いくつかの癌における制御不能な腫瘍増殖の主な原因は、細胞内の低酸素環境である可能性がある、とジョージア大学の研究が明らかにした。本発見は幅広く受け入れられている‘遺伝子変異が癌の成長の原因である’という説に逆らうものである。「低酸素症、または細胞内の低酸素レベルが、特定の癌タイプの主な原因だとしたら、悪性腫瘍の治療法が著しく変わることでしょう。」と、リージェンツ・ジョージア研究同盟学者、そしてフランクリン・カレッジの生物情報学および計算生物学教授、イン・ズー博士は語る。研究チームは公的データベース内の、七つの異なる癌タイプより集めたRNA(トランスクリプトーム)データを解析した。 

英国レスター大学循環器科学科の研究チームが、高血圧の原因について画期的な研究を行なった。2011年10月31日付けのHypertension誌オンライン版に発表された成果は、ヒトの腎臓内の遺伝子物質を探索し、高血圧に関与すると考えられる遺伝子を発見したというものだ。これにより今後、高血圧の原因を究明する研究に、新しい道が開かれるであろう。腎臓内にヒト高血圧に関与する重要な遺伝子とmRNA、そしてmicroRNAが存在することが明らかにされた。 

カンガルーは進化系統樹において特異な位置を占めているが、今日までそのDNA配列は解析されていなかった。この度、BioMed Central誌のオープンアクセスジャーナルGenome Biology 2011年8月19日付に、国際研究チームによるカンガルーのゲノムシーケンスが発表された。タマーワラビーと呼ばれるカンガルー種で、その遺伝子に隠されたカンガルー独特の「跳躍」に関与する遺伝子が見つかったようである。 

小児脳腫瘍の中には、稀に脳幹に発生し致死性が高い症例がある。この腫瘍を研究しているグループが、この小児脳腫瘍症例のほぼ80%に共通して見受けられる遺伝子の変異を明らかにしたが、その遺伝子は、これまで腫瘍とは関連していないと考えられてきたものだった。この遺伝子の変異は、他の悪性小児脳腫瘍にも積極的に関与していることが、初めて明らかになってきた。この新たな知見は、聖ユダ子供病院研究所で実施されている、ワシントン大学小児腫瘍遺伝子研究プロジェクト(PCGP)の研究結果である。 

「Science」誌(2011年5月13日号)の記事に、自然界には存在しない新しい抗ウイルス性タンパク質の設計へのコンピュータの活用方法について記載された。この新規タンパク質は、風邪ウイルス分子の特異的な表面を標的とすることが可能である。このようなタンパク質設計が目指すゴールのひとつは、細胞侵入とウイルス再生に関与する分子メカニズムをブロックすることであろう。コンピュータ上で設計した表面を標的とする抗ウイルス性タンパク質には、感染ウイルスの同定や制圧に関連した診断ならびに治療の可能性が示唆された。 

2歳の時に脳性麻痺と診断された双子のノア・ビーリイとアレクシス・ビーリイの両親は、生まれた時から我が子に降りかかった苦難を取り除く答えを、ようやく手にする事が出来たと思っている。但しこの双子の問題を解決するには母親の遺伝情報が詳細に調査される事が不可欠であり、手にした答えは「道半端」でもあった。その遺伝子調査はBaylorヒトゲノム解析センターと国中から集まった専門家達の特殊なスキルによって行われる。 

フィッシュオイルから産生される化合物は、白血病幹細胞をターゲットにするため病気の治療法につながる可能性がある、とペンシルベニア州立大学の研究者は推測する。「Δ12プロスタグランジンJ3、またはD12-PGJ3と呼ばれるこの化合物は、マウス実験において慢性骨髄性白血病(CML)の幹細胞をターゲットにし、死滅させる事が実証されました。」と、獣医医科学部免疫分子毒物学准教授のサンディープ・プラーブ博士は語る。「D12-PGJ3は、魚やフィッシュオイルに含まれるω3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)から生産されます。過去の研究では、脂肪酸は心血管系や脳の発達に良い影響をもたらし、特に乳幼児の健康に役立つものであると示されていました。 

推定150万種ある真菌は、生命樹系図最大のブランチの一つでもあり、日常の生活や生態系の機能に、大きな影響を与えている。これは、真菌が、病原体としての機能や物質を分解する作用の保有、また宿主との共生関係の構築など、様々な性質を有しているからである。真菌類を人類の利益のために使用するためには、これらの振る舞い、機能、自然環境や人工環境における相互作用などを、明確に理解せねばならない。カルフォルニア大学・植物病理微生物学の准教授であるジェイソン・スタージック博士は「真菌1000ゲノム」プロジェクト国際チームの一員でもある。 

バージニア海洋科学研究所(VIMS)によって成された「海洋法医学」における新たな発見により、アメリカ連邦シーフード管理局は、カジキマグロの代表格であるブルーマーリンを遺伝子検査して元来生息していた海域を、素早く且つ正確に割り出す事が出来るようになった。この検査は、アメリカのシーフード市場で販売されているブルーマーリンが、大西洋で獲れたものではない事を確認するために、必要なのである。 

過剰量のMeCP2タンパク質と関連する不安症や行動問題は、二つの遺伝子(Crh[コルチコトロピン放出因子]とOprm 1[μオピオイド受容体MOR 1])の過剰発現によるものであることが分かり、これらの問題を抱える患者の治療への道が開けるかもしれない。そう語るのは、ベイラー医科大学(BCM)の科学者達である。この研究レポートはNature Genetics誌オンライン版に掲載された。 

私たちの舌は脂肪に対して親和性を有するようだと、セントルイス、ワシントン大学医学部の研究チームが明らかにした。遺伝子の変化によって、人は脂肪の味に多少敏感になるのだ。本研究は、脂肪を感知するヒトのレセプターを始めて同定し、食品中の脂肪に敏感な人々もいるであろうことを示唆している。本研究は2011年12月31日付けのジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ誌に掲載された。 

UCLAの幹細胞研究チームは ES細胞における5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)によるDNA修飾の全ゲノム解析を世界で最初に完了し、主にオン状態或いは活性化状態の遺伝子上に観察される事を発見した。このUCLAイーディスブロードセンター再生医学・幹細胞研究所とイーライリリーの研究チームによる発見は、ガンのような疾患では、特定の遺伝子を制御する事で疾患をコントロールできる事を明らかにするものと考えられる。「ともかく、遺伝子のコントロールはヒトの疾患とガンに大変有用なのです。 

NIHの研究チームが、稀な免疫疾患を引き起こす遺伝子変異を同定した。この遺伝子変異は血縁でない3家族から見つかり、過度の免疫系障害が特徴的である。症状は免疫不全、自己免疫、炎症性皮膚疾患、および寒冷蕁麻疹が含まれる。本研究は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)アレルギー性疾患研究所、ジョシュア・ミルナー博士および国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)所長、ダニエル・カスナー博士によって進められ、2012年1月11日付けのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された。 

まるでマジシャンが奇術を見せるように、mitoNEETタンパク質(糖尿病や癌、そして老化において重要な役割をもつ、まだ謎の多い物質)は、1カ所で動きを見せたかと思うと、より重要な活動を別の箇所で行っていたりするのである。このタンパク質が鉄や硫黄など、有毒な物質の構造部をどのようにコントロールしているのかを理解するため、ライス大学およびサンディエゴ、カリフォルニア大学(UCSD)の研究チームは室内実験とコンピューターモデリングを駆使し、mitoNEETの活動の一部を解読した。 

アンデス地方やチベット高原などの高地に住む人々は、幾代にも渡り低酸素条件での生活に適応してきた。このような特徴的かつ強力な選択圧で生活をする様は、進化論において教科書のように良い例である。しかし、その遺伝子がどのようにして生存優位性を得ているのかは未だ解明されていない。この謎を解くため、ペンシルベニア大学の研究チーム(以下ペン・チーム)は、初となるゲノムワイドな高々度適応性の研究を始めた。 

