コウモリのウイルス耐性と長寿命が、新型コロナウイルスへのヒントを提供するとの展望が発表された

コウモリのウイルス耐性と長寿命が、新型コロナウイルスへのヒントを提供するとの展望が発表された

コウモリは、ヒトに影響を与える多くの致命的なウイルス(エボラ出血熱、狂犬病、そして最近では COVID-19 を引き起こすコロナウイルスのSARS-CoV-2など)に対し、耐性があると考えられている。 ヒトはこれらの病原体で有害な症状を経験するが、コウモリはウイルスに著しく耐えることができ、さらに、同じサイズの陸上哺乳類よりもはるかに長く生きる。コウモリの寿命とウイルス耐性の秘密は何か? ニューヨークのロチェスター大学の研究者によると、コウモリの寿命とウイルスに耐える能力は、病気と老化の特徴である炎症を制御する能力に起因する可能性があるという。Cell Metabolismの2020年7月7日号で発表された論文で、ロチェスター大学の生物学教授であるVera Gorbunova博士とAndrei Seluanov博士を含む研究者らは、コウモリのユニークな能力の根底にあるメカニズムを概説している。これはヒトの病気の新しい治療法を開発する手がかりを握るかもしれない。

このオープンアクセスの論文は、「世界はコウモリになる:長く生き、ウイルスに耐える(The World Goes Bats: Living Longer and Tolerating Viruses.)」と題されている。

この論文のアイデアは、COVID-19による旅行禁止が始まる前の2020年3月に、夫婦であるGorbunova博士とSeluanov博士がシンガポールにいたときに思いついた。 ウイルスが広がり始め、シンガポールが封鎖されたとき、彼らは両方とも同僚のBrian Kennedy 博士の自宅で隔離された。博士は、シンガポール国立大学の健康老化センターのディレクターであり、論文の共著者でもある。 哺乳類の寿命に関する専門家である3人の科学者らは、コウモリについて話した。 SARS-CoV-2は、ウイルスがヒトに伝染する前にコウモリを起源とすると考えられている。コウモリは保菌者だが、ウイルスの影響を受けていないようだった。 別の厄介な要因:一般に、種の寿命はその体重と相関する。種が小さいほど寿命が短くなり、その逆も同様だ。 しかし、多くのコウモリ種の寿命は30〜40年で、その大きさは印象的だ。

「我々はコウモリの寿命と耐病性にしばらく関心を持っていたが、座って考える時間は無かった」と、ロチェスター大学のDoris Johns Cherry 生物学教授のGorbunova 博士は述べた。 「検疫にいたことで、このことについて話し合う時間が与えられ、コウモリの感染症に対する耐性とその寿命との間には非常に強い関連があるかもしれないことに気づいた。また、コウモリは病気と闘うために使用されるヒトの治療法の手がかりを提供できることにも気づいた。」

コウモリの免疫応答に関する研究と、コウモリの寿命に関する研究は存在したが、この論文まで、「これら2つの現象を組み合わせ人は誰もいなかった」とSeluanov博士は述べている。
Gorbunova博士とSeluanov博士は、ハダカデバネズミを含む他の非常に長命な動物の寿命と耐病性を研究した。 彼らの研究における共通のテーマの1つは、炎症は老化プロセスと、癌、アルツハイマー病、心血管疾患などの加齢性疾患の特徴であることだ。 COVID-19を含むウイルスは、炎症の引き金となる要因の1つだ。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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