マックスプランク研究所が、古代デニソバ人のゲノムを解明
ドイツ・ライプチヒにあるマックスプランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボ博士に率られる研究チームが、デニソバ人のゲノム変異の解析を行い、それが極めて低いことを明らかにした。これは即ち、デニソバ人が今ではアジア全体に広く分布しているにしても、昔はそれほど人口が多くなかった事を示唆している。更には、ゲノムの総目録から明らかなのは、遺伝子の変異は古代の祖先の時代ではなく現代人の世代に見受けられる事である。これらの変異の状況から推察されることは、それが脳機能や神経システムの発達に関係しているのではないかという事である。 2010年にペーボ博士と研究チームは、南シベリアのデニソバ洞窟から発見された指骨の欠片からDNAを単離して解析した。それは、それまで知られていなかった古代人の若い女性の骨である事が解り、「デニソバ人」と名付けられた。DNAの2重螺旋を容易に解く技術が開発されたおかげで、それぞれの2本をシーケンス解析に使用し、デニソバ人のゲノムを全箇所に渡って30回以上繰返しシーケンシングする事が出来た。これによって、解析されたゲノムシーケンスの正確さは、現代人のゲノムを解析する場合の精度と同等の品質のものが得られた。 サイエンス誌2012年8月30日付けオンライン版に発表された最新の研究では、ペーボ博士と研究チームは、デニソバ人のゲノムを、ネアンデルタール人及び世界各地から得た現代人11人のゲノムと比較検討した。その結果、前報にあるように、現在東南アジアの島々に住む人たちとデニソバ人のゲノムがどのように混合されたのかが再確認された。また、ヨーロッパ人と比較して、東アジアや南アメリカに住む人たちの方が、ネアンデルタール人のゲノムを若干多く含んでいることも明らかにされた。「東アジア地域で観察されるゲノムが、デニソバ人よりネアンデルタール人により近いという事は、古代のネアン結核その他の細菌感染を迅速正確に検出できる携帯装置
Massachusetts General Hospital (MGH) の研究チームががん診断のために開発した手持ちサイズの診断装置が、ヒト型結核菌 (TB) その他の主要感染細菌による感染の即時診断に利用されるようになった。「Nature Communications」と「Nature Nanotechnology」の2誌に掲載された2件の研究論文は、マイクロ流体技術と核磁気共鳴法 (NMR) を組み合わせた携帯装置は、このような重大な感染を診断するだけでなく、耐性菌株の存在まで判定することができると述べている。 この2件の論文の共同首席著者の一人でMGH Center for Systems Biology (CSB) 所長を務めるRalph Weissleder, M.D., Ph.D.は、「迅速に感染の病原菌を突き止めると同時に耐性菌の存在を見極めることは、病気の診断だけでなく患者に投与する抗生物質を選ぶ上でも重要なことだ。この論文で述べている方法では、この2つのテストが2時間ないし3時間で完了する。従来の標準的な病原菌培養検査では診断するまでに2週間程度はかかっていたから大きな進歩と言える」と述べている。 これ以前に、MCH CSBの研究者は、患者の血液や微細な組織サンプルでがんバイオマーカーを検出することのできる携帯装置を開発していた。この装置は、ターゲットとなる細胞や分子をまず磁気ナノ微粒子でラベル付けした上で、ターゲットのレベルを検出・定量化するマイクロNMRシステムを通して測定するという手順を取っている。ところが、当初はこの装置で特定の細菌を正確に検出するために抗体を検出するという方法を取ったところ、肝心の抗体を見つけることができなかったため、研究チームは特定の核酸配列をターゲットとする方法に切り替えた。2013年4月23日付でオンライン版「N長寿で腫瘍耐性を持つハダカデバネズミの遺伝子解析結果が明らかに
アフリカ東部の砂漠地域に生息するハダカデバネズミは興味深い身体的特徴を有しており、それによって厳しい自然環境の中を長年に渡り生き抜いてきた。皮膚に痛覚を持たず新陳代謝率が低い為、酸素供給量が少ない地下で生息する事が出来る。英国ノーウイックのリバプール大学とゲノム解析センター(TGAC) の科学者グループが最初にハダカデバネズミの遺伝子情報を解析し、長寿と老化疾患へ耐性を有する理由を検討した。 彼らは遺伝子情報を調べる事によって、老化の原因から防護する機構、例えばDNAの修復機能や老化耐性に関わる遺伝子を明らかにしようとした。今日までハダカデバネズミにはガンが発見されていない。最近の研究では他のげっ歯類やヒトには観察されない抗腫瘍機能を細胞自体が有している事が分ってきている。リバプールの研究者グループは遺伝子データを解析して、保健科学分野におけるヒトの老化やガンの研究に応用できるようにしている。 リバプール大学総合生物学部のジョアン・ペドロ・マジェラス博士は「ハダカデバネズミは長年研究者を魅了してきたが、それが大変長命である事は数年前に私達が発見しました。通常の寿命がせいぜい4年であるマウスより若干大きなこの地下に生息するげっ歯類は、30年間健康に生きるのです。私達が老化の機構を研究するにあたって学ぶ所の多い大変興味深い実例です。私達が目指しているのはハダカデバネズミの遺伝子を解析して、疾患、とくにガンに対してどの水準の耐性を有するのかを調べ、そしてある種の動物や人間が何故他の動物に比べて病気になりやすいのかを明らかにする事です。この研究によってハダカデバネズミを慢性老人病に対する最初の耐性モデルとして確立したい」と語る。TGACのバイオインフォマティックス部門長のマリオ・カッカーノ博士は「ハダカデバネズミの遺伝子解析には最新の技術を採用しました。その優れた解析機能ナチュラルキラー細胞が肺がん感受性の多様性のカギとなるようだ
ヘビースモーカーが肺がんに罹らない一方で、何故一度も煙草を吸わない人間が肺がんに罹るのだろうか?これは何十年も研究者たちを悩ませてきた課題だが、この度、セントルイスのワシントン大学医学部の研究で明らかになったのは、肺がんの感受性を決定する重要な免疫細胞があるという事だ。マウス実験により、腫瘍細胞を探し出して駆逐するナチュラルキラー細胞が、遺伝子の多様性を有しており、マウスに肺がんを発生させるか否かのカギとなっている事が実証された。この研究結果はCancer Research誌の2012年9月1日号に掲載された。 「一般論としては、人間は遺伝的には極めて同一性が高いのですが、その免疫システムには大きな多様性があります。「生来の免疫応答の違いが風邪だけではなく、がんにも感受性の違いを与えるという証拠がどんどん出てきていますが、私たちの発見はそれに拍車をかけるものです。」とBarnes-Jewish病院のサイトマンがんセンターとワシントン大学医学部で胸部外科の医師で、本研究の上級著者であるアレクサンダー・クルプニック博士は語る。 マウス実験の結果を踏まえて、クルプニック博士と研究チームは、人間もナチュラルキラー細胞に同様の遺伝子多様性があるかどうかを研究している。新しい臨床研究として、ヘビースモーカーで肺がんを発症しているケースとしていないケースと、ノンスモーカーで肺がんを発症しているケースとしていないケースとの違いを比較するために、血液分析を行なっている。「私たちが知りたいのは、ヘビースモーカーで肺がんを発症しないのは、ナチュラルキラー細胞の活性が高く、新たに生成されるがん細胞を破壊するのに優れているのかどうかなのです。そして、ノンスモーカーなのに肺がんを発症するのはナチュラルキラー細胞の活性が低いからなのかを比較検討しようと考えています。」と外科部の准教クルプニックSmall RNAが植物の遺伝形質の獲得の主要な鍵