乳房細胞が腺房と呼ばれる乳腺中の球状組織を形成する上で 重大な役割を持つ回転運動を発見した、と米国エネルギー省(DOE’S)ローレンス・バークレー国立研究所(Berkeley Lab)の研究チームが発表した。本研究は乳がんリサーチにはもちろん、基礎細胞生物学にも重要な意味を持つ。その接着性角運動のために、”CAMo”と呼ばれるこの回転運動は、細胞が球体を形成するのに必要不可欠なのである。 

National Institutes of Health (NIH) の研究チームは、ゲノム・シーケンシングを使って抗生物質耐性の (Klebsiella pneumoniae) 肺炎桿菌シーケンス・タイプ258 (ST258) の進化を追跡調査した。この菌は院内感染症を引き起こす菌としてごく一般的である。以前には、ST258 K. pneumoniae菌株は単一の祖先から広がったものと思われていたが、NIHの研究チームの研究から少なくとも2つの異なる系統があることが証明された。 

結核治療の初期段階で食物摂取のタイミングが治療効果に思わしくない影響を及ぼすことがある。2014年9月7日にドイツのミュンヘンで開催されたEuropean Respiratory Society (ERS) International Congressでプレゼンテーションされた新しい研究によると、結核治療薬服用直前に食物を食べると薬の効果が弱まる可能性がある。研究チームは、初めて結核の治療を受けるという患者20人を対象に簡単な研究を行った。患者にはisoniazid、rifampicin、pyrazinamide、ethambutolなど、ごく一般的な結核治療薬が与えられた。治療薬は初日は注射で、2、3日めは経口で、絶食中または高炭水化物食と一緒に投与した。各患者から血液サンプルを採取、LC/MS/MSと呼ばれる分析化学テクニックでサンプルを分離、サンプル中の化学物質を調べた。このテクニックは、医薬品の濃度と循環器系に届いた元のままの医薬品の比率を評価することができる。

女性の体の細胞は、卵細胞を除いてすべて2本のX染色体を持っており、男性のXY染色体に対して適正な遺伝子量補償をするため、この2本のX染色体のうち1本が不活性になる。オランダのRadboud University Nijmegenの分子生物学者、Dr. Hendrik MarksとDr. Henk Stunnenbergと、同じオランダのErasmus MC in RotterdamのDr. Joost Gribnauの率いる研究グループの共同研究は、この不活性化のメカニズムがX染色体全体に及んでいることを示した。最終的な研究結果はGenome Biologyに掲載されることになっており、2015年8月3日付けで暫定的なPDF版論文がオンラインで掲載された。 

アメリカと西アフリカの国際研究チームに参加していたスクリプス研究所の研究者は、エボラ・ウイルスに近い種で致死的なラッサ・ウイルスの古代の起源と、ラッサ・ウイルスの進化過程を明らかにする研究成果を発表した。新研究の筆頭著者で、スクリプス研究所の生物学者、Dr. Kristian G. Andersenは、「これでラッサ・ウイルスの進化過程が解明された。この成果はワクチンや治療法を開発する上で重要なことだ」と述べている。 毎年少なくとも5,000人がラッサ熱で亡くなっている。 

Johns Hopkins大学の研究チームは、マウスでの研究で新しく信号伝達経路細胞を突き止めた。おそらく人間も含めて哺乳動物は、傷の治癒過程でこの信号伝達経路を通して毛嚢や皮膚の再生をしていると考えられる。2015年8月6日付Cell Stem Cell誌オンライン版オープン・アクセス特集論文として発表されたこの研究は、将来的に火傷その他の傷害事故で傷痕を残す毛髪、皮膚、その他の器官組織再生を促進するようになる可能性があるとしている。 

アメリカ合衆国カリフォルニア州ラ・ホラのSalk Institute for Biological Studiesで研究する科学者達はエピゲノムの多様性にある種のパターンを解明した。このエピゲノム多様性は、植物が様々な環境に適応するカギを握っているだけでなく、作物栽培やヒトの疾患研究にも役立つ可能性がある。Nature誌2013年3月6日付オンライン版に掲載されたこの論文は、世界中の植物に見られる遺伝子の多様性に加えて、そのエピゲノム構成も植物の分布する環境に合わせて様々な変化があることを突き止めている。 

St. Jude Children's Research Hospital研究チームが主導して行った研究で、2種のiPS細胞を「三次元n培養」し、それぞれの網膜細胞形成能力を調べた結果、うち一つが特に優れていることを突き止めた。この研究では、網膜変性治療でiPS細胞のタイプによって効果に優劣がある可能性を示しただけでなく、その効果の標準定量化法も提案している。この研究は、St. Jude Department of Developmental Neurobiologyのメンバーであり、Howard Hughes Medical Institute (HHMI) の治験責任医を務めるMichael Dyer, Ph.D.が指導して行われた。 

スクリプス研究所 (TSRI) フロリダ・キャンパスの研究チームは、“microRNA” (miRNAs)が動物モデルの記憶形成で驚くほど様々な役割を担っていることを突き止めた。ある場合にはこのRNAが記憶を増進させたが、ある場合には記憶を減退させた。この研究を指導したTSRI, Department of NeuroscienceのDr. Ron Davisは、「私達の系統的なスクリーニングで、すべてのmiRNAを総合的に同定することと、正常な学習記憶機能に重要な役割を持つ遺伝子ネットワーク中でmiRNAがターゲットとするものを突き止める目標に向けて重要な第一歩を踏み出すことができた。 

2014年3月4日、健康で実り豊かなヒューマン・ライフの長寿を目指す、ゲノミクス、細胞療法ベースの診断療法開発会社Human Longevity Inc. (HLI) 設立が発表された。発表には共同設立者のJ. Craig Venter, Ph.D.、Robert Hariri, M.D., Ph.D.、Peter H. Diamandis, M.D.の3氏が立ち会った。同社はカリフォルニア州サン・ディエゴに本社を置き、投資家から資本金7,000万ドルを募って事業を始める。 

University of Texas MD Anderson Cancer Centerの研究によれば、がんエキソソームに見つかる遺伝子glypican-1 (GPC1) がエンコードするタンパク質を用いた非侵襲性診断検査で、外科手術が有効な早期の膵がんを発見することができるようになるかも知れない。がん細胞だけでなく、あらゆる正常細胞からも放出される微小なウイルス大の粒子、エキソソームにはDNA、RNA、タンパク質が含まれていることが多い。 

Broad InstituteとMassachusetts General Hospital (MGH) の研究者を中心とする国際研究チームが、肥満体や高齢者など2型糖尿病発病リスクの高い人の場合でもリスクを低減する遺伝子の突然変異を突き止めた。この研究結果は新しい2型糖尿病治療方法の可能性を示しており、この突然変異の保護機能を模倣する医薬を開発できればこの不治の疾患を防ぐ新しい方法が開けていくはずである。 

National Institutes of Health (NIH) 所属の研究者らのチームが人間の胎盤の機能と妊娠における胎盤の役割を研究するため、ラボオンチップの胎盤を開発した。この装置は、胎盤の構造と機能をミクロのレベルで再現し、同時に栄養が母体から胎児に移動する機序を再現するよう考案されている。生体医学の発展を促すために様々なオンチップ臓器技術が開発されているが、このプロトタイプはその最新の開発の一つである。 

マサチューセッツ州ボストンのHarvard Universityとウッズ・ホールのMarine Biological Laboratory (MBL)の研究者は、小さな海洋動物が環境に合わせて体色を変える自然のつくったナノスケール・フォトニックの原理解明が進めば兵士の軍装の迷彩も改良できるのではないかと考えている。「海のカメレオン」と呼ばれるコウイカは、体表の色やパターンを急速に変化させて視覚的に環境に溶け込み、天敵から身を守ることができる。 

