ヘブライ大学発のバイオベンチャーが、病気のない老化を可能にする新経口薬 (1,8-ジアミノオクタン) を開発。 近い将来に前臨床試験を実施予定。
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ヘブライ大学医学部のアイナヴ・グロス教授とシュムール・ベン=サッソン教授の研究に基づくバイオベンチャー企業Vitalunga社は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの老化関連疾患の治療と予防を目的とした新規経口薬[1,8-diaminooctane (VL-004)]を開発したと2022年6月13日に発表した。高齢者の寿命延長には多くの成功例があるが、無病は依然として課題となっている。ヘブライ大学の技術移転会社であるYissum社によれば、この新薬候補は、高齢者の生活の質を著しく向上させる可能性があるとのことだ。現在、前臨床試験を開始するための資金調達を行っている。
老化に関連する多くの疾患には、健康な組織であっても細胞が劣化するという共通の発症メカニズムがあると考えられている。グロス教授とベン=サッソン教授の独創的なドラッグデザインプラットフォームにより、ヒト細胞において強力なオートファジー(代謝ストレスに適応するための基本的な細胞生存メカニズム)とマイトファジー(ストレスに応じて有害な影響を防止し細胞の恒常性を回復するミトコンドリア品質管理メカニズム)を促進する新規化合物群(デザイナージアミン)の発見を実現した。さらに、この化合物は、モデル生物である線虫の寿命と健康寿命を促進した。
グロス教授、ベン=サッソン教授、およびヘブライ大学の同僚による論文は、これらの化合物の第一世代の生物学的特徴を詳細に記述しており、この分野の主要雑誌であるAutophagyに2022年6月1日にオンライン公開された。この論文は「識別可能なデザイナーズジアミンはミトファジーを促進し、それにより線虫の健康寿命を延ばし、酸化ダメージからヒト細胞を守る(Distinct Designer Diamines Promote Mitophagy, and Thereby Enhance Healthspan in C. elegans and Protect Human Cells Against Oxidative Damage)」と題されている。
これらの化合物の発見を契機に、Vitalunga社は、加齢に伴う劣化の防止をターゲットとした、より高度な新規薬剤の開発に着手した。Vitalunga社独自のプラットフォームは、疾患組織における細胞の永続的な若返りを実現し、複数の老化関連疾患の予防と治療のための薬剤反応性統一標的を初めて可能にしたものである。
国連の世界人口高齢化報告書によると、2019年の世界の高齢者人口は7億300万人で、2050年には15億人を突破すると予想されている。日本のように高齢者人口が過去最高を記録し、医療制度に負担がかかっている国にとって、Vitalunga社のプラットフォームは、これらの負担を最小限に抑えつつ、より良い健康的な生活の質をユーザーに提供できる有望なソリューションとなる。
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