ヒトおよび他の哺乳類における胚発生時には、精子と卵子のエピジェネティックマークと呼ばれるDNAの化学修復がきれいに拭き取られる。これらはその後、受精を待つために予備として置いておかれるのだ。このシナリオは顕花植物では全く異なる。胚細胞など胚生期後にしか現れず、数年後になることもある。 現れた後も、エピジェネティックマークの一部しか拭き取られない;一部残ったものは前世代から引き継がれたものであるーどの程度か、ということは今に至るまであまり知られていなかった。 「我々が分かっていたことは、後成的な遺伝―親DNAに存在し、遺伝子発現を修飾する化学“タグ”を子孫が継承する遺伝―が動物よりも植物においてはるかに多く存在するということでした。」と、コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)の教授およびHHMI-GBMF調査官のロブ・マーティエンセン博士(Ph.D.)は語る。2012年9月20日付けのCell誌(オンライン)に掲載された研究記事においてマーティエンセン博士と研究チームは、これらのエピジェネティック・メカニズムを介するゲノム再プログラミングが低分子RNAによって誘導され、次の世代に受け継がれていることを証明した。 植物では男性生殖系列花粉粒の発達に伴い2つの精子細胞が発生し、栄養核と呼ばれる構造が出来上がる。栄養核は精子細胞にエネルギーおよび栄養分を配達することから、“ナース細胞”とも呼ばれている。胚細胞内のDNAは2つの全く異なる状態で存在することが可能であり、1つではDNAが非常に密集しており、個々の遺伝子の“発現”を可能にする細胞機関によるアクセスが不可能な状態である。もう一つの状態ではDNAがそれほど密集していないため、遺伝子発現が可能である。後者の状態では遺伝子物質がアクセス可能であるため、様々な化学基(一般的なのはメチルおよびアセチルの2つ)に「目覚まし時計」遺伝子同定
朝、目覚まし時計のけたたましい音が無くても目が覚める事について、不思議に思ったことはあるだろうか?ソーク生物学研究所の研究者達が、この疑問を解決するカギとなる生物時計の新しい構成要素を同定した。この要素とは、生物時計を静止状態からスタートする役目を果たす遺伝子である。体内時計は、体が起きるための合図である重要な生理機能を誘導し、毎朝早くから私たちの代謝を高めている。この新しい遺伝子の発見と、この遺伝子が生物時計をスタートさせるメカニズムを解明することによって、不眠や老化、また、癌や糖尿病などの慢性疾患の遺伝的基盤を説明することが可能になるであろう。 「体とはつまり時計の集まりなのです」と、ソーク寄生生物学研究所の准教授であるパンダ・サチンダナンダ博士は言う。パンダ博士はポスドク研究員であるディタッチオ・ルシアーノ博士とともに今回の実験を行った。 「私たちは、夜間に体内時計を緩めるメカニズムは知っていましたが、朝にメカニズムを活性化させるものが何なのかが分かりませんでした。これを発見した今、加齢や慢性疾患につき体内時計が誤作動する方法をより深く研究することが出来ます。」と博士は語る。サイエンス誌に2011年9月30日付けで発表されたオンライン記事によると、ソーク研究者達とその共同研究者であるアギル大学とアルバート・アインシュタイン医学大学の研究者達は、KDM5A遺伝子がJARID1aタンパク質をコード化する方法を説明している。このJARID1aタンパク質は生化学的な回路の活性化スイッチの役目を果たし、私たちの概日リズムを維持する。今回の発見は、これまで空白だったウェイク睡眠サイクルをコントロールする分子メカニズムの関係性を埋める。体内時計の中心的プレーヤーはPERIOD (PER)とよばれるタンパク質である。それぞれの細胞のPERタンパク質の数は、24時間ごとに上昇うつ病の病因が見直され、新たな治療薬ターゲットが浮上
プリンストン大学の研究チームが、酵母菌において、抗うつ剤ゾロフトに依拠する自己分解反応を確認した事により、抗うつ剤の作用機序のみならず、うつ病は神経伝達物質のセロトニンのみが関与しているのではないのではないかという、これまで長く続いてきた研究者間の議論に、決着が付きそうな様相を呈してきた。2012年4月18日付けPLoS ONE誌のオンライン版に発表された論文によると、プリンストン大学ルイス・シグラー総合ゲノム研究所の研究員であり分子生物学の講師であるエタン・パールステイン博士の研究チームが、抗うつ剤のセルトラリン(商品名ゾロフト)は、パン酵母菌の細胞内膜に蓄積する事を、報告している。 この蓄積が進めば、小胞膜内に腫れと湾曲を引き起こし、泡状の細胞構造となり、細胞代謝と遊走、およびエネルギー蓄積が進む。次いで、小胞は自食作用を起こし、過剰な或いは障害された細胞膜の再利用を行なう防御反応が見られる。 しかし酵母菌は、抗うつ剤の第一の標的であるセロトニンを持っていないとパールステイン博士は語る。薬剤の通常の標的を有しない生物が起こす、セルトニンに対する反応を観察することで、パールステイン博士と共同著者とのチームは、抗うつ剤がセロトニンのコントロールを超えた薬理学的な活性を有する明らかな証拠を発見した。パールステイン博士は、ジンキー・チェン博士とダニエル・コロスティシェフスキー氏とシーン・リー博士の3人を、共同第一著者として、共同研究を遂行した。抗うつ剤がセロトニンをコントロールする事は知られているが、うつ病の治療に使用するにしても、脳細胞とどのような相互作用を持ち、どのような効果を有するのかは、実はよく判っていないのだと、パールステイン博士は言う。抗うつ剤がヒトの細胞膜にも蓄積する事が報告されているが、害は無いとの事だ。しかし、膜の湾曲はうつ病の治療には非常に重要であ進行性膵臓がんの予後はがん遺伝子の活性が握る