脱毛化を防ぎ、ふさふさした毛髪を取り戻す方法として、幹細胞を使って、消失したり、死滅していく毛包を再生させる方法が可能性として残されている。ただし、これまで、毛包を生成する幹細胞を十分な数だけつくり出すことが不可能だった。University of Pennsylvania (Penn), Perelman School of MedicineのPathology and Laboratory Medicine and Dermatology准教授、Xiaowei "George" Xu, M.D., Ph.D. と同僚研究者の研究論文が2014年1月26日付Nature Communicationsオンライン版に掲載され、その中で成体細胞を上皮幹細胞 (EpSCs) に変換する方法が述べられている。 

通常、がんは患者が死ぬと一緒にがん細胞も死んでしまうが、イヌのある種の性感染性がんはそうではない。2014年1月24日付Science誌に掲載された研究論文で、Director of the Sanger InstituteのProfessor Sir Mike Stratton (写真) の率いる研究チームは、11,000年にわたってイヌの体内で生きてきたこのがんのゲノムとその進化過程について述べている。 

Buck Institute for Research on Agingの研究によると、ごく一般的なOTC医薬品の鎮痛解熱剤イブプロフェンが健康長寿に役立つかも知れない。2014年12月18日付オープンアクセス・ジャーナル「PLOS Genetics」オンライン版に掲載された研究論文は、イースト、ワーム、ミバエにイブプロフェンを継続的に投与した結果、その寿命が伸びたとしている。 

オレゴン州立大学(UO)の研究チームが、ヘリコバクターピロリ菌がどのようにして胃内部の酸性環境を生き抜くのかを発見し、病因作用を抑え込む新たな除菌法への道を開いた。現在の除菌法では、除菌が十分でなかったり、副作用によって除菌治療が続けられなかったりする。H.ピロリ菌の酸レセプターTlpBの結晶構造を明らかにした研究結果は、Structure誌2012年6月14日オンライン版に発表された。このレセプターは、PAS領域として同定されている外部突起部を有し、低分子である尿素の結合を受けることで、外部環境の状態を計測している。細胞外PAS領域を含む、機能が明らかな化学レセプターが、結晶学的に明らかにされたのは、TlpBが初めてであると研究チームは説明している。 

地球上で最も数奇な運命を辿ったバクテリアは海洋に由来し、SAR11グループに属すると考えられてきた。スウェーデンのアップセラ大学の研究者グループが行なった最新の研究によって「数奇な運命」の内容が明らかにされると共に、これらのバクテリアについて従来認められてきた理解の概要に疑問が呈される事となった。彼らの解析によると、新たにこれまで発見されていなかった貴重なミトコンドリアの仲間も同定された。ミトコンドリアは細胞内の発電所の役目を果たしている。 

癌治療の際に大きな問題となるのが“薬剤耐性”(ADR)である。この耐性に関与するタンパク質をモニターする事が、今まで研究者達の超えられない課題となっていた。しかし、フロリダ州タンパにあるモフィット癌センターの研究チームが、ADRについての理解を深める事につながる、有望なモニタリング技術を開拓しているのだ。さらにこの技術は臨床面でも、多発性骨髄腫患者の個別治療法を開発する際に役立つ。 

コロンビア大学メディカルセンター(CUMC)と他の研究機関で構成される遺伝子研究チームが、哺乳類細胞における膨大な遺伝子機能調節ネットワークを明らかにした。これによって、遺伝的変異性の観点から、悪性腫瘍や他の疾病を説明できる道筋が出来た事になる。この新たな機能ネットワークに関連する4つの研究結果が、2011年10月14日付Cell誌に発表された。「この遺伝子機能調節ネットワークの解析によって、細胞内情報伝達機構を解明するために欠けていたパズルのピースが見つかり、これまでは不明だった特定の腫瘍や疾病に関与する遺伝子を同定する事が出来るのです。」とCUMC研究報告書上級主筆でシステムバイオロジー・コロンビア・イニシアチブの所長を務めるアンドレア・カリファーノ教授は話す。 

古代から現代までのヒトのDNAパターンを研究している国際チームは、40,000年前のアジアへの集団大移動と人種間のDNAの混合について新事実を発見した。ハーバード大学医学部とドイツ、ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームが最先端のゲノム解析法を使って調べた結果、デニソバンと呼ばれる古代人類が、現代のニューギニアだけではなく、フィリピンとオーストラリアのアボリジニのDNAに関与していることが分かった。このデニソバンとは最古の人類の一種で、去年シベリアで発掘された指骨のDNAを解析した結果解明された。 

鳥類用の最大規模のDNAデータセットと次世代シーケンス(NGS)法とにより、スミソニアン研究チームは、世界で最も種類が多く且つ絶滅の危機に瀕している鳥類であるハワイミツスイ種の進化系統樹を解析した。ミツスイ類に属し、その進化のルーツであるフィンチのタイピングを行なうだけではなく、ハワイの主たる4諸島で迅速に進化したタイミングにも焦点を当てた。「55種類を超える色彩豊かなソングバードがいましたが、同属であるかどうかは明確ではありません。種子を食する種もいれば果実やカタツムリを、或いは果汁を食する種もいます。 

遺伝子が生命の設計図であり、タンパク質が細胞のための作業を行う機械であるとしたら、タンパク質とリンクしている糖類は,細胞が外の世界とコミュニケーションを取る事を可能にするツールの一つです。しかし今まで、生物学的に重要なGAGプロテオグリカンと呼ばれる複合分子の構造の確定はおろか、これらの複合分子が明確な構造を有している事すら確認されていなかった。 

ウェイクフォレスト・バプテスト医療センターの研究者達が試験している新しい治療法が、心血管系疾患に効果的であることが実証された。この治療法は非ヒトの霊長類で試験が進められていて、善玉コレステロールを増やし、血液中のトリグリセライドを下げる働きがあるのだ。国立衛生研究所とカナダ保健研究所のサポートにより、前臨床実験での成果が2011年10月19日付けのネイチャー誌に掲載された。 

浸潤性乳管ガン(IDC)の無病生存率の予測は、F-18-フルデオキシグルコース陽電子放出断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影(CT)を使用することで簡単になるかもしれない、との発表が2012年6月29日付けのThe Journal of Nuclear Medicine誌にオンライン掲載された。本研究は同誌の9月号でも印刷出版される予定である。韓国の研究チームによって得られた新たなデータは、治療前のリンパ節によるF-18-FDGのSUVmax(最高集積度)が、再発の指標である事が示唆される。「多くの研究が、腋窩リンパ節転移陽性乳ガン患者は、リンパ節転移の無い患者よりも予後が不良であることを明らかにしています。 

胚酵素ピルビン酸キナーゼM2(PKM2) が有する新陳代謝における役割は、既によく知られており、ヒトのがんでは高度に発現されている。2011年11月6日付けのNature誌オンラインにて、テキサス大学アンダーソンがんセンターの研究チームは、PKM2ががんの形成に重要な非代謝機能を有することを発表した。「私たちの研究では、PKM2ががんの代謝に重要な役割を担う上に、細胞増殖を調節するという予想外の機能も持ち合わせていることが分かりました。 

今後の小児がんの治療法を変えるであろう、劇的な遺伝的新事実を、カナダ、モントリオールのマギル大学ヘルスセンター研究所(RIMUHC)率いる国際研究チームが解明した。研究チームは、小児グリア芽細胞腫の約40%の原因である二つの遺伝子変異を同定した。小児グリア芽細胞腫は化学療法にも放射線療法にも非応答性である致命的な癌である。発見された変異はDNA調節に関与していることが分かり、そのために従来の治療が効果的で無かったのではないかと思われる。 

