マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究グループは、血管の形成を阻害する全く新しい種類の血管新生薬を世界で初めて発見した。PNAS誌の2011年6月27日Early Editionに掲載された報告には、その活性成分をどうやって南米の樹木から抽出し、動物モデルにおいて血管の正常な形成と創傷の治癒と腫瘍の成長がどのように阻害されるかという新規的な機序が紹介されている。
本論文の主筆であるMGH腫瘍生物学Steel Laboratoryのイゴール・ガルカフゼフ博士は「FDAに認可されているほとんどの抗血管新生薬は、血管の形成を直接刺激している血管内皮増殖因子(VEGF)に制御されるパスウエイを阻害している。こ
の医薬がいくつかのタイプのガンの標準的な治療法となってはいるが、患者の生存期間を若干延長するだけの効果しかなく、腫瘍の血管系を標的とするより効果的な新薬が必要である」と述べる。
腫瘍は自らが成長するために血液供給機能の形成と維持を必要とするが、腫瘍の血管系は無秩序な形成傾向が非常に高く、それによって放射線治療や化学療法など従来の治療法が効きにくくなっている。VEGFのパスウエイを標的とする薬剤は腫瘍の血管系を「正常化」し、他の治療法の効果を高める働きがあるが、患者の生存期間の延長にそれ程貢献しない現実は、これらの薬剤に対する耐性が生じたり毒性が出たりする事に依拠すると思われる。
MGHグループの研究ではこの新薬は血管の成長をこれまでと異なる機序で阻害し、ガルカフゼフ博士等は内皮細胞が血管外壁に接着し裏打ちしていくパスウエイに注目した。適切な細胞接着は血管機能にとって重要であり、腫瘍の血管に特徴的な無秩序な細胞の裏打ちは接着の変容をもたらす。研究チームは新規的な二段階探索法を用い、まず細胞接着に関与する50,000種類の化合物をスクリーニングし、次いで、選別された化合物の毒性と、その化合物が、細胞構造に重要なタンパクであるアクチンへどのように作用するかを検討した。
この研究で選択された2つの化合物のうちの1つはアルゼンチンやブラジルに原生する樹木タブベイヤ・アベラネダエから抽出されたデヒドロαラパコン(DAL)である。DALは抗腫瘍活性を有する化合物と類似した構造を持つが毒性を提示せず、更なる検討が続けられる。研究者グループは、このDALをゼブラフィッシュに投与すると、胚の発生過程と創傷の治癒過程とで血管形成が阻害される事を最初に示した。次いで、マウスに移植された腫瘍の血管密度を低下させ、毎日投与する事によって腫瘍の発達が顕著に抑制される一方で毒性を提示しない事を見出した。ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いた実験から、DALを投与すると、細胞骨格を成すアクチンの構成が変化し細胞の大きさと形状が変わり、新しい血管ネットワークの形成がブロックされ現行のネットワークが再構築される事で、創傷治療に必要な細胞の移動が阻害される事が判明した。
更なる研究によってDALは、細胞接着と細胞骨格形成とに重要な役割を担うタンパクであるRac1の活性を低下させる事によってこれらの効果をもたらす事が判った。「DALが抗血管作用とRac1を標的とする作用を有する事をこの研究が初めて明らかにし、私達のデータによってDALがRac1タンパクの分解を誘発する事が強く示されました。DALは多くのタイプのガンの治療法を改善する力を持っており、それだけでなく血管の異常に依拠するその他の多くの疾患に適用できる可能性があるのです。」とSteele Labの所長で本報告書の上席執筆者であるラケッシュ・ジェイン博士は説明する。ジェイン博士はハーバード大学医学部放射線腫瘍学(腫瘍生物学)の教授で、ガルカフゼフ博士はハーバード大学医学部放射線腫瘍学の助教である。
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