指を針で刺して採取した血液試料を用いて、診断の難しい複雑な疼痛障害、線維筋痛症候群を検知する信頼性の高い検査法を開発した研究者グループがある。研究チームは、この検査法が一般開業医に普及すれば、患者が線維筋痛症と診断される5年前に発症を予測できるようになると見込んでいる。予備研究として、研究チームは、線維筋痛症の患者から採取した血液試料を高性能特殊顕微鏡で検査し、特定の分子マーカーの探索を行なった。

 

その特定分子マーカーのパターンを認識するよう装置を調整した結果、顕微鏡は線維筋痛症と、同じ症状を示す2種の関節炎とを識別できるようになった。

どの分子が線維筋痛症発症に関わっているのかを突き止めるためにはさらに分析を続けなければならないが、研究チームは、予備研究のデータでは期待が持てそうだとしている。The Ohio State University獣医臨床科学教授のDr. Tony Buffingtonは、「この試験法が、線維筋痛症患者の診断する上で重要な助けになるという証拠をつかんでいる。私たちとしては、この研究成果が一般開業医が利用できる客観テストに結びつき、線維筋痛症の自覚症状が出る5年前に疾患を発見できるようになることを期待している」と述べている。


この疾患は最終的な診断が出るまでの検査に時間がかかるため、患者が治療を受ける時にはすでに症状が重くなっていることが多い。この疾患の主な特徴である慢性的な痛みと疲労感などは、他の疾患でもよく現れる症状であり、医師は他の考えられる疾患をすべて消去してからようやく線維筋痛症と診断を出す傾向がある。

この疾患の他の症状としては、睡眠障害や記憶、思考の乱れなどがある。National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseasesによると、アメリカ国内では推定500万人の成人がこの疾患にかかっている。
Ohio State's Wexner Medical Centerのリューマチ・免疫学科の医学准教授、Dr. Kevin Hackshawは、「迅速な診断の重要性は強調してもしすぎることがない。患者は診察と検査の間も非常なストレスを感じており、診断が出るだけで患者の気持ちも休まり、不安が消えるため、医療コストを抑えることができる」と述べている。この研究論文は、2013年4月4日付オンライン版学術誌「Analyst」に掲載された。

この研究で用いられたのは顕微赤外分光法と呼ばれる技術で、赤外線スペクトラムに現れる分子固有のピーク波長を観測し、それによって血液試料の生化学的な成分を同定することができる。この技術の原理は、赤外線照射による分子結合の振動を観測し、その結果に基づいて試料中に存在する分子を同定するというもの。

この分光分析は乾いた血液でも有効であり、指を針で刺して得た数滴の血液でも判定するのに十分な量である。研究過程で、研究チームは、まず線維筋痛症患者 (14)、リューマチ様関節炎 (15)、骨関節症 (12) の患者の血液試料を手に入れた。線維筋痛症以外の2つの疾患は、症状が線維筋痛症に似ていながら、診断が非常に簡単だということで線維筋痛症との比較のために選ばれた。

研究チームは、各試料を顕微赤外分光法で分析し、各疾患に伴う分子パターンを同定した。この段階は研究の「調整」段階であり、「調整」の済んだ装置に盲検血液試料を挿入すると、各疾患が独自の分子パターンに基づいて正確に判定された。

Dr. Buffingtonは、「この装置は疾患を一つの間違いもなく完全に識別した。これは非常に重要なことだ。線維筋痛症の患者と関節炎の患者を誤診しなかったのだから」と述べ、さらに、「線維筋痛症患者の血液試料のバイオマーカーになりうる化学物質を何種類か分析しているが、このスペクトル・パターンを示す分子を突き止めるまでにはもう少し研究を続けなければならない」としている。
Dr. Buffingtonは、「顕微赤外分光装置は高価かもしれないが、試料分析を請け負う大きなラボがあれば経済的になるのではないか。この検査法は乾燥した血液試料でも検査できるという利点があり、乾燥した血液であれば病院からラボまで合法的に米国内郵便で送ることもできる」と述べている。

なぜ獣医学者がこのような研究を続けているのか?
Dr. Buffingtonは、イエネコの医療、特に間質性膀胱炎 (IC) と呼ばれる痛みのひどい膀胱の疾患などについては著名な権威である。この間質性膀胱炎は人間にもある疾患で、この疾患は、過敏性腸症候群や線維筋痛症などと同じく、この疾患の患部にあたる特定の部分には病気の原因が見当たらないという特徴がある。
これらの疾患は、「医学的に説明できず」とか、「機能性身体症候群」と呼ばれてひとまとめにされている。
Dr. Buffingtonは、これらの疾患の間に何らかの共通項があるのではないか、あるとすれば中枢神経系に疾患の起源があるのではないかと考え、それを突き止めようと研究を続けてきた。

Dr. Buffingtonは、これまでに大学に2件の発明届出書を提出しており、オハイオ州立大学も試験法についてアメリカ合衆国国内と海外で複数の特許申請書を提出している。11月には、オハイオ州立大学の、「人間とネコの機能性身体症候群迅速診断法」に対して、米国特許番号8,309,931が交付された。その他の論文共著者には、オハイオ州立大学のDepartment of Food Science and TechnologyのDr. Luis Rodriguez-SaonaとDr. Marçal Plans、ノース・キャロライナ州ダラムのMetabolon Inc.のDr. Lauren Bellがいる。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Simple Blood Test for Fibomyalgia Shows Promise

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