大腸がんは世界的にもっとも発生率の高いがんであり、がん死の内訳でも第二である。早期診断できれば治癒する可能性の高いがんだが、早期診断はそう簡単ではない。VIBとKU Leuvenの研究者は、UZ Leuvenを含むヨーロッパの何か所かのがんセンターと共同で研究を進め、新しい診断検査に採用できる可能性のあるバイオマーカーを発見した。そのバイオマーカーを利用すれば簡単な血液検査で大腸がんを早期診断できるはずである。

 

この研究の成果は、2015年3月付のGutオンライン版に、“Tumour-Educated Circulating Monocytes Are Powerful Candidate Biomarkers for Diagnosis and Disease Follow-Up of Colorectal Cancer (腫瘍に教育された循環血中単球は大腸がんの診断とフォローアップに適した強力なバイオマーカー候補)”として発表された。Dr. Max Mazzone (VIB/KU Leuven) は、「この研究で、がんにおける免疫系の役割をよく理解することがどれほど重要かが示されている。この研究で得られた知識から新しい感度の高い検査法を確立し、早期診断を可能にしてより多くの患者の治癒につながることを望んでいる。研究をさらに進め、検査法を発展させるために援助してくれる企業パートナーが早く見つかるよう念願している」と述べている。


2012年には世界中で合計140万人が大腸がんと診断されたが、2035年までにはこれが240万人になると予測されており、この疾患の発生率は毎年増えている。大腸がんは早期段階で発見できればかなり治療しやすい疾患であり、治癒率は約95%にもなるが、発見が遅れるとがんと診断されてから5年後の生存率は10%未満になる。したがって、このがんは早期発見することが非常に重要なのだが、一つ難問がある。世界的なスクリーニング検査ガイドラインがないまま、早期発見が重要だと言うことで各国でそれぞれ国民の大腸がん検査体制を取っている。

たとえば、フランダース地方では56歳から74歳までの年齢層に対して、糞便中の血液を検出する“immunological Fecal Occult Blood test (iFOB、免疫糞便潜血検査)”を受けるよう呼びかけている。この検査で陽性となった場合、前がんポリープやがんがあるかどうかを確認するため結腸内視鏡検査を受けなければならない。iFOB検査は現在では最善の検査法だが、その感度は最善とはいえず、既存の検査法では大腸がんをすべて検出することはできない。そのため、大腸がんを早期段階で発見し、しかも誰でも受けられ、かつ信頼性の高い検査法が求められている。もし血液検査でこのような早期診断が可能になれば、現在の検便法のように患者がためらいを感じることもなくなるはずである。

身体の中でがんができると、体の免疫系が反応し、がん細胞を体内から追い出そうとする。このような反応では末梢血単球と呼ばれる白血球細胞に特定の役割が与えられる。身体中に大腸がん細胞が生まれた瞬間からがん細胞の分泌する物質に末梢血単球が反応する。Dr. Alexander Hamm (VIB/KU Leuven) は、「がん細胞が分泌する物質が単球中の特定の遺伝子を活性化する。その遺伝子を突き止めることができたから、一般的なテクニックを使って血液を検査し、大腸がん診断に利用することができる」と述べている。

Dr. Hans Prenen (UZ Leuven) は、「この新しい検査法は、糞便中の血液を調べるのではなく、がんによる変化を直接検出するものであり、高い感度を得られるはず」と述べている。また、この反応はがんの形成が始まった早期段階から起きるため、発見も早いという利点がある。さらには、この検査は、大腸がん細胞の存在に対する人体の反応に基づく検査法であり、原発がんを取り除いた後も離れたところに移動した転移性がんを発見できる。そのため、手術で原発がんを取り除いた患者のフォローアップで転移や再発を検査するのにも有効性を発揮する」と述べている。

この反応に関わる遺伝子を突き止めるため、Dr. Prenenと、ブリュッセル、ハイデルベルク、ローマのがんセンターの同僚研究者が患者からサンプルを集めた。それによって、Dr. Mazzone (VIB/KU Leuven) 率いる研究チームは、43種の該当する遺伝子を突き止めた。Dr. Wouter Van Delm (VIB Nucleomics Core Facility) は、「43種の遺伝子すべてを一つの診断検査に含めるには多すぎるため、検査精度を下げずに検査対象の遺伝子の数を減らすことが重要になった。その結果、23種の遺伝子を1セットとすることができた。しかし、さらにその数を減らすよう研究を続けている」と述べている。現在、研究チームは、バイオマーカーの数をさらに減らした検査法の開発に取り組んでおり、そのために企業のパートナーを求めている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:New Immune-System-Based Biomarker Set from Europe May Be Used in Blood Test for Early Detection of Colon Cancer

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