変異がん遺伝子の発現によって、主要な代謝パスウエイの「送電線」が継続的に確保されなければ、進行性膵臓がんは増殖を続けられないことを、ダナ・ファーバーがん研究所の研究チームが明らかにした。 2012年4月27日付けのセル誌に発表された論文によれば、この代謝パスウエイを標的にすれば、致死性の高い膵臓がんの新たな治療法の開発に繋がるという。マウスのKrasがん遺伝子を操作し発現を止めた場合、膵臓がんは即座に縮小し、腫瘍が目視できないくらい小さくなったケースも見受けられた。 進行性膵臓がんは増殖を続けるために、Krasがん遺伝子に「依存しきっている」ことの実証となると、研究チームは説明している。「この研究で明らかになったことは、進行性膵臓がんは生来、Krasがん遺伝子の継続的な発現に依存して、自らの増殖機構のメンテナンスを行なっているということです。」と、ロナルド・デピーニョM.D.,と共同責任著者であり、元ダナ・ファーバーがん研究所で現在ホーストンのM.D.アンダーソンがん研究所に所属するアレック・キンメルマンM.D.,pH.D.,は語る。キンメルマン博士は、Krasがん遺伝子が、「基本的には、主要な代謝酵素の発現を制御することで、細胞のグルコース代謝を再構築する機能を有しているので、そのうちの幾つかは新規的な治療標的となる」ことも明らかにした。 もしこのアイデアが正しくこれらのパスウエイを標的とすることが出来れば、現在一般的なKRASのブロック剤を開発する方針よりも遥かに優れた戦略となる。それは、KRASを合成医薬品で確実に叩くことは極めて困難だからである。アメリカがん協会によると、2012年のアメリカにおける新たな膵管腺がん患者数は43,000人を超え、そのうち37,300人が亡くなると予測されている。5年生存率が僅か5%しかないのである。Krasがん遺伝子が、膵臓最も一般的な肺ガンの形成に関わる単一遺伝子をメイヨークリニックが特定
肺ガンの最も一般的な形成とその致命的な転移を促進する単一の遺伝子が、フロリダ州メイヨークリニック研究チームのマウスモデルによって発見された。マトリックスメタロ-10(MMP-10)と呼ばれるこの遺伝子は、他形態のガンも促進していると研究チームは考える。2012年4月24日付けのPLoS ONE誌に掲載された本研究は、MMP-10が癌幹細胞によって分泌され、生命維持のために使用される増殖因子であることを示している。 これらの細胞はその後肺ガンとその転移を引き起こすのだが、従来の治療には耐性を持つのである。本研究は、米国のガン死亡数トップの非小細胞肺ガンについて、その治療法の開発の可能性を高めるものである。MMP-10をシャットダウンすると、肺ガン幹細胞は腫瘍形成能を失うが、遺伝子を細胞に戻せば、再び腫瘍が形成される。この遺伝子のもつ力は尋常ではない、とフロリダ州メイヨークリニック癌生物学癌研究科のアラン・フィールズ教授は述べる。「我々のデータは、MMP-10は癌において二重の役割を果たすことを立証しています。MMP-10はガン幹細胞の成長および転移能を促進するのです。ガン幹細胞が腫瘍をイニシエートするだけでなく、転移を誘発するものでもある、ということは様々な腫瘍タイプで見られてきた知見であり、本研究はこの知見を説明するのに役立つでしょう。」と、フィールズ博士は説明する。 フィールズ博士によると、本発見は予期しなかったことだという。第一に、ガン幹細胞自身がMMP-10を発現し、自身の増殖のために使用する。マトリクスメタロプロテアーゼ遺伝子ファミリーとして知られている遺伝子のほとんどは、腫瘍を取り囲む細胞や組織である微小環境で発現する。これらの遺伝子により生産された酵素は、腫瘍を保持する微小環境を壊し、ガン細胞を広げる。そのため、この系統科に属する遺伝子はガン転移とリンほんの一握りの遺伝子およびタンパク質により神経ネットワークは作成されている
複雑な神経ネットワークパターンは、ほんの一握りの重要な遺伝子によってプログラミングされている。この早期脳神経ネットワーク発生における特徴を発見したのは、ソーク研究所の研究チームである。2012年2月3日付けのセル誌に記載された本研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患のための新しい治療法の開発、および特定のガンへの新たな研究戦略の提示となるであろう。 ソーク研究チームは運動神経の軸索の先端、および通過する細胞外液内に存在する少数のタンパク質が、神経を脊髄から導きだす役割を果たしていることを発見した。これらの分子は目標とする筋肉に結合するまでに辿る長い曲路によって、軸索を誘引または忌避することが出来る。「新進の神経は自身が生長する局所環境を検知し、どこにいるのか、そして直線または左右に生長するべきなのか、それとも停止するべきなのかを判断しなければいけません。生長神経を導く複合体は、ほんの一握りのタンパク質生成物をアレンジすることで作成されているのです。まるで馴染みの無い街中でGPSが車を誘導するのと同じような感じです。」と、本研究の責任研究者、ソーク研究所遺伝子発現研究室教授およびハワード・ヒューズ医学研究所研究員、サム・ファフ博士は説明する。 脳内の神経結合数は、脳細胞DNA内に存在する遺伝子の数の数百万倍にもなる。生長神経がどのようにして様々な情報を統合し、ターゲットまで辿り着き結合するのかを理解するよう試みたのは、本研究が初めてである。「我々は今回、筋運動をコントロールする運動神経に焦点を当てていましたが、胚発生中の神経系でも似たようなことが起こっており、数百万もの軸索がターゲットに到達するまでに膨大な数の決断を下しているのです。精巧な特異性に基づき生長することが、神経系機能の基盤となっているのです。」と、ファフ博士は語る。本知見はALS(またはルー酸の刺激を感じないアフリカハダカデバネズミのイオンチャンネルに新薬のヒントが!
ベルリン・ビュッヒにあるマックス・デルブルーク分子医学センター(MDC)のイギリスチームが、世界で最も希少な哺乳類の部類に入るアフリカハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)が、どうして酸に曝露しても痛みを感じないかを解明した。アフリカハダカデバネズミは暗い穴倉に密集して生息し、そこでは住環境中の二酸化炭素濃度が、大変高い。体組織中では、二酸化炭素は酸に変換され、それが痛覚神経を継続的に刺激する。 しかしハダカデバネズミは例外的に、痛みの受容体類に存在するイオンチャンネルが変性しており、酸に対して不活性で、このタイプの痛みには不感症となっているのである。エバン・セント・ジョン・スミス博士とゲリー・ルーウィン教授は、この酸による痛みに対する不感症は、アフリカデバネズミの特異な住環境に順応するために、進化によって獲得した形質であると結論付けた。 本研究結果は2011年12月16日のサイエンス誌に発表された。Nav1.7ナトリウムイオンチャンネルが、痛みの刺激を脳に伝達する主要な役割を担っている。これが痛み受容体類、すなわち、センサー神経細胞に対して神経インパルス(神経伝達の電位)を誘発する。このセンサー神経細胞の片端は皮膚表面に達し、痛みの刺激を脳に伝達する。歯科医は部分麻酔薬として、ナトリウムイオンチャンネルブロッカーを使用しているが、この麻酔薬はNav1.7イオンチャンネルだけでなく、全てのナトリウムイオンチャンネルに作用する。遺伝子の変異によってNav1.7イオンチャンネルが不全である人は、痛みを感じることがないが、これは本人にとって決して良いことではない。つまり、軽い外傷や感染症に対して自覚がないので、重篤な結果を招く場合があるのだ。しかしアフリカハダカデバネズミにはそのような問題はない。彼らにとって、酸に対する痛覚が無い事は、生き延びるアルツハイマーの進行を防止する初の治療薬が完成か?
