休暇でハメをはずして飲み過ぎたことを後悔する人は、二日酔いの吐き気、眠気、ふらつきにはそれなりにプラスの側面があると言ってもうれしくないかも知れないUniversity of Utahの神経学研究グループの研究論文によれば、ラットの脳の外側手綱核と呼ばれる領域を慢性的に不活性化すると、ラットは何度飲み過ぎてもこりず、経験から学ぶ能力も衰えることが突き止められている。2014年4月2日付オープン・アクセスPLOS ONEのオンライン版に掲載されたこの研究論文は、アルコール中毒になる行動傾向を理解する手がかりを示している。

 

複雑化した社会の圧力もアルコール中毒を引き起こす一因ではあるが、生理的な要因も見過ごすことはできない。アルコールは依存性の高い薬物で、その原因は、アルコールが脳の報酬系を刺激し、快感をもたらす神経伝達物質を放出させるからである。飲み過ぎが不快な結果になることから次の時にはアルコールの誘惑に抵抗する気になるという有益な行為が導き出されるが、そのメカニズムがどのように制御されるのかという機序についてはまだほとんど分かっていない。


しかし、University of Utahの神経生物学と解剖学の教授、Sharif Taha, Ph.D.と同僚研究者は、ラットの外側手綱核を不活性化することで常習中毒的行動が強まることを実証した。このラットに数週間にわたり、断続的に20%アルコール水溶液を飲めるようにしたところ、外側手綱核を不活性化していない対照群のラットよりも急いで飲み、しかも飲む量も増えていくという結果になった。Dr. Tahaは、「人間の場合、飲酒量が増えていくかどうかが付き合い程度の飲酒とアルコール中毒者の飲酒との違いになっている。実験のラットの飲酒量はかなりのもので、ラットが車を運転した場合、法的に飲酒運転になる量だった」と述べている。

外側手綱核はいやな経験をすると活性化されることから、この領域がなければラットは飲み過ぎによる不快な結果から学ぶことができず、従ってますます飲むようになると考えられる。研究チームは、ラットにとって好ましい甘いジュースを与え、その後で不快な症状を引き起こすのに十分な量のアルコールを注射した。Dr. Tahaは、「食中毒の経験に対して学習し、次回の反応を引き起こすのと似ている。何かを食べて気持ちが悪くなれば、次にはその食べ物を避けようとするものだ」と述べている。

ところが、外側手綱核を不活性化したラットは、不快な体験を繰り返すことが予想されるのに、外側手綱核を不活性化していない対照群のラットよりもジュースを欲しがった。この研究ではUniversity of Utahの神経科学大学院生のAndrew HaackとChandni Shethの2人が共同第一著者になっており、Andrew Haackは、「私の考えでは、ここでアルコールを飲む報酬効果と回避効果が競合している。その場合に回避効果を取り除くと、実験で外側手綱核を不活性化したのと同じことで報酬効果の影響力が強まり、飲酒傾向も強まる」と述べている。過去の臨床研究で、アルコールの不快な効果に対して感受性に乏しい男子は成長してアル中になりやすいことが突き止められており、今回の研究の結果でその原因の説明がつく。

研究チームは、外側手綱核の機能について、次の二つの仮説のうちどちらかが正しいのではないかと考えている。一つは、この領域が飲み過ぎた後でどんなに不快感を感じるかを制御しているという仮説。もう一つは、この領域が不快な経験からどれほどよく学ぶことができるかを制御しているという仮説。将来の研究でこのどちらが正しいか、その答が突き止められるだろう。Dr. Tahaは、「アルコールの不快な効果に対する感受性を制御する脳の回路を理解することができれば、アルコール中毒になる人を治療し、アルコール中毒を予防することができるはず」と述べている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Specific Brain Region May Be Key to Alcohol Drinking Behavior

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