老化T細胞を除去し、肥満による代謝障害を改善する新しいワクチンの開発
サイエンス出版部 発行書籍
老化は多面的なプロセスであり、多くの点で我々の体に影響を与える。 大阪大学大学院医学系研究科・健康発達医学グループの中神啓徳博士らの新しい研究では、研究者が高齢の免疫細胞を除去する新しいワクチンを開発し、肥満マウスにワクチン接種することにより糖尿病関連の代謝異常の改善を実証した。 老化した細胞は、炎症環境を作り出すことにより、周囲の若い細胞に害を及ぼすことが知られている。T細胞(画像)と呼ばれる特定の種類の免疫細胞は、老化した肥満の脂肪組織に蓄積し、慢性炎症、代謝障害、心臓病を引き起こす。 老化細胞の身体への悪影響を軽減するために、これらの不正な細胞を標的にして排除するための治療法が開発された。 ただし、このアプローチは老化細胞の種類を区別しないため、老化T細胞の特定の枯渇が臓器生理への悪影響を改善できるかどうかは不明のままだ。 2020年5月18日にNature Communicationsでオンラインで公開されたこのオープンアクセスの論文は「CD153ワクチンはマウスの老化T細胞の蓄積を防ぐための老化治療オプション(The CD153 Vaccine Is a Senotherapeutic Option for Preventing the Accumulation of Senescent T Cells in Mice)」と題されている。 「老化細胞を排除することで加齢に伴う臓器機能障害が改善されるという考えはかなり新しいものだ」と、中神博士は述べている。 「老化T細胞は糖尿病と同様に代謝異常を促進する可能性があるため、老化T細胞の数を減らしてグルコース代謝に及ぼす悪影響を逆転させる新しいアプローチを考え出したのだ。」目標を達成するために、研究者らは、脂肪組織に住む老化T細胞に存在する表面タンパク質CD153を標的とする新しいワクチンを開発し、それにより
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