COVID-19の病原性は、宿主MicroRNAの枯渇によるものという仮説が発表された
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なぜ COVID-19 ウイルスは致命的であるのに、他の多くのコロナウイルスは無害で風邪をひくだけなのか? ポーランドとアメリカのアラバマ大学バーミンガム校(UAB)の研究チームがその答えを提案した。COVID-19ウイルスはマイクロRNAの「スポンジ」として機能するという。ポーランドのグダニスク医科大学の Rafal Bartoszewski 博士らによるこの仮説は、American Journal of Physiology-Lung Cellular and Molecular Physiologyの展望として、2020年8月5日にオンラインで公開された。 この論文は、「SARS-CoV-2は特定の宿主miRNAの枯渇を通じて細胞応答を調節する可能性がある(SARS-CoV-2 May Regulate Cellular Responses Through Depletion of Specific Host miRNAs)」と題されている。
この作用は、ウイルスの複製を助け、宿主の免疫反応を妨げる方法で宿主のマイクロRNAレベルを調節する。 この検証可能な仮説は、現在の文献の分析およびCOVID-19ウイルスと他の6つのコロナウイルスのバイオインフォマティクス研究から導かれた。 ヒトマイクロRNA(miRNA)は、約22の塩基で構成される短いノンコーディングRNAだ。 それらは、細胞の特定のメッセンジャーRNAとの相補的なペアリングによって遺伝子発現を調節するように作用する。 そのペアリングはメッセンジャーRNAをサイレンシングさせ、タンパク質に翻訳されるのを防ぐ。
したがって、miRNAは、細胞代謝や、ストレスやウイルス感染などの有害な課題に対する細胞の応答を微調整するコントローラーだ。 COVID-19ウイルスのようなウイルスRNAを複製することは、全細胞RNAの50%に達する可能性がある一方で、miRNAは全ヒト細胞および組織RNAのわずか約0.01%だ。 したがって、UABとポーランドの研究者は、COVID-19ウイルスに特定のmiRNAの結合部位があり、これらの部位が風邪を引き起こすコロナウイルスに見られるmiRNAの結合部位と異なる場合、より病原性の高いCOVID-19ウイルスが 特定のmiRNAを選択的にスポンジングして、細胞を危険なヒトコロナウイルスにするような方法で細胞を調節不全にするという。
このスポンジ説は斬新ではない。 ウイルスRNAスポンジは、エプスタインバーウイルスの場合、ホストmiRNAを除去できることが示されている。また、スポンジ活性は、ヘルペスおよびC型肝炎ウイルスでも示されている。
COVID-19ウイルスの前には2つのヒトコロナウイルスがあり、その正式名称はSARS-CoV-2-であり、COVID-19ウイルスの壊滅的な結果を予告した。 最初のは、2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスだった。 2つ目は、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスだった。どちらもCOVID-19ウイルスほどの高い感染力はなかったが、NHIによると、どちらも危険で、それぞれ774人と866人が死亡した。
本研究では、研究者らはコンピューター支援バイオインフォマティクス分析を使用して、7つの異なるコロナウイルスゲノム上の896個の成熟ヒトmiRNA配列の潜在的なmiRNAターゲットサイトを見つけた。 これらのゲノムには、3つの病原性コロナウイルス(SARS、MERSおよびCOVID-19ウイルス)と4つの非病原性コロナウイルスが含まれていた。
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