ウィスコンシン大学-マディソン校の研究者らはこの大学病院ならびにクリニックにおいて手術中に採取した副鼻洞組織を使って、ヒト・ライノウイルス(HRV)の中でも最近になって発見された新種のウイルスの培養育種を実施した。このHRVは、一般的な風邪において最もポピュラーな原因ウイルスであり、子供のHRV感染症全体の約半分に関与している。研究者は、このウイルスは他のHRVファミリーとは異なった生殖特性があることを発見した。
これにより、抗ウイルス物質を選抜し、その抗ウイルス物質がウイルス自体の成育を停止させるかどうかを観察することが可能となった。研究成果は、2011年4月10日号の「Nature Medicine」誌に発表された。
周知のHRV-AやHRV-Bなどを擁するHRVファミリーの新規メンバーであるHRV-Cにスポットをあてた。5年前に発見されたHRV-Cは標準の細胞培養法では培養が難しいことで定評がある。したがって、研究も不可能であった。この論文の主席著者でもある、UW-マディソン校医学部のDr. James Gene医療・公衆衛生学科教授は、次のように語る「いまや私たちには、HRV-C感染症の治療や予防に新しいアプローチが生まれるかもしれないという確証がある。」同氏はまた、ウィスコンシン大学American Family Children’s Hospitalにおいて喘息の専門家でもある。
さらにGene教授は「これは将来医薬品になれば、喘息や肺に問題がある子供や大人とって特に有用なはずである」と語る。最近の研究においてHRV-Cは、通常の風邪の主な原因になることに加えて、喘息発作の50〜80%に関与していることを示した。
HRV-Cは幼児の喘鳴症状が最も多い原因であり、子供の喘息発作原因に特にかかわっているはずである。
さらにあらゆる種類のHRV感染症は、例えば嚢胞性線維、慢性閉塞性肺疾患などの慢性肺疾患を大きく悪化させる可能性がある。Dr.Gern研究室のウイルス学者Dr. Yury Bochkov氏も他のサイエンティストと同様にスタンダードな細胞株ではHRV-Cを培養することができなかった。
そこで彼は副鼻洞手術の後で集めた鼻組織に着目し、驚いたことに成功した。2種類のタイプのHRV-Cを相当量培養し、それから全ウイルス・ゲノム配列を決定した。次に同一のコピーをプラスミド・ベクターに転写した。
生ウイルスの再生と生育について研究しながらHRV-Cの複製が鼻上皮組織の特定の種類の細胞に局在するであろうことを発見した。「HRV-CがHRV-AとHRV-Bが使用する2種類のレセプターには付着しないことが判明した。」と、Dr. Bochkov氏が語った。「HRV-Cは、上記のレセプターとは異なる未知のレセプターを使用する。これは多くの細胞株には存在しないか、もしくは過小発現する。」と、語った。またHRV-Cはレセプター結合をブロックする抗体と異なった応答をした。
「通常、HRV-AおよびHRV-Bのレセプターと結合する抗体は、HRV-Cが抗体と結合するのを妨害することはなかった。」と、Dr. Bochkov氏が語った。
「この知見から、HRV-Cを扱うには新しいアプローチが必要なことが示唆された。」と、Dr.Gern氏が語った。さらに彼は次のように話した。「一般的な風邪に対する従来の新薬候補は、HRV-AとHRV-Bについてのみ、試験を実施していた。」
「より効果的な薬のためには、HRV-Cを対象とする試験も必要である。」と、Dr. Bochkov氏が語った。彼はさらにHRV-Cの詳細な生物学的研究には器官培養系を使用し続ける予定である。
「これらのウイルスの培養条件はユニークであることが、今明らかになった」と、彼が語った。
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Cold and Asthma Virus Grown in Tissue Culture
