骨髄移植がレット症候群の症状を改善
サイエンス出版部 発行書籍
2012年3月18日付のネイチャー誌オンライン版に、レット症候群モデルにおける免疫機能が障害された細胞を、骨髄移植(BMT)によって置き換える試みの結果が掲載された。レット症候群マウスモデルを用いた研究結果では、小児期症例の重篤な症状の多くが改善され、例えば、呼吸障害や動作障害の改善や寿命の延長などが観察された。小グリア不全におけるMecp2タンパクの機能を精査し、「レット遺伝子」にコードされる事を明らかにしたのは、バージニア大学医学部の主任研究者ジョナサン・キプニス博士とその研究チームである。彼らは神経学的症候群に対処する初めての研究手法の提唱者といえる。 レット症候群が示す最も顕著な症状は、自閉症スペクトラム障害であり、Mecp2遺伝子のランダム変異によって引き起こされ、おびえ退行が始まる6カ月−18か月齢の女児に最も多く発症する。発症した子供たちは、言語機能と手先の機能を失い、レット症の進行と共に、運動機能が損なわれていく。呼吸障害、パーキンソン病様震え、強い不安感、消化・循環器障害、広範囲にわたる自立神経失調、そして整形外科的異常などの症状が観察される。患者の寿命のほとんどは成人するが、多くが車いすに座りっきりで、食事はチューブを必要とし、コミュニケーションもできず、これらが一生続くのだ。 キプニス博士は神経学者としての予見から、レット症候群に注目したのである。「医科学的興味から研究を始めたのですが、」と同博士は話を切り出す。「レット症候群における、神経学的な機能と免疫システムの関連性を研究することに夢中になりました。骨髄移植療法が症候群の様々な症例に期待されるので、私達は全力で実験に取り組んでいます。」脳の大部分はいくつかのタイプのグリア細胞で構成されており、多様性のある複雑な機構には、神経細胞の成長とメンテナンスを司り健康を維持する機能も含まれている。
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