関節リウマチの治療薬で知られるKineret(アナキンラ)が、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)による臓器障害の進行を止めるのに有効であることが、新たな研究で明らかになった。この稀な遺伝性疾患は、持続性炎症および進行性組織損傷を引き起こす。本研究はアメリカ国立衛生研究所の国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所(NIAMS)の研究チームによって行われた。NOMIDは皮膚、関節、眼、そして中枢神経系を含む多臓器に影響を及ぼす。 

ニューロンの発達および生存に関連している神経栄養因子が、ハンチントン病などの神経疾患において回復性治療の可能性をもつことが研究で示されている。しかし、これらのタンパク質は血液脳関門を通過出来ず、半減期も短い。さらに重度の副作用を起こすため、臨床適用が困難なのである。今回研究者達は、遺伝子組み換え神経栄養因子を脳に直接提供するデバイスを移植することで、実験用ラットの神経症状の治療に成功したのである。 

シンガポールのゲノム研究所(GIS)の研究者が、初となる生物のDNA配列を再構築する計算ツールを開発した。このツールの信頼性については保証されており、これによってゲノム配列の再構築と研究を合理化することが可能になる。2011年11月10日付けのComputational Biology誌に記載された今回の研究は、GIS計算数理生物学のアシスタント・ディレクターであるニランジャン・ナガラジャン博士が率いている。 

たった一つの遺伝子変異で、神経細胞が身体から脳に食欲抑制シグナルを伝える事が出来なくなる。結果、食欲が貪欲になり、肥満体になる。この事を明らかにしたのは、ジョージタウン大学医療センターの研究チームである。2012年3月18日付けのNature Medicine誌ウェブサイトにオンライン掲載された本研究は、無制御な食欲による肥満を治療するため、この遺伝子の発現を刺激する方法を提示している。 

マラリアの肝臓感染と血液感染を治療する医薬品の候補化合物が見つかった。2011年11月17日付けのScience誌に掲載されたこの研究は、カリフォルニア州ラホーヤのスクリップス研究所のエリザベス・Aウィンツェラー学術博士によって主宰されている。国立アレルギー感染症研究所(NIAID)と国立衛生研究所からのグラントである。マラリアは、プラスモジウム属の4種 類近縁な寄生中によって起こり、感染した蚊にかまれることによってヒトに移る。そして寄生中は肝臓に移動し、症状を引き起こす事なく、約一週間で急激に増加する。 

「数種のタイプの多嚢性腎疾患と多嚢性肝疾患の進行には、単一遺伝子が中心的役割を果たしている。」と、エール大学医学部(Yale School of Medicine)の研究者が“Nature Genetics”電子版(2011年6月19日)で発表する。この知見は、最も一般的なタイプの多発性嚢胞腎の原因遺伝子であるPKD1の活性の操作が肝臓と腎臓における嚢胞の発生の低減に効果的である可能性があることを示唆する。 

カンサス大学の研究チームを含む共同研究によって、動物の健康が改善され、米国の養豚産業が毎年数100万ドルの節約が出来るようだ。ウィルス学者で、診断医学と病理学教授のレイモンド・“ボブ”・ローランド博士は、共同研究の分担として、PRRSウィルスにより発症するブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)に対し易感染性のブタを、認識する遺伝子マーカーを発見した。 

ミツバチが女王蜂になるか働き蜂になるかは、幼生の頃に与えられる餌に依拠する。その餌とはロイヤルゼリーであることはよく知られているが、何故餌の違いで女王蜂になるのかという分子レベルの機構は謎のままだ。しかしこの度、アダム・ドールザル博士とグロ・アムダム博士に率いられたアリゾナ州立大学の研究チームは、他の研究所とも共同して、蜂の成長とインシュリン及び相補的タンパクとの競合の回避に役立つことを発見した。「幼若ホルモンを介して活性化するIRSとTORという二つの栄養シグナルパスウェイが握るミツバチの運命」というタイトルの論文が、Journal of Experimental Biology誌の2011年12月号に掲載された。「誰が女王蜂になるのか」という大命題については、富山県立大学バイオテクノロジー研究センターの鎌倉昌樹博士が、画期的研究成果を2011年にNature誌に発表した。ロイヤルゼリー中の一つのタンパクであるロイヤルアクチンが、上皮細胞増殖因子受容体との相互作用によって、蜂の幼生に作用し女王蜂へと成長させることを明らかにしたのだ。これによれば、先に報告されたアムダム博士のチームが草分けであるインシュリン受容体タンパクは、インシュリンシグナルは女王蜂への成長には関与していないということが示唆されていることになる。

IRCM (Institut de recherches cliniques de Montréal) で統括している国際的な研究チームの発見は、リンパ性白血病の新しい治療法につながる可能性がある。IRCM">の会長で科学理事も務めるDr. Tarik Möröyが率いるこのチームは、この病気の「弱点」とも言える分子を発見しており、この分子を標的にすることで、現在主流となっている化学療法や放射線療法の副作用を軽減する新しい方向からの治療が可能になるかもしれない。 

グラクソスミスクライン社のサーバリックスという商品名の二価ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンは、より深刻な浸潤性子宮頸がん(ICC)の前がん病変に対し、優れた効力を発揮する。特に、性的に活動的になる前の思春期の女子に接種するのが効果的である。また、このワクチンは他にも癌の原因となる4種類のHPV型に対しても、部分的な効果を発揮することが、2011年11月8日付けのThe Lancet Oncology誌に記載された2つの研究結果から分かった。 

癌治療において化学療法および免疫療法を併用することで、ガン細胞を探し、排除する免疫システムの機能を強化することが出来る。しかもこれは、ガン関連タンパク質がガン細胞膜の背後に隠れている場合でも有効である。と、日本およびスイス、そして米国の国際研究チームが発表した。2012年2月8日付けのCancer Research誌のオンライ版で発表された記事において研究チームは、特定の癌治療において有効である抗体が、化学療法と併用された場合、細胞内の捉えにくいターゲットまで的確に届き、結果腫瘍の進行を遅らせ、生存期間を延ばすことが出来ると発表した。 

