胆汁酸が肝障害に与える影響を探る新たな知見:ミトコンドリア機能、炎症、自食作用の役割

胆汁酸(BAs)は、肝臓でコレステロール代謝から生成される重要なシグナル分子であり、脂質の消化吸収に不可欠です。しかし、胆汁うっ滞(cholestasis)と呼ばれる胆汁の流れが阻害される状態では、肝臓や血流に疎水性の胆汁酸が病的に蓄積します。この蓄積は、肝臓への損傷を悪化させるだけでなく、細胞プロセスに重大な影響を与えます。本レビューでは、胆汁酸がミトコンドリア機能、エンドプラスミックレチiculum(ER)ストレス、炎症、自食作用(オートファジー)を通じて肝障害に寄与する仕組みに関する最新の知見を紹介しています。

肝細胞アポトーシスの経路

ミトコンドリアは、アポトーシス(プログラム化された細胞死)の調節において中心的な役割を果たします。胆汁うっ滞性肝障害では、胆汁酸が以下の2つの主要なアポトーシス経路に影響を与えることが知られています。

受容体非依存性経路

胆汁酸は、ミトコンドリア電子伝達系(ETC)を直接的に損傷し、活性酸素種(ROS)の生成を促進します。これにより酸化ストレスが引き起こされ、ミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)が開き、細胞死が進行します。この際、ミトコンドリアから放出されたシトクロムCは細胞質に移行し、内因性アポトーシス経路を活性化してカスパーゼ酵素を作動させます。

受容体依存性経路

胆汁酸は、FAS受容体などの細胞膜上の死受容体と相互作用し、アポトーシスを引き起こします。この相互作用は、細胞死誘導シグナル複合体の形成をもたらし、下流のカスパーゼを活性化します。さらに、BAXやBAKなどのBcl-2ファミリータンパク質がミトコンドリア膜の透過性を促進します。

ERストレスと炎症反応

エンドプラスミックレチiculum(ER)は、タンパク質合成や折りたたみ、カルシウム貯蔵において重要です。胆汁うっ滞による細胞プロセスの障害は、折りたたみ不全タンパク質の蓄積を通じてERストレスを引き起こします。これにより、過剰な未折りたたみタンパク応答(UPR)が活性化され、最終的にはアポトーシスを誘導します。

また、胆汁うっ滞による肝障害は、炎症反応を伴う場合が多いです。胆汁酸によって放出されるミトコンドリアDNA(mtDNA)は、細胞質で損傷関連分子パターン(DAMP)として作用し、TLR9を活性化します。これがNF-κBシグナル伝達経路を介して炎症性サイトカインの産生を促進し、免疫細胞(例:好中球)を肝臓に動員します。

自食作用の障害と臨床的進展

胆汁うっ滞は自食作用(オートファジー)の過程にも影響を与えます。自食作用は、損傷した細胞小器官やタンパク質を分解・リサイクルする重要なプロセスですが、胆汁うっ滞ではオートファゴソームとリソソームの融合が阻害され、細胞損傷が悪化します。

臨床研究では、胆汁うっ滞におけるミトコンドリア機能不全を標的とした治療法が注目されています。たとえば、FXRアゴニストであるオベチコール酸(OCA)は、一次性胆汁性胆管炎(PBC)患者の肝機能改善に有効性を示していますが、副作用が課題です。また、炎症性経路を標的とした治療法や、ミトコンドリア標的薬の臨床試験の進展が求められています。

[News release] [Journal of Clinical and Translational Hepatology review]

この記事の続きは会員限定です