新薬候補の一つであるJ147が、アルツハイマー病による精神的な衰退を止める最初の薬になるかもしれない。2011年12月14日付けでPLoS ONE誌に掲載されたこの研究では、J147をアルツハイマー病のマウスに投与した所、記憶力が改善され、疾患に由来する脳損傷を防止した。この新薬はソーク生物学研究所の研究チームによって開発され、近い将来人間の治療に使用されるだろう。「J147は正常のマウスとアルツハイマー病のマウス両方の記憶力を改善し、脳をシナプス結合の損失から守ることが出来るのです。」と、ソーク細胞生物学研究所所長であり、今回の新薬を開発したチームのデイビッド・シューベルト博士は語る。 現段階では新薬の人間への安全性と有効性は不明であるが、研究結果はアルツハイマー病を持つ人々の治療に有効である可能性が高いことを示していると、ソークの研究者達は考える。国立保健研究機構によると、米国でのアルツハイマー患者は約540万人にもなる。そして2050年には1600万人以上もの患者数に増え、医療費は年間1兆ドルを超えるとアルツハイマー協会は推計する。この疾患は、着実に不可逆的な脳機能低下を起こし、患者の記憶を消していく。患者は次第に食事や会話などの単純なタスクを実行できなくなり、最終的には死に至る。 アルツハイマーは老化と関係しており、典型的には60歳以降に発症する。それ以前に発症する遺伝的リスクを伴う家系もあるが、それは極少数である。死因のトップ10のうち、唯一、防止や治癒、または病気の進行を遅くする術がないのはアルツハイマーだけである。アルツハイマーの原因は不明確であり、遺伝や環境、そしてライフスタイルなど数々の要因が複雑にミックスした結果であると考えられている。今のところ、アリセプトやラザダイン、エクセロンなどの薬は僅かに記憶力を改善するが、疾患の進行を遅らせることは出モンゴリアンのゲノムのシーケンスが初めて完了
中国の内蒙古と深川にある、内蒙古農芸大学(IMAU)と内蒙古民族大学(IMUN)と世界最大のゲノムセンターである北京ゲノムセンター(BGI)とが共同で、モンゴリアンの全ゲノムの配列解析を完了した事を発表した。このゲノム研究は、アフリカから発祥してアジアへ広がったモンゴリアンとその子孫の進化と民族移動の解明に大きく寄与し、ヒトの遺伝性疾患の研究の為の重要な基盤となる。 中央アジア系民族グループに属するモンゴル人のほとんどは、今日では、モンゴル国と中国の内蒙古とロシアのブリアチアとに居住しており、その人口は凡そ1,000万人となっている。13世紀から14世紀の時代に遡れば、「モンゴル帝国」は世界史上で「最大の地続きの帝国」として認識され、その広さは東アジアの黄海から東ヨーロッパ諸国の国境まで達しており、チンギス・ハンとその子孫によって統治された。広大な帝国では新しい技術や日用品そして文化の交換や交流が進み、東ヨーロッパからアジアまで人々の移動や交易が発展した。ユーラシア大陸においては、モンゴル帝国が存在した期間を通して、中国、中東、ロシアも含み、モンゴル民族の移動が幅広く成された事が、研究者間では通説となっている。 モンゴリアンのゲノム研究によって、モンゴル民族が人類の進化に与えた影響を、遺伝子レベルで解析する事が出来るようになった。この研究では、モンゴル王族の血筋でチンギス・ハンから34代目の子孫である成人男性のDNAが、サンプルとして使用されている。「このサンプルが、研究において極めて重要であるのは、家系の記録が完全であり、他の民族グループとの混血が無い事です。」と、IMAUのプロジェクトリーダーで科学技術局長であるファンミン・ゾウ教授は語る。同様に、BGIの共同研究所長のイエ・イン博士は、「モンゴリアンのゲノム解析を初めて完了させたという事は、モンゴリアンのゲノ先天性疾患の治療、マウスモデルで成功
ハイデルベルク大学病院の研究者が、マウスモデルを使用して初めて、糖代謝が異常を来す重度の先天性疾患の治療に成功した。クリスチャン・ケルナー教授率いるチームは、雌マウスが交尾前および妊娠中に飲料水と共にマンノースを与えられた場合、その子孫は先天性疾患の遺伝的変異を持っていたとしても、正常に発達することを証明した。ケルナー教授は、児童医学センターのグループリーダーでもある。 今回の発見は、この代謝疾患の分子過程や胚発生における重要の段階の理解に貢献し、初となる治療方法を提供する可能性を持つ。ハイデルベルクの研究者達はまた、ドイツ癌研究センター(DKHZ)細胞分子病理学のヘルマン・ジョセフ・グレーヌ教授との共同研究も行っている。その結果は印刷版に先駆けて、Nature Medicine誌オンライン版に2011年12月11日に発表された。 現在、稀な病気であるグリコシル化の先天性疾患(CDG)を持つ子供は、世界中で1000人存在する。CDG-Iaが最も頻繁なタイプで、約800人を占めている。しかし、報告されていない症例数も多く、CDGの子供は、重度な身体的、また精神的な障害を持ち、約20%が2歳前に死亡する。この疾患の治療法は、未だ発明されていない。CDG-Iaは、phosphomannomutase2酵素の遺伝子情報の変異によって引き起こされる。この酵素は、グリコシル化の重要なプロセスに関与していて、変異の結果、マンノースリン酸1の産生が十分ではなくなる。その結果、グリコシル化機能不全になり、通常、糖タンパク質の形状や安定性および機能に役立つ糖鎖が、不完全にタンパク本体に結合したり、場合によっては完全に結合されなくなる。オリゴ糖不足は神経や成長、また臓器の発達の障害につながる。この疾患は、乳児が母親と父親の両方から変異遺伝子を継承した場合のみ現れる。共に変異遺伝子と“正肺がんを死滅させる放射線治療の能力を高めるダイズ
肺癌研究に関する国際学会の公式月刊誌「The Journal of Thoracic Oncology」(2011年4月号)の中で、ダイズ中の物質が肺癌細胞を死滅させる放射線の能力を高めることがわかった。とウェイン州立大学によって発表された。ウェイン州立大学の医学部Dr. Gilda Hillman准教授(Karmanos癌研究所)は次のように語った「私たちは肺癌の放射線治療能力を向上させるためにダイズイソフラボンと呼ばれる天然のダイズの非毒性物質について研究している。 これらが癌細胞に対する放射線の効果を高めて正常な肺細胞を放射線傷害から保護する。」彼はこの研究チームを導いたが、さらに続けて述べている「癌細胞には細胞自身を防御するメカニズムを活性化して生き残ろうとする機能が備わっている。しかし天然のダイズイソフラボンは、癌細胞の生き残る機能を阻害して放射線治療の効果を高める。」 「ダイズイソフラボンは抗酸化物質として作用し、放射線治療の意図しない損傷から正常な組織を保護する」Dr. Hillman氏と彼女のチームは、ダイズイソフラボンがDNA修復メカニズムの阻止を介して放射線による癌細胞の死滅効果を高めることを示した。放射線による傷害から生存する癌細胞によって、DNA修復メカニズムがスイッチオンされることである。放射線照射前にダイズイソフラボンで処理したヒトA549非小細胞肺癌(NSCLC)細胞は、放射線だけ照射した細胞よりもDNA損傷が大きく、修復活性が低かった。研究者らはゲニステイン(genistein)、ダイゼイン(daidzein)、グリシタイン(glycitein)のようなダイズの主なイソフラボン3種類で構成される製剤を使用した。以前の研究では、純粋なゲニステインがヒトNSCLC細胞株で抗腫瘍活性を示し、上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)チロシン・キナ新種の抗血管新生薬を発見
マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究グループは、血管の形成を阻害する全く新しい種類の血管新生薬を世界で初めて発見した。PNAS誌の2011年6月27日Early Editionに掲載された報告には、その活性成分をどうやって南米の樹木から抽出し、動物モデルにおいて血管の正常な形成と創傷の治癒と腫瘍の成長がどのように阻害されるかという新規的な機序が紹介されている。 本論文の主筆であるMGH腫瘍生物学Steel Laboratoryのイゴール・ガルカフゼフ博士は「FDAに認可されているほとんどの抗血管新生薬は、血管の形成を直接刺激している血管内皮増殖因子(VEGF)に制御されるパスウエイを阻害している。こ の医薬がいくつかのタイプのガンの標準的な治療法となってはいるが、患者の生存期間を若干延長するだけの効果しかなく、腫瘍の血管系を標的とするより効果的な新薬が必要である」と述べる。 腫瘍は自らが成長するために血液供給機能の形成と維持を必要とするが、腫瘍の血管系は無秩序な形成傾向が非常に高く、それによって放射線治療や化学療法など従来の治療法が効きにくくなっている。VEGFのパスウエイを標的とする薬剤は腫瘍の血管系を「正常化」し、他の治療法の効果を高める働きがあるが、患者の生存期間の延長にそれ程貢献しない現実は、これらの薬剤に対する耐性が生じたり毒性が出たりする事に依拠すると思われる。 MGHグループの研究ではこの新薬は血管の成長をこれまでと異なる機序で阻害し、ガルカフゼフ博士等は内皮細胞が血管外壁に接着し裏打ちしていくパスウエイに注目した。適切な細胞接着は血管機能にとって重要であり、腫瘍の血管に特徴的な無秩序な細胞の裏打ちは接着の変容をもたらす。研究チームは新規的な二段階探索法を用い、まず細胞接着に関与する50,000種類の化合物をスクリーニングし、次いで、選別された微量のアルコールが蠕虫の寿命を劇的に延ばす
お酒に含まれるアルコールであるエタノールは、僅かな量であれば、Cエレガンスとして知られている小さな虫−この虫は老化の研究で実験モデルとして頻繁に使用される−の寿命が、2倍に延びる事を、UCLAの生化学研究チームが発表した。但し、それを科学的に説明するのは、どうやら難しそうだ。この研究結果は2012年1月18日付けのPLoS ONE誌のオンライン版に発表されたが、「この結果はショッキングであり、私達を悩ませています。」とUCLAの化学科と生化学科の教授であり、本論文の上席著者でもあるスティーブ・クラーク博士は話す。 アルコールの摂取は人においては一般的に害をなし、Cエレガンスも多量のアルコールを摂取すれば神経系を損傷し死に至る事は、他の研究で明らかになっていると、クラーク博士は話す。「私達は非常に少量のエタノールを投与しました。そうするとCエレガンスには効用があるのです。」と付け加えるクラーク博士は、老化の研究に関する生化学の専門家である。Cエレガンスは卵から成虫まで僅か数日で成長し、世界中どこでも土壌中に生息し、バクテリアを食餌としている。クラーク博士の研究チームのパオラ・カストロ、シルピ・カーレ博士、ブライアン・ヤング博士等は、生後数時間のまだ幼生であるCエレガンスを、何千匹も研究してきた。この虫の寿命は凡そ15日で、何も食べなくても10日から12日間は生きる。「しかし、私達の研究では、微量のエタノールを与えると、20日から40日に寿命が延びます。」とクラーク博士は話す。研究チームが最初にやろうとした事は、コレステロールがCエレガンスに与える影響を観察することであった。「コレステロールは人間にとって必須の成分です。細胞膜には欠かせません。但し、血流には悪影響を与えます。」とクラーク博士は説明する。Cエレガンスにコレステロールを与えたところ、寿命が延びたため、明らかにコレ遺伝性の前立腺がんリスクに関与する変異をついに発見
若年期の男性に発症し、家系に遺伝する前立腺がんの遺伝因子について、20年来研究されてきたが、遂にこの疾患リスクが非常に高くなる、珍しい遺伝性の遺伝子変異が発見された。この発見は、ジョン・ホプキンス大学医学部とミシガン大学(U-M)ヘルス・システム研究所の研究チームによって、2012年1月12日付けのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された。発表によると、この変異を有する男性は、前立腺がんを発症するリスクが変異の無い男性に比べて10倍から20倍も高いと考えられる。前立腺がんの症例全体から見れば、この遺伝子変異のケースは一部に過ぎないが、健康診断項目に追加するか早期スクリーニングを実施することにより、この変異に依拠する高いリスクグループを発見できるメリットがある。 今年もアメリカでは24万人が、新たに前立腺がんと診断されると見込まれている。「遺伝性の前立腺がんに関与する遺伝子変異としては、今回の発見が初めてです。」とU-M医学部の内科学と泌尿器学の教授で、本論文の上級共同著者の一人であるキャスリーン・A・クーニー博士は語る。もう一人の上級著者で、ジョン・ホプキンス大学医学部泌尿器学と腫瘍学の教授であるウィリアム・B・アイザックス博士は付け加えて、「これは私たちが20年来、追いかけてきたものなのです。前立腺がんが家族性であることは、随分以前から分かっていました。しかし遺伝に関与する隠れた遺伝子をピンポイントで同定することは大変困難で、これまでの多くの研究結果は矛盾が多く、不十分でした。」と語る。この研究は、アリゾナ州フェニックスのトランスレーショナル・ゲノム研究所(TGen)のジョン・カープテン博士との共同研究体制のもと、ヒト染色体の17q21-22領域として知られる部分の200個を超えるDNAの配列を、最新の技術で解析することによって行なわれた。U細胞老化の謎を解く長命なタンパク質を発見
なぜ細胞は老化するのか。これは生物学における謎の一つであるが、今回ソーク生物学研究所の研究チームが、脳内で起こる老化プロセスの謎を解明する脳細胞の構成要素の弱点を発見したと報告した。研究チームが発見したのは、ELLPs (Extremely Long-Lived Proteins) と呼ばれる非常に長命なタンパク質で、これはニューロンの核の表面で見られる。ほとんどのタンパク質の寿命が合計2日以下なのに対し、ラットの脳内で発見されたELLPsはラットとほぼ同じ年齢であることが分かった。本研究は2012年2月2日付けのサイエンス誌に記載され、これほど長命なタンパク質を含む必須細胞内マシーンが発見されたのは今回が初めてである。本研究は、タンパク質が置換されることなく生涯にわたって持続するものであることを示唆している。ELLPsは核表面の輸送チャンネルを構成している。このチャンネルは出入りする物質をコントロールするゲートのようなものである。ELLPsが時間とともに消耗しなければ、このタンパク質が長命であることはメリットである。 しかし、ELLPsは他のタンパク質と異なり、異常な化学修飾や損傷を受けた際に、新しいものに入れかわることはない。そのためELLPsが損傷を受けると、毒素から細胞核を保護するための三次元輸送チャンネルの能力を弱める場合があると、本研究を率いたソーク大学分子細胞生物学研究所教授、マーチン・ヘッツァー博士は推測する。結果、これらの有害物質は細胞のDNA、そして遺伝子活性を変化させ、細胞老化を引き起こすことが示唆されている。エリソン医学基金およびグレン医学研究基金から資金提供されているヘッツァー博士の研究チームは、NPCと呼ばれるこの輸送チャンネルの老化における役割を研究している、世界で唯一のグループである。DNA損傷を起こす有害物質が核内に侵入出来ることは、哺乳BGI研究所がヒトトランスクリプトームの広範なRNAエディティングを同定
世界最大の遺伝子研究所である中国BGI研究所が、ネイチャー・バイオテクノロジー誌2012年2月12日付けオンライン版で、ヒトセルラインのRNAシーケンスデータを精査し、RNAが広範に修正をかけている事を実証した。そしてこの重要な転写後の修正イベントを同定するには、大変高度な解析方法が必要となることも明らかにした。RNAの修正については良く知られているが、詳細はまだ不明である。 DNAからRNAへ転写された後に、ヌクレオチドの若干の修正が行なわれるということだ。このステップは、遺伝情報を再コード化する際の転写後イベントとして、細胞RNAの固有の特徴の多様性と柔軟性を創製するために、必要不可欠なものである。こうしてRNAエディティングは、翻訳されたタンパクの構造と機能を研究する「ポストゲノムシーケンス」の時代において、重要な分野となってきた。つまり、遺伝子研究分野で、その重要性は益々大きくなってきているのだ。昨年サイエンス誌に発表された論文(2011年5月19日、リー等)では、ヒトトランスクリプトーム解析において、対応するmRNAとDNAとに大きな配列の違いが見つかっている。これが驚愕すべき発見である理由は、「RNAエディティング」に未だ不明なメカニズムが存在するにせよ、「RNAエディティング」の事実はセントラル・ドグマを外れ、遺伝子変異に対する私達の理解を覆すものだからだ。 しかし、この考え方は多くの研究者が疑義をはさみ、解析技術や学術的厳格性、例えばシーケンスエラーやマッピングミスについて、多くの議論が生じた。そこで最新のBGI研究所の研究チームが提示したのは、RNAエディティングのような分野における研究を行なうに当たって問題となる課題に対する、より厳格な研究方法であった。研究チームは、中国漢民族の男性由来のリンパ芽球様セルラインをサンプルとしたRNA-seqによヒトY染色体が絶滅することはない