ケースウエスタンリバース大学医学部の神経科学者チームが、アルツハイマー病を治療する画期的な研究を進めている。 2012年2月9日のScience誌オンライン版に発表された。研究結果によれば、マウスに投与した薬剤によって、アルツハイマー病の進展で生じた病理学的な認識障害と記憶障害が、回復したというものだ。この研究が意味する事は、このベキサロテンという医薬品を使えば、凡そ全米に540万人存在する進行性脳疾患の患者に、大きな福音をもたらすという事である。ベキサロテンは10年以上前にFDAが抗がん剤として認可した医薬品である。本研究は、この医薬品がアルツハイマー患者にも有効ではないかとの想定で行なわれたものであるが、結果は予測以上に良いものであった。アルツハイマーは、体内で生成されるベータアミロイドを、脳内から除去出来なくなることによって発症する。2008年に、ケースウエスタンリバース大学神経科学科のギャリー・ランドレス教授が、コレステロールの運搬機能を脳内で主として担っているアポリポタンパクE(ApoE)が、ベータアミロイドタンパクを脳内から除去する役割も有していることを明らかにした。同博士は今回のScience誌発表論文の上席著者である。ランドレス博士の研究グループは、ベキサロテンがApoEの発現量を増加させる機能を有することに着目した。脳におけるApoE量が増加すると、脳からのベータアミロイドの除去スピードが上がるのだ。ベキサロテンはレチノイド受容体(RXR)を刺激し、その度合いによってApoEの産生量が決まる。特に研究者を魅了したのが、ベキサロテンが記憶障害と行動障害を、アルツハイマーの病理学を逆行するがごとき迅速さで、改善させる効能を有していることであった。現在の、研究者間の共通認識は、動物モデルや人間の患者において観察されているように、水溶性の形態をとるベータアミロイドが僅かに存在し、それが記憶障害を引き起こすという事である。しかし、ベキサロテンを投与すれば、6時間以内で可溶性アミロイド量は25%減少し、その数値以上の目覚しい改善が3日間持続する。最終的に、このアミロイド量の減少は、3種類のアルツハイマー病モデルマウスにおいて、広い範囲の行動障害の急速な改善と相関関係が確認された。行動障害の改善例の一つに、よく行なわれる巣作りテストがある。アルツハイマー病のマウスが巣作りの材料、今回はティッシュペーパーを用いたが、それを使って巣作りを行なうことは通常起こらない。このテストは、ティッシュペーパーを巣作りの材料として認識できないことを実証するものだ。しかし、ベキサロテン投与後72時間ぴったりで、マウスはティッシュペーパーで巣作りを始めた。薬剤の投与によって、マウスは汚れた環境を認識する能力を回復したのである。ベキサロテン治療は、脳内のアミロイド班を除去する機能を促進する効果もある。アミロイド班は脳内でアミロイドが凝集して小さな塊を形成するもので、アルツハイマーの病理学的特徴となっている。研究結果では、72時間以内にアミロイド班の半分以上が除去された。最終的には75%が除去された。ベキサロテンが脳内の免疫機能を再構築し、アミロイドの堆積物が貪食処理されたことが明らかである。これらの所見により、ベキサロテンが、脳内の可溶性と蓄積性両方のアミロイドを処理し、モデルマウスを病理学的レベルで回復させることが実証された。この研究は、アルツハイマー病の1次遺伝リスク因子に対して、その有効な治療法を提供するものである。ヒトのApoEには、ApoE2、ApoE3そしてApoE4の3種類の形態があり、ApoE4遺伝子の発現が急増すれば、アルツハイマー病が誘発されやすい。以前にランドレス博士の研究室では、ApoE4の形態の場合は、アミロイドの除去機能が減退することを明らかにしている。今回の研究成果では、脳内のApoE量を増加させて、記憶障害と認識障害とに関与するアミロイドの凝集を除去するという治療戦略が、効果的であろうと示唆されている。「この発見は前例の無いものです。これまでの最良の治療法でも、アルツハイマーマウスの脳内アミロイド凝集を低減させるのに、数ヶ月を要していたのです。」とケースウエスタン大学医学部のPhD候補で、本論分の主筆であるペイジ・クレーマー氏は語る。ランドレス教授は付け加えて「これは本当に驚くべき、そして賞賛に値する大きな発見です。全く新しいサイエンスの発見とも言え、アルツハイマー病の治療を約束する有用性を持っているのです。私たちは、この医薬品がマウスモデルで顕著な有効性を示すことを実証していきます。そして次の課題は、人間においても同じように有効性があることを示すことでしょう。私達は、この素晴しいサイエンスを治療法へと移行させる、最初の段階にいるのです。」と話す。ケースウエスタンリザーブ大学医学部神経科学科の准教授で、本研究の共同著者であるダニエル・ウエッソン博士は、「アルツハイマー病の問題は、記憶障害と学習障害にあると考えられがちですが、実際に多くの症例で観察されるのは脳全体に病態が広がり、様々な身体機能の障害を引き起こす事なのです。本研究の結果では、私たちの治療方法が、アルツハイマー病において広い範囲の行動機能を維持させることと、脳の機能を維持させることとを、約束するものと考えられます。」と述べる。ベキサロテンは安全性と副作用の点からも、優れた医薬品です。ケースウエスタンリザーブ大学の研究チームは、ベキサロテンのこれらの特性を考えれば、ヒト臨床試験への移行がスムースに行なわれると期待している。ランドレッチ教授によれば、この「自画自賛の研究テーマ」には相応のグラントが供給されており、主要なものは、ブランチェット・フッカー・ロックフェラー財団、トーム財団、そしてNIHなどである。本研究の共同著者のリストを挙げると、ワシントン大学医学部のジョン・R.サーリト氏、ジェシカ・L.レスティボ氏、ホイットニー・D.ジョーベル氏等、ケースウエスタンリザーブ大学医学部のC.Y.ダニエル・リー氏、コリーン・カルロ氏、アドリアーナ・E.チン氏、ブラッド・T.カサリ氏等、ニューヨーク大学医学部のドナルド・A.ウイルソン氏、ペンシルバニア大学パレルマン医学部のマイケル・J.ジェームス氏、カート・R.ブランデン氏等である。[BioQuick News: Approved Cancer Drug Quickly Reverse Alzheimer’s Symptoms in Mice ">

研究者達は初めて、脳の中枢ハブ内で遺伝子のオンオフを調節する環境反応制御機構の活動を生涯期間追跡することに成功した。統合失調症や自閉症に関与する遺伝子は、発育過程で環境に敏感な臨界期中に活動の抑制がピークに達する遺伝子グループの一つであることが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)による研究で明らかになった。DNAメチル化と呼ばれるメカニズムは、胎児から出生後までの重要な移行期中、ヒトの脳の前頭前野内で突然オフからオンに切り替わる。メチル化の増加に伴い、出生後の遺伝子発現は鈍化する。メチル化のような後成的なメカニズムは、遺伝子にタンパク質を産生する化学的指示を出し、どのような組織を産生し、どの機能を活性化するのかを伝える。このような指示はDNAの一部ではないが、親から子に遺伝する。しかし、これらは環境要因に影響されるため、生涯に渡り変化していく。「発達性脳障害は、若い時期に起こるメチル化の変化が起因である可能性があります。例えば、メチル化を行う酵素をコードする遺伝子は統合失調症と関連付けられています。これらの遺伝子は出生前の脳内で学習や記憶など、障害において影響を受ける様々な実行機能の回路網の発達を形づけます。本研究は、これらの遺伝子グループにおけるメチル化は胎児から出生後までの期間中劇的に変化することを明らかにしました。また、このプロセスがメチル化自体および遺伝的変動によって影響されることが分かりました。臨界期である幼年期において、これらの遺伝子の調節は外界からの影響にとても敏感であると考えられます。」と、NIH国立精神衛生研究所(NIMH)の研究員、バーバラ・リプスカ博士は説明する。リプスカ博士と研究チームは、ヒトの前頭前野(PFC)エピゲノムの生涯にわたる盛退について、2012年2月2日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌オンライン版に論文を記載している。「新しい本研究は、遺伝子発現が発育のほんの一部分でしかないことを我々に思い起こさせます。エピジェネティックスは養育と性質を関連づけることで、環境がいつ、どこで、どのように遺伝子配列が解読されるかを示しています。」と、NIMH所長、トーマス・R・インセル博士は語る。NIMH研究チームが去年10月に発表した付随研究では、生涯にわたるPFCの遺伝子産物の発現を追究した。これに代わり本研究は、そのような発現を調節する、PFC遺伝子内の27000ヶ所でのメチル化を試験した。両研究とも、受胎後2週間から80歳までの非精神障害者の死後の脳を調べた。ほとんどの場合、メチル基と呼ばれる化学物質が遺伝子の調節領域に付着することで発現が抑制される。通常、メチル化の増加に伴い遺伝子発現は現象する。全体的なPFCメチル化レベルは、遺伝子発現が最高潮の出生前は低く、遺伝子発現が急落する幼少期に増加する、リプスカ博士と研究チームは発見した。その後、メチル化レベルは成長と共に均一になる。しかし、いくつかの遺伝子におけるメチル化はこれと反対の軌跡を示している。本研究はメチル化が性別、年齢、そして遺伝的変動によって大きく変化することを明らかにした。例えば、男性と女性では試験されたX染色体部位の85%においてメチル化レベルが異なっていた。これは、自閉症や統合失調症における性差を解明するのに役立つ可能性がある。異なる遺伝子およびそのサブセットは、異なる年齢でメチル化される。関与が予測されるいくつかの遺伝子におけるメチル化は、メチルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素の起始コード辺りでピークに達することが分かった。メチルトランスフェラーゼは統合失調症および双極性障害において過剰発現されている。このプロセスは、他の遺伝子のメチル化および遺伝的変動に影響される。そのため、このような精神疾患を発病するリスクをもつ遺伝子は、遺伝性DNAに加えてメチル化を通して遺伝子発現に影響を及ぼす可能性がある。[BioQuick News: DNA Methylation in Brain’s Executive Hub Tracked Across Lifetime">

