健康な人が3年以内に軽度の認知障害またはアルツハイマー病を発症するリスクを90%の精度で予測できる血液検査法をGeorgetown University Medical Centerその他の組織の合同研究グループが発見、その有効性も確認した。2014年3月9日付Nature Medicineオンライン版に掲載された論文によると、アルツハイマー病は早めに処置するほど疾患の進行を遅らせたり、あるいは発症そのものを予防するなどの治療の効果が高まるが、この研究成果からアルツハイマー病の効果的な初期治療法を開発できる可能性を述べている。
この研究報告は、臨床前的なアルツハイマー病の血中バイオマーカーに関する、知られている限り初めての論文である。この血液検査はアルツハイマー発症を予測できる血中の脂質10個を判定するもので、研究チームは、「今後2, 3年で臨床試験にかけることができるようになる。また、この検査法は他の診断にも有効かも知れない」と述べている。
研究論文の責任著者で、Georgetown University Medical Centerの神経学教授と健康科学のexecutive vice presidentを兼任するHoward J. Federoff, M.D., Ph.D.は、「この新発見の血液検査法は、進行性認知障害のリスクを持つ人を判定し、患者、家族、医師が発病に備え、管理する上で非常に役立つのではないか」と述べている。
アルツハイマー病は完治できず、また有効な治療法もないという難病で、世界中で約3,560万人がアルツハイマー病と診断され、世界保健機関 (WHO) によれば、20年ごとに患者が倍増し、2050年までには1億1,540万人に膨れあがると予想されている。
Dr. Federoffは、「アルツハイマー病の進行を抑えたり、緩和する医薬の開発を目指した研究は数多くあったがいずれも失敗している」と述べ、「おそらくその理由の一つは、疾患がかなり進行した段階で医薬を適用し、その評価を行っていることにあるのではないか」と分析している。また、「この疾患の臨床前の状態こそ疾患修飾介入が必要な狭い期間だ。
私たちが開発したバイオマーカーのように疾患を無症状期に判別することが治療法開発成功のためには不可欠だ」と述べている。
この研究には70歳以上の健康な被験者525人が研究参加時とそれ以降の研究期間中に何度か血液サンプル採取に応じた。5年間の研究期間中に被験者のうち74人に軽度のアルツハイマー病 (AD) または、記憶障害があるが認知機能一般はまだ機能する健忘型認知機能障害 (aMCI) と呼ばれる症状が見られた。
そのうちの46人は参加時に、また28人は研究期間中にaMCIまたは軽度のADと診断された (後者グループはconvertersと名付けられた)。研究開始から3年目にaMCI/ADを発症した被験者53人 (converters18人を含む) を選び、また対照群として正常な認知機能を持った53人を選び、研究の「脂質バイオマーカー発見」段階に入った。
この脂質は研究開始前には研究対象としておらず、むしろ、研究の結果浮かび上がってきたものである。その結果、脂質10個のパネルが見つかった。研究チームは、「この脂質は、認知機能障害またはADを発症した被験者で神経細胞膜が崩壊していることを示すものではないか」と述べている。
このパネルは、残り21人のaMCI/AD発症被験者 (10人のconvertersを含む) と20人の対照群からのサンプルを使って確認した。盲検データを解析し、発見段階で同定された10個の脂質だけで被験者を正確に各診断カテゴリーに分類することができるかどうかを調べた。Dr. Federoffは、「脂質パネルは、この二つのはっきり異なるグループを90%の精度で判定することができた。一つの被験者グループは2年から3年の間にMCIまたはADの進行が見られた。
またもう一つのグループはまだ当分は健康でいられるだろう」と述べている。
また、研究チームは、AD発症のリスク因子として知られるAPOE4遺伝子の存在が正確なグループ判定に影響するかどうかも調べたが、この研究では発症予測に大きな影響はなかったとしている。
Dr. Federoffは、「私たちの研究の成果で、臨床前状態の疾患バイオマーカー検査法の商品化に大きく一歩近づいたと思う。それが実現すれば、リスクを抱えた人を判定する集団的なスクリーニング検査も可能になる。現在、臨床試験を計画しており、このパネルを使ってアルツハイマー病のリスクの高い人を判定し、発症する前に発病そのものを遅らせたり、予防するための薬剤の効果を試験する用途に充てることを考えている」と述べている。
研究論文著者として、Dr. Federoffの他に、Georgetown UniversityのAmrita K. Cheema、 Massimo S. Fiandaca、Xiaogang Zhong、Timothy R. Mhyre、Linda H. MacArthur、Ming T. Tanの各Doctor、University of Rochester School of MedicineのMark Mapstone、William J. Hall、Derick R. Petersonの各Doctor、Temple University School of MedicineのDr. Susan G. Fisher、Unity Health System in RochesterのJames M. Haley、Michael D. Nazarの各Doctor、Rochester General HospitalのDr. Steven A. Rich、デンバー所在Regis University School of PharmacyのDr. Dan J. Berlau、University of California-IrvineのCarrie B. Peltz、Claudia H. Kawasの各Doctorの名が挙げられている。また、研究論文に記述されている技術に関してGeorgetown UniversityとUniversity of Rochesterが提出した特許申請には共同発明者として、Federoff、Mapstone、Cheema、Fiandacaの各Doctorの名が記載されている。その他の筆者は研究に関連していかなる経済的利害も持っていないと申告している。
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