カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者らが、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを予測する方法の解明に一歩近づきました。2024年9月3日付けでJAMA Pediatricsに掲載された新たな研究「Early Newborn Metabolic Patterning and Sudden Infant Death Syndrome(新生児の早期代謝パターンと乳幼児突然死症候群)」では、SIDSで亡くなった乳児に特有の代謝パターンが特定されました。この研究は、SIDS予防のための具体的な手がかりとなる可能性を秘めています。
SIDSの現状と課題:原因不明の乳児死亡
SIDSは、1歳未満の乳児約1,300人が毎年死亡する原因不明の疾患であり、両親や医療従事者にとって大きな課題です。これまでの研究から、SIDSには単一の原因があるわけではなく、いくつかの要因が重なることで発生する可能性があると考えられています。
例えば、不十分な出生前ケア、妊娠中の喫煙や飲酒、大気汚染、構造的人種差別がリスクを高めるとされています。また、男児の発症率が女児より高いことも明らかになっています。これらの社会的・環境的要因に加え、生物学的要因がSIDSの重要な原因である可能性が示唆されており、今回の研究はその点に焦点を当てています。
研究の目的と方法:代謝パターンに注目
研究チームは、代謝システムにおける特異なパターンがSIDSのリスクに関連している可能性を探るため、カリフォルニア州で行われた新生児スクリーニングデータを分析しました。このスクリーニングは、生まれたばかりの赤ちゃんの血液サンプルを用いて代謝異常を早期発見するためのもので、今回の研究では、SIDSで亡くなった乳児354人と、同年代で健康に育った乳児を比較対象としました。
発見された代謝バイオマーカーとその意義
分析の結果、SIDSリスクに関連するいくつかの代謝バイオマーカーが特定されました。
1.リスクを高める代謝因子
プロピオニルカルニチン(C-3)の低値
ヒドロキシアシルカルニチン(C-14OH)の高値
これらは、脂肪酸酸化酵素に関連しており、過去の研究結果とも一致しています。脂肪酸酸化酵素の異常は、エネルギー代謝の乱れを引き起こし、乳児の生命維持に影響を与える可能性があります。
2.リスクを低減する代謝因子
複数の代謝バイオマーカーが、SIDSリスクを低下させる要因として挙げられていますが、その詳細についてはさらなる研究が必要とされています。
これらの結果は、SIDS発症のメカニズムを解明する重要な手がかりとなると期待されています。
今後の展望:予防のためのスクリーニングと治療法
今回の研究は、SIDSリスクを早期に評価する可能性を開くものですが、さらなる検証が必要です。研究者らは現在、SIDSで亡くなった乳児のデータを用いていますが、今後は現在生存している乳児を長期間追跡し、リスク要因の変化を観察することで、より包括的な結果を得る計画です。
UCSFの疫学者で研究の第一著者であるスコット・オルトマン(Scott Oltman, MS)は次のように述べています。 「この研究は、代謝バイオマーカー、遺伝的マーカー、および環境リスク要因を統合することで、乳幼児のSIDSリスクをより正確に評価するための第一歩です。」
最終的な目標は、新生児スクリーニングでリスクを判定し、必要に応じて治療介入を行うことです。この研究は、将来的なSIDS予防の基盤となる可能性を秘めています。
この研究は、UCSFの多くの研究者による共同成果です。著者にはエリザベス・E・ロジャーズ博士(Elizabeth E. Rogers, MD)やリベカ・アムサル博士(Ribka Amsalu, MD)らが含まれています。著者全員および資金提供情報については論文をご覧ください。