オーストラリアの先住民アボリジニの遺伝子を解析する国際研究チームが驚くべき結果を発表した。2011年9月22日号のScience誌に掲載された記事によれば、人類の先史時代の理解を変えるものとなっている。遺伝子の解析に基づき、研究チームはアボリジニの祖先は人類がアジアに広がって行った初期の頃である70,000年前に遡る事ができ、少なくとも24,000年前には現在のヨーロッパやアジア全域に分布した事を立証した。この事実が示すところは、現在のアボリジニは50,000年も以前に最初にオーストラリア大陸に移り住んだ人類の直系の子孫であるという事だ。本研究プロジェクトは、20世紀初頭に、西オーストラリア州ゴールドフィールド地域に住むアボリジニの男性から英国の人類学者に寄贈された髪の毛の束に端を発する。 

「microRNA-34 (miR-34) と呼ばれる遺伝子のグループが正真のがん抑制遺伝子だということを証明する直接的な遺伝学的証拠を見つけた」と、コーネルの研究者が報告している。この研究論文は、2014年3月13日付「Cell Reports」オンラインに掲載された。これまでのコーネルやその他の機関での研究で、p53と呼ばれる遺伝子がmiR-34を調節していることが確認されている。 

Oregon Health & Science University (OHSU) と Oregon National Primate Research Center (ONPRC) の研究者グループは、ヒトの皮膚細胞をリプログラムし、胚性幹細胞への転換に成功した。この胚性幹細胞は体内で他の細胞に変化する能力を持っている。幹細胞治療法は、負傷や疾患で破損した細胞を新生した細胞で置き換えることで治療する可能性が期待されており、この治療法に適した疾患や負傷として、パーキンソン病、多発性硬化症、心臓病、脊髄損傷などがある。 

ある研究者チームが、血中脂質レベルを健康な状態に下げ、心筋梗塞のリスクを引き下げる働きのある遺伝子変異を発見した。この変異はこれまで機能を知られていなかったもので、この発見を手がかりに高コレステロールその他の脂質疾患の診断治療に役立てられる可能性が考えられている。しかし、この遺伝子の機能よりも驚くのはその発見の過程で、過去に循環器系のリスクに関わる遺伝子の探索が行われた際にはこの遺伝子の存在が歴然としていながらその機能が見過ごされていたことだ。 

オーストラリアの研究者チームが、細胞内におけるインシュリンの経路を初めて克明に図表化した。この図表が、糖尿病発病の詳細な機序を理解する総合的な海図になる可能性がある。シドニー所在Garvan Institute of Medical Research の博士課程研究生Sean Humphrey氏とProfessor David Jamesのこの画期的な研究成果は、2013年5月16日付オンライン版「Cell Metabolism」に掲載されている。 

「動物も人も免疫系関係の特定の遺伝子をかぎ分けることができ、その遺伝子がパートナー選びに影響を及ぼす」という学説がメディアを賑わしており、この遺伝子は、MHC (主要組織適合複合体) 遺伝子と呼ばれている。自分の持っているのとは大きく異なるMHC遺伝子を持った相手をパートナーとして選ぶことは、子孫が幅広い免疫遺伝子を持ち、したがって様々な疾患に抵抗力を持つようになるのだから、これは理にかなっている。 

2013年6月25日付「American Society for Microbiology」誌のオンライン・オープンアクセス・ジャーナル「mBioR」掲載の研究論文によれば、新型の手のひらサイズのマイクロアレイは、真菌、細菌の個別培養器を最大1,200個使用でき、以前よりもさらに迅速かつ効率的に創薬が可能になる。San AntonioのUniversity of TexasとFort Sam HoustonのU.S. Army Institute of Surgical Researchの研究者チームは、真菌バイオフィルムを培養するマイクロアレイ・プラットフォームを開発し、この技術がCandida albicansバイオフィルムに対する有効な新薬の開発に役立つ可能性を実証した (写真は一般的なマイクロアレイであり、この記事の新開発製品ではない)。 

北米では毎年何万人もの人が致死的な細菌感染で亡くなっており、しかも第一線の抗生物質に耐性を持つ病原菌がますます増えている。残念なことに、研究室で細菌を培養するこれまでの方法では、感染源の細菌を同定するまでに何日もかかり、感染を完全に治療する適切な抗生物質を突き止めるまでにはさらに日数がかかるが、その間、治療を止めるわけにはいかない。細菌感染を迅速かつ正確に診断する技術が緊急に必要とされているが、まだそれに応える技術は現れていない。 

オーキシンは100年ほど前にチャールズ・ダーウィンが発見した小分子の植物ホルモンである。以来長年の間にオーキシンはもっとも重要でもっとも幅広い機能を持った植物ホルモンだということが明らかにされてきた。オーキシンは、ダーウィンが発見した芽の向日性だけでなく、新しい葉、花、根などの形成、根の生長、重力屈性など植物の成長と発生のほとんどすべての面を統御している。 

Case Western Reserve Universityの研究チームは、単一で2つの疾患に対して別個の役割を果たす遺伝子を発見した。この遺伝子は乳がんの発生と広がりを抑制するだけでなく、心臓の健康増進にも役立っている。2012年、同大学の医学部研究チームは、マウスのモデルでHEXIM1という遺伝子に乳がんを抑制する効果があることを発見していた。 

微細DNA技術の発展でナノテクノロジーもナノテクノロジストだけの分野ではなくなってきた。ハーバードのWyss Instituteの研究チームが、細菌1個の10分の1という幅の自己集合型DNAケージ作成に成功した。2014年3月13日付Science誌オンライン版に掲載された研究報告で、このケージ構造はDNAだけで組み立てられたものとしてはもっとも大きく、しかももっとも複雑な構造をしていると述べている。 

人間にとって植物は様々な重要な機能を持っている。食料や燃料を供給し、私たちが呼吸する酸素を吐き出し、環境に彩りを添えてくれる。MITの研究チームは、Cal Techや、トルコのDumlupinar Universityとの共同研究で、ナノ材料を使って植物のエネルギー生産を強化したり、環境汚染物質のモニターなどまったく新しい機能を持たせたりなど植物をさらに有用なものに作り替える研究を進めている。 

オーストラリアのUniversity of Adelaideの研究により、知的障害に関連する遺伝子が脳の発達最初期段階で重要な役割を果たしていることが確認された。University of Adelaideの研究チームは、10年以上をかけてUSP9Xと呼ばれるこの遺伝子の働きを研究してきたが、ようやく最近になってこの遺伝子が脳の発達に特に重要であることが明らかになってきた。 

生物には苛酷な環境の攻撃に対応して進化していく能力が備わっている。ある研究チームがこの生物の能力を利用してモデル細菌Escherichia coliの電離放射線に対する耐性を大きく引き上げただけでなく、耐性向上の遺伝子的メカニズムも解明した。2014年3月4日付オンライン・ジャーナル「eLife」のオープン・アクセスの研究論文で、大腸菌がわずかな突然変異で通常なら致命的な量の放射線にも耐えられるようになったことを示している。 

