絶滅種のゲノム構造を解明—5万2千年前のマンモスの三次元ゲノム構造が明らかに。

科学者たちは、約5万2千年前に生息していたマンモスの三次元ゲノム構造を解明することに成功しました。この画期的な成果は、古代の絶滅種のゲノム構造解析に新たな道を開きました。今回の発見は、2024年7月11日に学術誌Cellに掲載され、論文タイトルは「Three-Dimensional Genome Architecture Persists in a 52,000-Year-Old Woolly Mammoth Skin Sample(5万2千年前のマンモス皮膚サンプルにおける三次元ゲノム構造の保持)」です。

新技術「PaleoHi-C」の開発とその意義

本研究の核となる技術は、古代試料の断片化したDNAに特化した「PaleoHi-C」という手法です。これは、近年開発された「in situ Hi-C(インシチュー・ハイシー)」法を応用したもので、ゲノム全体の三次元構造を明らかにすることができます。従来の技術では、短いDNA断片の配列解析に留まることが多く、古代試料のゲノム全体の立体構造を再構築することは困難でした。

PaleoHi-Cは、マンモスのクロマチン(DNAとタンパク質の複合体)全体の構造を詳細に再構成することができ、染色体の区画、コンパートメント、ループといった構造が5万年以上経過した試料でも保持されていることを確認しました。この手法により、長い年月を経てもゲノム構造が保存されていることが示され、今後、絶滅した他の古代生物のゲノム解析にも応用できる可能性を秘めています。

冷凍保存がもたらす奇跡の保存状態

マンモスの細胞内に残されたクロマチンの三次元構造がこれほどまでに良好な状態で保存されていた理由として、シベリアの極寒かつ乾燥した環境が寄与したと考えられます。この環境は、マンモスの細胞内で「ガラス転移」と呼ばれるプロセスを引き起こし、ゲノム構造が時を止めたかのように凍結保存されました。これにより、ナノメートルスケールで古代ゲノムの詳細を解明することが可能になりました。

マンモスと現存する象のゲノム比較から見える進化の謎

マンモスとその最も近縁であるアジアゾウおよびアフリカゾウとのゲノム比較解析により、特に毛の成長や寒冷適応に関連する遺伝子活動に顕著な違いが確認されました。この発見は、マンモスが極寒の環境で生き延びるための遺伝的適応を理解する上で重要な知見を提供しています。また、これらの違いがマンモスと現存する象の間でどのように進化し、環境に適応していったかを解明する手がかりとなりました。

古代DNA研究の新時代へ—絶滅種の復元に向けた次なる一歩

この研究は、古代DNA研究において新たな可能性を示すものであり、マンモスだけでなく、他の絶滅種のゲノム構造をも明らかにできる手法として注目されています。将来的には、PaleoHi-Cを用いることで、長い年月を経た絶滅種のゲノムを詳細に解析し、進化の過程や環境適応の仕組みを理解することができると期待されます。

本研究のリーダーであるコペンハーゲン大学進化ホログノミクスセンターの研究者は、「もしPaleoHi-Cがマンモスに対して有効であれば、他の絶滅種に対しても応用できる可能性がある。これにより、古代生物学の理解が飛躍的に進展するだろう」と述べており、今後の発展に大きな期待を寄せています。

[Cell article]

この記事の続きは会員限定です