ヒト生物学を構成する原則が過去2500万年もの間、実質的に無変化のまま存在している。と、判明した場合、それはこれからも変わらないと自信をもって言えるだろう。ホワイトヘッド研究所の科学者たちが行った最新のヒトY染色体進化論の研究結果は、Y染色体が無くなる事はないと証明している。「Y染色体消滅論」の支持者たちは、Y染色体が将来絶滅するであろうと予測している。 Y染色体は過去3億年間に100以上の遺伝子を失っているため、このまま続けば必然的に全ての遺伝子が無くなるであろう、というのだ。ホワイトヘッド研究所所長、デイビッド・ペイジ博士と研究チームはこの10年間、着実に「Y染色体消滅論」を否定する研究を行ってきたが、周囲の認知効果は無に等しかった。「この10年間Y染色体について学界で合意されていた仮説は、いつかは消滅するものである、という論説です。この説をバックアップする確かな証拠が一度でも出たかどうかは別として、Y染色体消滅論はあっと言う間に広がり、定着してしまったのです。この消滅論については、わざわざ話題にあげる事が無いほどに浸透しており、我々のY染色体研究には逆風でもあったのです。」と、ペイジ博士は説明する。本研究結果のおかげでペイジ博士はY染色体消滅論支持者たちにチェックメイトをかけることが出来たのだ。 本研究チームは、アカゲザル(ヒトの進化経路から2500万年前に分岐した旧世界ザル)のY染色体をシーケンシングし、ヒトおよびチンパンジーのそれと比較し、驚愕する結果に至った。2012年2月22日付けのネイチャー誌オンライン版に記載された本研究結果は、進化分岐点からのアカゲザルとヒトのY染色体の顕著な遺伝的安定性を示している。この知見の重大性を理解するためには、歴史的コンテキストを知らなければならない。性染色体になる前のXおよびY染色体は、他の22対のような常染色体であ次世代シーケンシングによるミトコンドリア性疾患の遺伝子の解明
リー症候群では乳児は健康体で生まれたかのように見えるが、時間の経過と共に悪化していく運動や呼吸障害を発症し、ほとんどの場合3歳で死に至る。これは、細胞内のミトコンドリアが、脳が発達していくために必要なエネルギーの需要についていけないからである。この度、この病気の原因である遺伝子の欠陥が見つかったと、Cell Press出版のCell Metabolism誌9月号に発表された。今回の研究結果は、二人のリー症候群患者の、ミトコンドリアで活性化しているタンパク質をコードする約1000の遺伝子の一部を配列決定して得たものである。 「これは、 シーケンシング技術がこれからの診断の進歩に役立つ可能性を表しています。家族歴のない個人にも適用可能なアプローチです。」と、オーストラリアのマードック子供研究所のデビッド・ソーバーン博士は語る。リー症候群は、現在認識されている小児ミトコンドリア病の中でも最も一般的なものであり、今回新しく発見された遺伝子を加えると、変異した際にリー症候群を引き起こす遺伝子は約40種類にものぼる。 この新しく発見された遺伝子はMTFMと言われ、ミトコンドリアの活性酵素をコードしている。ミトコンドリアは独自のDNAをもっており、これらは局所的にコード化されたタンパク質と細胞の核ゲノムでコード化された後に移入されたタンパク質の組み合わせによる違いを有している。ミトコンドリアDNAでコード化されたMTFMT酵素は、tRNAに作用し、タンパク質翻訳を開始できる形に変換する役割を果たす。この酵素が欠けていると、ミトコンドリアはタンパク質を効率的に翻訳することが出来ず、リー症候群として知られる症状を引き起こすのである。患者の皮膚細胞の研究では、翻訳不全がMTFMT遺伝子を置き換える事によって補正出来る事が明らかにされた。リー症候群において、分子診断が必ずしも治療法につ絶滅危惧種のウマの往古の祖先と豊かな遺伝的多様性
プルツワルスキー馬として知られる絶滅危惧種のウマが、研究者たちが予測していた以上に家畜ウマとの系統的関係がかなり離れている事が、ペンシルバニア州立大学生物学部のカタリーナ・マコバ博士率いる研究チームにより報告された。4血統のプルツワルスキー馬について、母から子に排他的に遺伝するゲノム情報部分−ミトコンドリアDNA−に特化して、家畜ウマ(学名Equus caballus)のDNA情報との比較検討が成された。 その結果、これまで学者が想定していたようにウマの家畜化が始まった6000年から10000年前にプルツワルスキー馬と家畜ウマとが分かれたのではなく、それよりずっと以前に分化していた事が明らかになった。本研究で収集されたデータによれば、現代のプルツワルスキー馬種はこれまでに予測されていたよりも遥かに多様性のある遺伝子プールを有している事が示唆されている。この新たな知見は絶滅危惧種を救う為の保護努力の重要性を大いに主張するものであるが、この馬種は中国とモンゴルの一部とカルフォルニア州とウクライナの自然保護地区に合わせて2000頭しか生息していない。本研究はJ. Genome Biology and Evolution誌に掲載予定であるが、先に2011年7月29日のオンライン誌に発表される。 プルツワルスキー馬はずんぐりした小型のウマで、野生で生息しているのを発見したロシアの探検家の名前に因んで命名されている。20世紀中頃には、多くの品種や個体の死を招く遺伝的ボトルネック効果と言われる進化事象によって、絶滅の危機に陥った。「悲しい事ですが、遺伝的ボトルネック効果というのは人間の行為によるものなのです。プルツワルスキー馬は食糧として狩られ、元来の生息地域であった大草原から農場に移され、生活と繁殖の場を奪われたのです。1950年後半にはたったの12頭しか残っていませんでしたRTS, Sマラリア・ワクチン候補、アフリカの乳幼児の臨床試験で発症率を3分の1下げる
RTS, Sマラリア・ワクチン候補の大規模臨床第III相試験結果が2012年11月9日付New England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。この結果報告によれば、RTS, Sマラリア・ワクチン候補がアフリカの乳幼児をマラリアから守ることができるとしている。対照ワクチンによる免疫を受けた乳幼児 (生後6週間から12週間で第1回の接種) と比較した場合、RTS, Sワクチンを接種した乳幼児では、臨床マラリア、重症マラリアの双方で3分の1ほど発症率が低く、また注射に対する副反応もほぼ同じ比率で発生した。また、この試験では、RTS, Sワクチン候補は、安全性と忍容性プロファイルも許容範囲だった。 この試験は、GlaxoSmithKline (GSK) と PATH Malaria Vaccine Initiative (MVI) が協力し、ビル&メリンダ・ゲーツ財団がMVIに助成金を出して、アフリカの7か国の11か所の研究センターで実施している。この試験の治験責任医師を務めるタンザニアのIfakara Health InstituteのDr. Salim Abdullaは、「この数年、マラリアに対する闘いでは大きく前進してきたが、依然として年間655,000人がこの病気で亡くなっており、その大部分はサブ・サハラ・アフリカの5歳未満の幼児だ。効果的なマラリア・ワクチンができれば、病気に対する闘いにも強力な武器になる。そのためにも私たちはこのRTS, S治験を進めてきた。この試験でRTS, Sが乳幼児をマラリアから守るワクチンになる可能性が見えた。また、この試験では、参加者が蚊帳を使い、さらにRTS, Sを投与することでマラリア予防効果がぐんと大きくなることだ」と語っている。 RTS, Sワクチンを6週間から12週間の乳児に初回とし幹細胞とナノファイバーで神経研究に長足の進歩期待