Hebrew University of Jerusalemとカリフォルニア州の研究チームは、有望とされている抗がん治療がなぜ腫瘍細胞の死滅に期待したような効果を挙げられないのか、その原因解明に一歩近づいた。同チームの研究成果は、この手詰まり状態を打開するために大きな理解をもたらしてくれるかも知れない。研究対象になった問題の治療法は、mTOR (哺乳類ラパマイシン標的タンパク質) の活性阻害をターゲットとするものである。 

British Antarctic SurveyとUniversity of Readingの研究チームがCell Pressの2014年3月17日付「Current Biology」オンライン版に研究論文を掲載、「南極のコケが1,500年間氷の下で完全に休眠状態で過ごした後、生き返ることができた」と発表している。その研究以前には、長年凍結した植物がそのまま再生を始められるというのは凍結期間20年が最高限度で、それ以上になると、長年凍結休止状態にあった生物が復活するというのは微生物に限られていた。 

開き、供給し、刻む。これがRice Universityの研究チームが研究対象としているモーター分子の日常的に損傷したタンパク質を食べては吐き出し、無害なペプチドに変換して処分するという単調な暮らしである。その理由ははっきりしている。この「ゴミ箱」がなければ、モーター分子を抱えている大腸菌が死滅してしまうからだ。 

Cedars-Sinai Samuel Oschin Comprehensive Cancer Institute (米カリフォルニア州) の研究チームは、前立腺がんの外側のストローマ細胞と呼ばれる結合組織の中で、よく知られたタンパク質が重要な役割を果たしていることを初めて突き止めた。これまでも、前立腺がんでcaveolin-1 (Cav-1) と呼ばれるタンパク質が腫瘍の治療抵抗性や悪性化などの役割を果たしていることは研究者によく知られていたが、この研究以前にはストローマ細胞内でのCav-1の役割についてはよく知られていなかった。 

中国は過去20年で結核罹患率を10万人あたり170人から59人へと半分以下に減らした。2014年3月18日付The Lancetオンライン版には20年にわたる全国調査データ分析から割り出された研究結果が掲載されている。その論文によると他に類を見ないこの大成功にはWHOの提唱する直接服薬指導による短期化学療法(DOTS)戦略の対象が1990年代には人口の半分だったが、2000年以降は全人口に飛躍的に広げられたことが大きく寄与している。 

University of Vienna進化発生学者、Dr. Ulrich Technauに率いられた研究チームは、イソギンチャクのゲノム全体像がショウジョウバエその他の動物モデルのシステムによく似た複雑な調節エレメントを持っていることを突き止めた。このことは、遺伝子調節の原理は6億年前にはすでに確立しており、ヒト、ハエ、イソギンチャク共通の祖先にまで遡ることを示している。 

重篤な症状を呈する骨の感染症、骨髄炎の病原体は主に黄色ブドウ球菌 (“staph”、スタフ) であり、その治療は非常に厄介である。しかし、Vanderbiltの微生物学者、Eric Skaar, Ph.D., M.P.H.と同僚のチームは、骨髄炎の有効な治療薬になるかもしれない抗黄色ブドウ球菌化合物を発見、さらに、その化合物の試験と新しい治療手段を確立するために新しいマウス・モデルも開発した。 

シカゴのUniversity of Illinois (UIC) の研究チームが、「傷に低強度の振動を与えることで治癒が早まる可能性がある」という研究報告を発表している。2型糖尿病に悩む1,800万人のアメリカ国民にとって、また特に2型糖尿病患者の4人に1人は足の潰瘍に苦しんでいるため、マウスを対象にして行われた研究で傷の治癒が早まったというニュースは朗報である。2型糖尿病患者の傷は治りにくく、慢性化したり、時には急激に悪化する場合もある。 

2014年9月11日Agilent Technologies Inc. (NYSE:A) のプレスリリースによると、同社は最新の超高速液体クロマトグラフィー (UHPLC) を2014年9月23日に上海で開催されるラボテクノロジー・分析・バイオテクノロジーおよび診断のための国際見本市Analytica Chinaで発表予定と報じた。「私たちは、この重要な科学イベントで当社の最新のUHPLCソリューションをご紹介させていただくことを嬉しく思います」と副社長兼Agilentリキッドフェーズセパレーション部門ゼネラルマネージャーのStefan Schuette氏は述べている。「この強力な新しい装置は重要な新機能の組み合わせにより、高次元の達成成果を優れた品質で確信と共に研究者に提供します。」この新製品は、上海の新国際博覧センター、ホールN2、ブース2102で発表される予定である。Agilentは会期中、ブースに同社サイエンティストを配置し、来訪者からの製品の特徴やスペックに関する質問に応じる予定である。 

休暇でハメをはずして飲み過ぎたことを後悔する人は、二日酔いの吐き気、眠気、ふらつきにはそれなりにプラスの側面があると言ってもうれしくないかも知れないUniversity of Utahの神経学研究グループの研究論文によれば、ラットの脳の外側手綱核と呼ばれる領域を慢性的に不活性化すると、ラットは何度飲み過ぎてもこりず、経験から学ぶ能力も衰えることが突き止められている。2014年4月2日付オープン・アクセスPLOS ONEのオンライン版に掲載されたこの研究論文は、アルコール中毒になる行動傾向を理解する手がかりを示している。 

指を針で刺して採取した血液試料を用いて、診断の難しい複雑な疼痛障害、線維筋痛症候群を検知する信頼性の高い検査法を開発した研究者グループがある。研究チームは、この検査法が一般開業医に普及すれば、患者が線維筋痛症と診断される5年前に発症を予測できるようになると見込んでいる。予備研究として、研究チームは、線維筋痛症の患者から採取した血液試料を高性能特殊顕微鏡で検査し、特定の分子マーカーの探索を行なった。 

2013年6月12日付オンライン版Restorative Neurology and Neuroscienceに掲載された新しい研究論文は、ラットに脊髄負傷後3週間にわたって漢方薬の脊髄康 (Jisuikang、JSK) を与えた結果、運動機能が改善され、組織損傷が軽減され、さらには対照グループのラットと比較しても神経細胞の構造が保たれていたと報告している。 

2013年8月13日、米国立衛生研究所 (NIH) は、24件の研究プロジェクトに総額1,700万ドルの助成金を交付すると発表した。これらのプロジェクトは、最近発見された、exRNAと呼ばれる細胞外RNAの作用による細胞間情報伝達の仕組みをさらに解明することを目的としており、この助成金交付で研究者はexRNAの基礎的な研究を行い、その成果を疾患の研究、診断、治療に応用する手段や技術を開発することができる。 

長年、研究者は、主要精神障害がニューロン同士をつなぐシナプスの遺伝的な原因による障害ではないかと考えていた。しかし、最近、National Institutes of Health (NIH) などの機関の援助を受けた研究チームが患者の細胞を使った研究を行い、特定遺伝子のごくまれな突然変異によって、シナプス接続に関わるいくつもの遺伝子のオン・オフが混乱させられることを実証した。 

生物種の特徴を決める生物学的情報はDNAにエンコードされており、そのDNAの損傷は、細胞が分裂増殖する過程で否応なく起きる自然な生物学的現象である。その他にも、過剰に太陽光にさらされるなど外的要因でもDNAの損傷が起きる。Michigan State Universityの生化学・分子生物学教授のDr. Michael Feigは、人体が損傷を受けたDNAを識別し、修復しようとする機序に深い関心を持っており、特に欠陥DNAを識別し、DNA修復を開始するMutSやMSH2-MSH6などのタンパクを研究している。 

