免疫システムを潜り抜ける、死を招く菌体

免疫システムを潜り抜ける、死を招く菌体

サイエンス出版部 発行書籍

カンジダ・アルビカンスのような日和見感染を起こす菌体が、宿主細胞の免疫応答状態を感知し、それに対応することで、宿主の免疫防護システムから首尾よく逃れていることを明らかにしたのは、ルイジアナ州立大学(LSU)ヘルスサイエンスセンター・ニューオリンズ校の微生物学・免疫学・寄生虫学の准教授であるグレン・パルマー博士だ。同博士はイタリアのペルージャ大学のルイジナ・ロマーリ博士が率いる国際研究チームのメンバーでもあった。   これまでの研究と異なり、この研究では感染事象を両面の視点から、即ち、菌体と感染相手の細胞との相互作用の観点から行なわれた。研究結果はネイチャー・コミュニケーション誌の2012年2月21日オンライン版に発表された。そして、この感染プロセスが、従来考えられてきた以上に、精巧且つ複雑であることが判ってきた。報告によると、C.アルビカンスは免疫信号を出す宿主の生体分子であるインターロイキン(IL)17Aと結合することにより、健康な宿主細胞が有する免疫応答に耐えられる環境を得て、宿主の免疫反応に対応するのだ。IL-17Aは通常、菌体の内在的な毒性を加減することによって、疾患の感受性を調節している。 本研究では、IL-17Aの振る舞いを精査し、菌体は生き延びるだけではなく、疾患の進展にも関与していることが明らかになった。「それはまるで菌体が私たちの免疫システムの防護作戦に聞き耳を立て、どうやったら宿主の組織内で対応し生き延びるかを画策しているようなものなのです。それはまた、この“日和見主義者”が免疫不全患者に致命的なダメージを与えようと、どのタイミングで感染してやろうかと様子を伺っている状態でもあるのです。」とパルマー博士は説明する。疾患予防対策センターによれば、ヒトに感染するカンジダ酵母菌は20種類以上あり、最も多いのがカンジダ・アルビカンスである。カンジダ酵母菌は

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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