世界の100か国で風土病になっていると推定されており、それぞれの国の医療制度にとっても大きな負担になっている。

しかし、デング・ウイルスには4つの抗原型 (DENV1-4) があり、効果的な抗デング・ウイルス薬剤の開発がきわめて難しく、そのため認可を受けたデング・ワクチンや治療薬は存在しない。研究論文の首席著者、Duke-NUS Graduate Medical School SingaporeのShee Mei Lok教授は、研究目標を、効果的な治療薬開発に向けたデング・ウイルスの病原性や構造の理解に絞った。教授の研究室ではすでにDENV-1に効果のある抗体を発見している。

Lok教授は、これまでの成果をもとにして現在知られているこの4つの抗原型のおのおのに結合し、感染を防止する4種の抗体を組み合わせて安全な薬剤を開発することを考えている。最近行われたこの研究では、デング・ウイルス感染患者の血液サンプルを調べ、200種の抗体分子候補から5J7抗体の分離に成功した。
この研究チームはウイルス抗体複合体構造をきわめて高倍率で解析し、抗体の腕の一つ一つが3個のウイルス表面タンパクを驚くほど効果的に同時につかみ取ることを証明した。そればかりか、抗体が結合するウイルスの部位はウイルスが細胞内に侵入するのに不可欠な部分でもある。

Duke-NUSのEmerging Infectious Diseases Programmeに携わるLok准教授は、「ウイルスとのこのような結合はこれまでまったく知られておらず、この抗体が高い効力を持っている理由もこれで説明がつく。ウイルス表面タンパクの動きはウイルスが細胞に侵入するために非常に重要だが、5J7抗体がウイルスの表面タンパクに鍵をかけ、ウイルスを縛り付けてしまったというように想像してもらえばいい」と述べている。
この5J7抗体はDENV-3に対しては効力があるが、残り2つのデング・ウイルス抗原型 (DENV-2とDENV-4) についても考えなければならない。人が一つの抗原型に感染すると、その抗原型のウイルスを殺す何種類かの抗体生成が促され、患者は感染した抗原型に対しては生涯免疫を持つようになる。

しかし、この抗体生成の過程で他の3種の抗原型ウイルスに対応した抗体も生成される。ところが、これが二次感染を激化させ、疾患の症状を増悪させることがある。Lok准教授は、期待の持てるこの研究結果の次の段階について、「臨床治験に入る前にまずマウス・モデルで効力を試験しなければならない。この2,3年内に画期的な治療法を開発できると自信を持っているが、他の抗原型に対する抗体についてはまずそれを見つけることが先決問題だ」と述べている。

この研究は、第一著者でResearch FellowのGuntur FibriansahとDuke-NUS、University of North Carolina、Vanderbilt Universityの研究者の共同で行われた。
写真は効力が期待される5J7抗体の抗原結合フラグメントが結合しているデング・ウイルス3型抗原を再構成した画像。(Credit: Guntur Fibriansah & Duke-NUS Graduate Medical School Singapore)。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Powerful Neutralizing Dengue Antibody Found

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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