ほとんどの記憶には何らかの情動連合が伴っている。ビーチで過ごした一週間を思い出すと楽しい気持ちになることだろうし、いじめられた経験を思い出すといやな気持ちになるはず。MITの神経学者チームの新研究で、記憶が快い感情、不快な感情とどのように結びつくかを決める脳の回路が明らかにされた。さらには、光の照射でニューロンの活動を制御するオプトジェネティクスと呼ばれるテクニックを使って脳細胞を操作し、特定の記憶と情動連合を反転させられることにも成功した。 

AB Sciexは、2014年8月26日付プレスリリースで、Dalton Pharma Services (Dalton) と共同研究提携し、抗体薬物複合体 (ADC) 分析能力を開発すると発表した。このコラボレーションの目的として、薬物負荷と高分子中の共役の位置を判定するための確実包括的なメソッドを開発することも含まれている。 

2014年3月4日付Genome Biologyのオープン・アクセス論文に掲載された研究論文で、U.S. Forest Service Southern Research Station (SRS) の研究グループがテーダ松 (Pinus taeda) のゲノムのシーケンシング、アセンブリ、アノテーションを報告している。アメリカ合衆国の林業にとってテーダ松はパルプ原料、製材用の最大樹種であり、南部諸州にとっても国全体にとっても経済的に重要な位置を占めている。 

イヌはヒトの最良の友と言われている。他のペット動物でこれほど人間の生活様式に適応できる動物はいない。オーストリアのVetmeduni Vienna, Messerli Research Instituteの研究チームは、世界で初めてイヌの生涯にわたる注意力の発達や人間とどこまで似ているかを研究した。その結果、イヌの注意力と感覚運動コントロール発達曲線はヒトのそれとかなり似ていた。 

マウスでの研究で、視神経系統が成長する過程で、眼球と頭脳をつなぐ視神経の働きを制御する見事な神経回路が突き止められた。National Institutes of Health (NIH) が助成金を出したこの研究では、弱視、すなわち脳が一方の眼だけに注意を集中し、もう一方の眼を無視してしまう視覚障害の治療の可能性を明らかにしている。弱視は、子供にもっとも多い視覚障害で、白内障で視野が曇っていたり、双方の眼球の位置がずれていたりすることでそれぞれの眼球の視覚像にずれがある場合に起きやすい。そういった場合、脳はわずかでも機能に優れた側の眼の信号を優先し、時間が経つにつれて、優先された側の眼がより有用な情報を脳に送り続けることでますます脳はその眼の信号を優先するようになり、もう片側の眼を無視するようになる。視力の強い方の眼に眼帯をして機能を抑えることで弱視を矯正する助けにはなるが、子供のうちにこの状態を発見し、矯正しなければ、視力の弱い側の眼の視覚障害は大人になってもそのまま残る。

2014年8月30日付でNovartis社がスペインのバルセロナのEuropean Society of Cardiology会議において発表し、同時にNew England Journal of Medicineにも掲載されたプレスリリースで、過去最大規模の心不全研究の主要エンドポイントで、同社の心不全治験薬、LCZ696が、ACE阻害薬enalaprilより優れていることが実証されたとしている。PARADIGM-HFで、左室駆出率 (HF-REF) 低下の心不全患者のうち、LCZ696を投与された患者はACE阻害薬enalaprilを投与された患者に比べて生存率も高く、突然の心不全悪化で入院する率も低いという結果が出た。 

この20年か30年ほどの間にバイオテクノロジーはめざましい発展を遂げてきたが、がん細胞には即効致死的で、健康な細胞には無害、かつがん再発防止にも効果があるというような理想的ながん治療法はまだ夢の段階でしかない。しかし、「合成致死性」の考えがこの分野の研究者には大きな希望を与えている。 

MITの研究チームは、イーストとヒト細胞を使った研究で、DNAがmRNAに転写される時期を制御することで遺伝子をオン・オフできることを実証した。この研究成果が遺伝子の機能をさらに深く解明する手がかりとなることが期待される。MITのSynthetic Biology Centerで電気工学、コンピュータ・サイエンス、生物工学の教授を務め、2013年8月26日付「ACS Synthetic Biology」オンライン版に掲載された研究論文の首席著者、Dr. Timothy Luは、この分野で新しいアプローチを試みた論文の中で、「このテクニックは、リコンビナント細胞自身が、自らの環境状態を把握し、医薬を生成し、疾患を感知することが容易に行える可能性がある」と述べ、さらに、「合成遺伝子回路の構築もさらに容易になるだろう。 

University of Liverpoolの研究チームが、Public Health Englandと協力し、エボラ・ウイルス感染治療に適用可能な医薬を判定する新しい手法を探っている。この研究チームは、エボラ・ウイルスが機能するためには細胞内のタンパク質が重要な役割を果たしており、エボラ・ウイルスがこのタンパク質を乗っ取り、感染を手伝わせる機序に注目している。 

グラフェンに匹敵する化合物出現。University of California Santa Barbara (UCSB) の研究チームがバイオセンシング向けに開発した原子単位の薄さの二次元超高感度半導体材料がヘルスケアから環境保護、法医学部門まで様々な分野のバイオセンシング・テクノロジの領域を押し広げる可能性を持っている。通常乾燥潤滑剤に用いられる二硫化モリブデンまたは輝水鉛鉱 (写真) 型のバイオセンサ材料は高感度のグラフェンを上回る感度でスケーラビリティも良く、大量生産に適している。 

10月24日、ボストンで開かれていた American Society of Human Genetics (ASHG) の2013年総会で、大腸がんにおける遺伝子と食事の相互作用を確認したとする報告があった。この研究チームは、「赤身肉や加工肉の摂取で統計的に有意な大腸がんリスク増大のあることは知られているが、遺伝子と食事の相互作用の研究でこのリスク増大の機序が解明できる可能性がある」と述べている。 

Paecilomyces lilacinus (紫赤きょう病菌。写真) と呼ばれる真菌はロイシノスタチンという物質を生成する。この物質は、抗マラリア性、抗ウイルス性、抗がん性、植物毒性など様々な生物学的活動を引き起こすペプタイバイオティクスである。2014年9月3日付The Journal of Antibioticsオンライン版に掲載された研究論文で、ブラジルのUniversity of Sao PauloのDr. Ana MartinezとDr. Luiz Moraesが、LC-MS/MSを前駆イオンと生成イオンのモードで用いる分析方法を展開し、この真菌から5種類のロイシノスタチンを新しく発見した。 

10月25日、ボストンで開かれていたAmerican Society of Human Genetics (ASHG) の2013年年次総会でプレゼンテーションのあった研究報告によると、ユタ州の多世代にわたる家族の男性の家系と病歴を分析した結果、男子の性染色体であるY染色体の変異の遺伝が前立腺がん発症に大きく関わっていることが裏付けられた。University of Utah School of Medicine, Division of Genetic Epidemiologyの教授であり、Chiefも務めるLisa Cannon-Albright, Ph.D.は、「研究で、いくつかの特異なY染色体が前立腺がんの非常に高いリスクと関連していることを突き止めた」と述べている。 

Dana-Farber Cancer Institute、Massachusetts Institute of Technology (MIT)、その他の研究機関の共同研究チームは、膵がん発症早期の徴候を突き止めた。症状が現れ、疾患が診断される前に特定のアミノ酸が急激に増えるのである。この研究論文は、2014年9月28日付Nature Medicineオンライン版に掲載された。 

てんかん患者は世界中で6,500万人にもなる。この疾患は脳の状態によって突然ひきつけを起こすもので、原因が突き止められないことも多い。ひきつけはニューロン間の電気的連絡が乱される症状で、24時間以上の間隔をおいて2回以上のひきつけを起こした場合にてんかんと診断される。てんかんは小児神経学ではもっとも一般的な慢性疾患であり、0.5%から1%程度の児童が遅かれ早かれ生きている間にてんかんを発症する。 

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