アッシャー症候群の非ヒト霊長類モデルを初めて確認。画期的な科学的成果だと研究者は語る。

 アッシャー症候群の非ヒト霊長類モデルを初めて確認。画期的な科学的成果だと研究者は語る。

アッシャー症候群は、聴覚障害と失明を同時に引き起こす代表的な遺伝性疾患で、まだ治療法が確立されていない病気だ。アッシャー症候群は、遺伝子の変異により、生まれつき耳が聞こえず、平衡感覚に問題があり、徐々に視力を失っていく。10万人のうち4~17人がかかると言われているアッシャー症候群の治療法は、この病気が人に及ぼす影響を忠実に再現する動物モデルがないため、治療が進まないでいた。

オレゴン健康科学大学(OHSU)の研究チームは、そのギャップを埋めるべく取り組んできた。研究チームは、1年前に誕生したアカゲザルのモデルに、アッシャー症候群の最重症型である1B型の症状があることを確認し、2023年2月11日にフロリダ州オーランドで開催された耳鼻咽喉科学会第46回年次中間学術集会で発表した。研究グループは、遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9を用いてそのモデルを作成し、アッシャー症候群の実験的な遺伝子治療法の検証を可能にした。この発表タイトルは、「アッシャー症候群1B型アカゲザルモデルにおける先天性難聴、前庭機能障害、進行性視覚障害について(Congenital Deafness, Vestibular Dysfunction, and Progressive Visual Impairment in a Rhesus Macaque Model of Usher Syndrome Type 1B)」と題されている。

研究チームのリーダーであるOHSUのオレゴン国立霊長類研究センターの神経科学教授でOHSU医学部の眼科学研究准教授のマーサ・ノイリンガー博士は、「アッシャー1Bの子どもらは生まれつき耳が聞こえないが、人工内耳は、特に早期に埋め込むことができれば、良好な聴力を得ることができる。しかし、アッシャー1Bの子供に起こる着実に増加する視力低下を止める治療法は、今のところない 」「だからこそ、正確なアッシャー・モデルを持つことはとても重要なのだ。このモデルによって、いつの日かアッシャー症候群の子どもたちの視力を維持できるようになることが、我々の希望であり目標だ。」と述べている。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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