ミシガン大学の神経科医ジョセフ・コリー医学博士は、自分のクリニックで毎週のように、患者の神経組織が病気や傷害のために死滅あるいは消失するのを見てきた。コリー博士は、神経組織を破壊する病気や傷害が患者に痛みや身体能力の低下など様々な影響を与えるのを見てきて、治療も現在よりもっと効果的な方法がないものか、あるいはできれば神経組織そのものを再生することができないかと考えてきた。 そのため、コリー博士は、VAアン・アーバーヘルスケア・システム (VAAHS) の自分の研究ラボを率い、現在、その研究チームはまさしく博士の念願を実現すべく研究を進めている。最近発表されたいくつかの研究論文で、コリー博士と、ミシガン大学医学部、VAAAHS、カリフォルニア大学サンフランシスコ・キャンパス(UCSF)の研究同僚は、特殊なポリマー・ナノファイバー技術の開発に成功し、神経組織形成の仕組み、なぜ傷を受けた神経が再接合しないのか、神経組織の損傷を防いだり、損傷の進行を遅らせることはできないかという問題を研究してきたと述べている。 さらに、人間の毛髪よりも細いポリマー・ナノファイバーを基礎として特定のタイプの脳細胞をナノファイバーに巻きつかせることで人体の神経組織とほぼ同じ大きさと形状のものを作ることができた。そればかりか、より大きな神経線維を損傷から守る保護皮膜形成、つまり髄鞘形成と言われるプロセスも再現することができたと述べている。さらには、人体の中で起きているのとまったく同じように、ミエリンと呼ばれる保護物質が同心円状に何層にも形成することも確認した。コリー博士のチームは、協力者のUCSFのジョナ・チャン博士のラボ・チームと共同で2012年7月15日付のNature Methodsオンライン版に研究成果を発表している。この研究では、ニューロンを中枢神経系の主役とすれば、その主役を支える腎腫瘍からがん幹細胞を分離
科学者グループは、小児の腎臓に発生するがんの一種、ウィルムス腫瘍の成長に関与するがん幹細胞を分離し、さらに分離したがん幹細胞を使って新しい治療法を試した。将来、この治療法は進行性がより強いタイプのウィルムス腫瘍治療に役立つようになるかも知れない。この研究結果が、2012年12月13日付オンラインのEMBO Molecular Medicineに掲載された。 イスラエルのPediatric Stem Cell Research Instituteの所長、Sheba Medical Centerとテル・アビブ大学Sackler School of Medicineの主任医師を務めるベンヤミン・デケル教授は、「これまでの研究では、幹細胞は大人の乳がん、膵がん、脳腫瘍などから分離されていた。しかし、これまで余り知られていなかったのは小児がんの幹細胞だ。がん幹細胞には腫瘍成長を開始し、維持し、さらに増殖させるために必要な遺伝子的機構がすべて備わっている。そのため、"がん始原細胞"と呼ばれることもある。そういうがん幹細胞であるからこそ、がんの進行の研究に非常に有用であるばかりでなく、様々なタイプのがんの成長と転移を阻止する新薬の研究開発や治療法の研究においても有用だ」と語り、さらに、「私たちの研究は、しばしば小児の腎臓で発生するある種の腫瘍から初めてがん幹細胞を分離することができた」と語っている。 ウィルムス腫瘍は、小児の腎臓の腫瘍としてはもっとも一般的なタイプで、初期のうちに手術で腫瘍を摘出し、化学療法を施せば、ほとんどの患者は順調に回復するが、再発して他の組織に転移することもあり、その場合には患者の健康へのリスクが大きくなる。また、化学療法は健康な細胞にも有害であり、小児がんの治療に使った場合、患者が大人になった時に二次がんの原因になる可能性がある。科学者は、抗がん剤が腫エピジェネティクスの研究で同性愛の遺伝突き止める
同性愛が遺伝的なものであることは知られていたが、なぜどのようにして遺伝するのかが分からなかった。しかし、エピジェネティクスの研究で、エピマークと呼ばれる、遺伝子の発現を制御する一時的遺伝子スイッチが、同性愛の発生に大きく関わっていながらこれまで見過ごされてきたという説が発表された。 2012年12月11日付「Quarterly Review of Biology」オンライン版に掲載された研究論文は、性に関わるエピマークは通常は世代間で遺伝せず、従って、世代ごとに「消去」されるはずだが、間違って消去されずに父から娘に、または母から息子に遺伝してしまうと同性愛になるのではないかとしている。進化論の立場から言うと、同性愛の遺伝はダーウィンの自然淘汰の原則からはずれ、成長することも生き残ることもできないはずだが、同性愛そのものはほとんどどの文化の男または女の間でごく一般的に見られる。また、これまでの研究で、同性愛者が多く生まれる家族があることが判明しており、性的嗜好を決める遺伝子があるものと考えられてきた。 ところが、同性愛の遺伝学的関係を探す研究が数多くなされてきたにもかかわらず、同性愛の遺伝子として主要なものがまだ見つかっていない。現在の研究では、National Institute for Mathematical and Biological Synthesis (NIMBioS、国立数学・生物学統合研究所) のゲノム内コンフリクト研究作業グループの研究者が、進化論に、遺伝子発現の分子調節研究やアンドロゲン依存性性分化研究の最近の成果を統合することで同性愛の発生におけるエピジェネティクスの役割を説明する生物数理的モデルを創りあげた。エピマークは遺伝子の骨格に添付された情報の層ともいうべきもので、これが遺伝子の発現を制御する。遺伝子には命令情報が書き込まれているが、科学者グループ、幹細胞のランダムな“接着特異点”を再現
シェフィールド大学とカリフォルニア大学サン・ディエゴ分校の科学者は、合成発泡タイプの素材を用いて自然の細胞外基質(ECM)の生成過程を模倣する研究を進めているが、幹細胞が正しく接着するために必要なランダムな接着性を再現することに成功した。この成果は、世界中の科学者にとって、幹細胞の成長に適した接着性のあるバイオマテリアルを創り出す上で非常に重要な手がかりとなるものだ。 これまで、ECM生成過程を再現する実験では接着性のある細胞を均一に広げるだけだったために、幹細胞が組織細胞にまで成熟し最大限度まで成長することを妨げてきた。 大学の生物医学部のジュゼッペ・バタグリア教授は、「この研究では2つのタイプのポリマーを使った。一つは接着性があり、もう一つは接着性がなく、この2つのタイプのポリマーは溶液の中で分離する性質がある。この2つのポリマーの混合液をオリーブ・オイルに加えたバルサミック・ビネグレットのようによく攪拌すると、オリーブ・オイルに相当する接着性のない物質の中に、バルサム・ビネガーに相当する接着性のあるポリマーのナノ・レベルのパッチがランダムに分布する。言い替えれば、この2つのタイプの物質は泡の中で相分離し、ポリマー同士がはっきりとした領域を形成する。この接着性のあるポリマーと接着性のないポリマーを一定の比率で混ぜ合わせると、泡中の接着性ポリマー領域のサイズと分布をコントロールすることができる。泡中の接着性のあるポリマーを少なくすると接着性のパッチが小さくなると同時に分散率も高くなる。人体の中でも自然のECMで同様のことが起きる。実験の大部分を手がけたバタグリア教授とPriyalakshmi Viswanathan博士は、「研究チームが驚いたのは、泡に幹細胞を接着させようとした際に、幹細胞が正しく接着するためには、ランダムな接着性と均一な接着性の双方のバランスがメラノーマのリスクを高める遺伝子変異が見つかる
