HER2陽性乳がん細胞のHER2をシャットオフするアンキリン反復改変タンパク質を開発
サイエンス出版部 発行書籍
毎年、スイスでは5,700人の女性が新しく乳がんと診断され、また1,400人近い女性がこの疾患で亡くなっている。浸潤性がきわめて強い乳がんでは、細胞の表面に受容体HER2が過剰に存在しているタイプが多い。これが細胞の無制限な増殖につながっている。これまで乳がんの治療にはTrastuzumabやpertuzumabなど、HER2受容体を認識する抗体が何年も用いられてきた。 しかし、このような抗体もがん細胞そのものを殺すわけではない。がん細胞は不活性化されるだけであり、いつでも活性を取り戻すことができるのである。 受容体HER2は、同時にいくつかの信号経路を用い、細胞の増殖と分裂の指令情報を送る。しかし、これまでに見つかっている抗体は一つの信号経路をブロックするだけであり、他の信号経路はすべてアクティブなままである。この開かれた状態の経路のうちもっとも重要な経路がRASと呼ばれるcentral hubを通っている。初めて詳細が解き明かされたこのメカニズムについて、Dr. Plue(umlaut)ckthunは、「HER2受容体が発信する増殖信号を再活性化するのがこのタンパク質だ。抗体はその効力を失い、がん細胞が再び増殖を続けるようになる」と説明している。 University of Zurich, Department of Biochemistry のDirectorを務めるAndreas Plue(umlaut)ckthun, Ph.D.が指導し、ポスドク研究員のRastik Tamaskovic、博士課程のMartin Schwillも加わった研究の論文が、2016年6月3日付のNature Communicationsオンライン版オープンアクセス論文として掲載されており、なぜ、これらの抗体が単にがん進行を遅らせるだけで、がん細胞を殺さないのか、その研究結果を
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