集団ゲノム解析で遺伝子を歪ませる利己的な“スーパー遺伝子“を研究する生物学者たち
サイエンス出版部 発行書籍
ヒトのゲノムには、宿主の利益を考えず、自己増殖のみを目的とする「利己的な遺伝要素」が散見される。利己的な遺伝子要素は、例えば、性比を歪め、生殖能力を損ない、有害な突然変異を引き起こし、さらには集団絶滅を引き起こす可能性もあるなど、大混乱を引き起こすことがある。ロチェスター大学の生物学者であるアマンダ・ララクエンテ准教授(写真)とダブン・プレスグレーブス教授は、集団ゲノム解析法を用いて、「Segregation Distorter(SD)」と呼ばれる利己的遺伝要素の進化と影響に初めて光を当てた。2022年4月29日にeLifeに掲載された論文ではSDが染色体構成と遺伝的多様性に劇的な変化をもたらしたと報告している。このオープンアクセス論文は「利己的な分離歪みの超遺伝子駆動、組換え、および遺伝的負荷に関する上位性の選択(Epistatic Selection on a Selfish Segregation Distorter Supergene-Drive, Recombination, and Genetic Load)」と題されている。 ゲノムシークエンスで初めて 研究チームは、公正な遺伝子伝達のルールを歪めてしまう利己的な遺伝要素であるSDを研究するために、モデル生物としてミバエを使用した。ミバエは、ヒトの病気の原因となる遺伝子の約70%を共有しており、生殖周期が2週間以下と短いため、比較的短時間でハエの世代を作ることができる。メスのハエは、メンデルの遺伝の法則で予想されるように、SDに感染した染色体を子孫の約50%に伝える。しかし、オスはSDの染色体をほぼ100%子孫に伝える。これはSDが利己的な遺伝要素を持たない精子を殺してしまうからである。なぜ、SDはこのようなことができるのだろうか?それは、SDが研究者の間で「スーパー遺伝子」と呼ばれる、同じ染色体上にある利己的
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