空間トランスクリプトミクス解析を駆使してアルツハイマー病のリスク遺伝子の脳内における役割を特定
サイエンス出版部 発行書籍
アルツハイマー病の主要な発症メカニズムとして知られる炎症と、ミクログリアと呼ばれる脳の掃除屋細胞に集中して存在する遺伝子との関連について、マウントサイナイ医科大学とニューヨーク大学医学部の研究者による新たな研究結果が発表された。この研究結果は、難治性疾患であるアルツハイマー病の治療法の新たなターゲットとなる可能性がある。この遺伝子はイノシトールポリリン酸-5-ホスファターゼD(INPP5D)として知られており、The Journal of the Alzheimer's Associationの「アルツハイマー病と認知症」 誌 の11月30日号に掲載された。 ミクログリアは、アルツハイマー病の認知症に関連する死にかけた細胞やアミロイド斑を除去するスカベンジャーとして働く脳内の免疫細胞だ。ヒト遺伝学的研究により、当初、INPP5Dはアルツハイマー病のリスクと関連していた。他の研究により、アルツハイマー病患者の死後脳組織においてINPP5Dのレベルが上昇していることが明らかになったが、この遺伝子が病気の初期または後期に果たす特定の役割や、これらの機能変化に寄与するメカニズムはまだ分かっていなかった。 脳内のINPP5Dはミクログリアに集中しているため、共同研究者のマウントサイナイ医科大学のミシェル・E・エーリック医学博士(神経学、小児科、遺伝学・ゲノム科学教授)は、遺伝子操作により、病変の発生時にマウスINPP5D遺伝子をミクログリア内で「ノックダウン」(機能を停止)させたマウスを用いて実験を行った。これにより、欠損した遺伝子が脳組織に及ぼす具体的な影響をより正確に把握することができた。その後、約3ヵ月後にプラークの蓄積とミクログリアの挙動を測定した。INPP5Dはアルツハイマー病患者の脳で発現していることが知られていたため、この遺伝子を不活性化したマウスは、アルツハイ
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