遺伝性或いは散発性メラノーマは皮膚がんのうちで最も致死性が高いが、この度、それらのリスクを高めると思われる遺伝子が、国際的な研究で同定された。この変異はMITFをコード化する遺伝子に起こる。MITFはメラノーマの生成元となる細胞であるメラノサイト内の、いくつかの重要なタンパク質の産生を誘導する転写因子である。以前の研究では、MITFがメラノーマの癌遺伝子として作用しうることを示唆していたが、現在の研究ではMITFの変異がメラノーマのリスクを高めるメカニズムを識別した。 米国、英国、およびオーストラリアの研究チームからの報告は、2011年11月13日付けのNature誌オンライン版に掲載され、印刷版には、フランスとの共同研究も含めて報告される予定だ。このフランスの研究では、メラノーマのリスクを高める変異が、一般的な腎臓癌リスクも高めることが発見された。「我々は、以前からMITFがメラニン色素の主要制御因子であることを知っていました。そして数年前、SUMO化と呼ばれる科学修飾がMITFの活性を抑制する働きがあることが分かりました。」と、マサチューセッツ総合病院(MGH)皮膚科のチーフであり、MGH皮膚生物学リサーチセンターのディレクターのデイビッド・フィッシャー博士は説明する。「今回発見された変異は、MITFのSUMO化をブロックし、それによMITFの過剰な活動が、メラノーマのリスクを高めると見られています。」と、Nature誌に掲載された論文の共同著者でもあるフィッシャー博士は言う。 「メラノーマ患者の約10%はこの疾患の家族歴をもちますが、複数の世代にわたって起こる真の遺伝性メラノーマは、おそらく全てのケースの1%以下にしかならないでしょう。皮膚黒色種のほとんどが、過度の太陽光の曝露や、より一般的には赤髪遺伝子(MC1R)やMITFなど、中程度の遺伝子変異体による乳がんの転移を抑制するタンパクを同定
乳がんの悪性化の典型であるがん細胞の局所浸潤や転移を抑えるレセプタータンパクが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームにより明らかにされた。Nature Medicine誌2012年9月23日のオンライン版に発表された論文によれば、他臓器にがんが広がる乳がんの転移を抑制する事で知られる、白血球抑制因子レセプター(LIFR)を同定するために、ハイスループットRNAシーケンシング技術が用いられている。「私たちの研究結果によれば、乳がん転移を抑制するLIFRのような、主要な転移抑制因子の発現や機能を回復させる事が有効だと考えられます。」とMDアンダーソン実験放射線オンコロジー学部准教で主著のリ・マー博士は語る。そして、「乳がん死撲滅の障害となっている転移現象に対する、臨床的に証明された予後マーカーや治療薬はまだありません。 多くの転移誘発遺伝子が同定されていますが、臨床応用にまでは到達していません。HER2標的薬とVEDF標的薬は例外で、治療において緩やかではありますが想定通りの成果を出しています。」と付言する。 転移を抑制する遺伝子はほんの数種しか同定されておらず、どれも転移に関与する影響はそれほど強くないとマー博士は言う。しかし、本研究によって明らかにされたのは、LIFRがヒト腫瘍に対して著しい関与を有するという事である。正常なヒト乳房組織の94%にLIFRの高い発現が観察される一方で、非浸潤性乳管がん(DCIS)や浸潤性乳がんでは低減したり無くなったりする。そしてLIFRが観察されないケースでは大変予後が悪性である。マー博士は、本研究の最も重要な部分は、LIFRが、転写補助活性因子であるYAPの機能低減化につながるHippoキナーゼカスケードを昂進させる事により、転移における浸潤段階とコロニー形成段階との両方を抑制するという事だと説明する。「LIFR新テクニックでテロメアDNA構造の力学が明らかに
老化やがんを研究する生物医学研究者は、染色体の末端につながって、これを保護するテロメアに強い関心を持っている。カリフォルニア大学(UC)サンタ・クルス校での新研究では、科学者グループが新しいテクニックを用いて、テロメアの構造的・機械的特性を明らかにした。この成果は新しい抗がん剤開発の方向性を示すと考えられる。テロメアは、染色体の末端につながっており、長いDNA繰り返し配列が特徴である。 そして丁度靴ひもの末端のプラスチック筒のように、染色体の末端を保護している。細胞が分裂するに従ってこのテロメアがどんどん短くなり、最終的に細胞の分裂が止まる。ただし、テロメアそのものは、テロメラーゼと呼ばれる酵素の働きでさらに成長することができる。特に幹細胞のように無限に分裂していかなければならない細胞中ではテロメラーゼの働きが非常に活発である。研究者グループは、腫瘍細胞の中でもテロメラーゼの働きが活発であることが多いとしている。UCサンタ・クルス校の化学生化学准教授のマイケル・ストーン博士は、「私の研究室では、『グアニン四重鎖』と呼ばれるテロメア末端のDNA構造が畳まれたり開いたりする現象に特に注目している。これがテロメラーゼの活動の制御に関わっており、ほとんどのがん細胞が、このテロメラーゼを利用して無限増殖の一助としている。従って、抗がん治療でもグアニン四重鎖を標的にすることが重要だと考えられる。テロメアDNAのグアニン四重鎖構造がテロメラーゼ酵素の機能を阻害していることから、私のチームでは、グアニン四重鎖構造の機械的安定性を突き止めたいと考えている」と語っている。ストーン博士の研究室の大学院生、Xi Long氏が研究プロジェクトを率いており、2種類のテクニックを組み合わせて、グアニン四重鎖構造が開いている時に単一DNAの分子を操作し、観察した。DNA分子を引き伸ばすためには「磁ノーベル賞受賞者、新しいがん研究ターゲットを見つける
コロラド-ボルダー大学バイオフロンティアズ研究所の科学者、トム・チェック博士とレスリー・ラインワンド博士は、Nature誌が2012年10月24日付オンラインで発表した研究論文で、「抗がん薬開発の標的分子は私たちのDNAの末端領域にある」と書いている。2人の科学者の所属するラボの研究者は、特定のアミノ酸パッチを探して共同研究を進めてきた。 染色体内のこのアミノ酸パッチに抗がん薬が結合してブロックするとがん細胞の増殖を妨げるようになるのではないかと考えられている。染色体内のこの位置のアミノ酸パッチは「TELパッチ」と呼ばれ、この部分が変化すると、染色体の末端領域が、がん細胞の成長に必要なテロメラーゼ酵素を活性化することができなくなる。チェック博士は、「これは科学的発見として素晴らしいことで、がんの問題に新しい方向から取り組める道が見つかったと言っていい。すごいのはTELパッチのアミノ酸一つを変化させることでテロメアの成長を抑制できるということだ。この原理をがん治療薬として実現するまでにはまだまだ道は遠いが、この発見から、今までとは違った、できればもっと効果的ながん研究のターゲットが浮かび上がってきた」と語っている。Howard Hughes Medical Investigatorで、1989年ノーベル化学賞受賞者のチェック博士は、バイオフロンティアズ研究所の所長を務めている。 この研究論文共同執筆者は、博士号取得特別研究員のジャヤクリシュナン・ ナンダクマールとアイナ・ワイデンフェルド、コロラド大学生のケイトリン・ベル、Howard Hughes Medical Instituteの主任科学者、アーサー・ザウグ博士。テロメアががん発生で果たす役割は1970年代から研究されてきた。テロメアは、蝶結びのリボンの端のように染色体の端にあり、塩基類の繰り返し配列によって構Laser Scissors と次世代DNAシーケンサーによって全真菌ゲノムの遺伝子活性が明らかに
Laser Scissors顕微鏡と最新のシーケンサーを組み合わせて、ドイツ・ルール大学ボーフム(RUB)の研究チームは、真菌の全ゲノムの遺伝子活性を一挙に解析する方法を開発した。これによってミリサイズの生物体の困難であった小細胞の研究に道が開ける。RUB総合&分子植物学部の研究チームは、小サイズで多細胞真菌の発生や成長の研究に、この方法を適用している。この研究成果はオープンアクセス形式のBMS Genomics誌2012年9月27日号に発表された。多細胞生物では、どの細胞にも同様の遺伝子が含まれているが、活性化(発現)している遺伝子はほんの一部である。この遺伝子発現の差異によって細胞の構造や生理学の多様性が生じるのである。 それ故、遺伝子発現が多細胞生物の発達を理解するために大変重要となるのだ。「植物のような大きな生物体では、遺伝子発現の研究を開始するために十分な材料を揃える必要はありません。しかし微生物の場合には、器官の多くは細胞数が僅かなのに加えて他の組織と融合しており分離する事が困難です。」とミノウ・ノウロウシアン博士は語る。よって、ウルリッチ・クゥーク教授とノウロウシアン博士はレーザーマイクロダイセクション装置と最新のシーケンサー技術を融合させて、僅か0.5?サイズの真菌の生殖機構の発達における遺伝子活性を解析する方法を開発したのだ。レーザーマイクロダイセクションでは、光学顕微鏡下でレーザービームを用いて、対象サンプルの決まった箇所を切断する。このレーザー「ミニカッター」によって、例えば、発生の研究には頻繁に使われる真菌Sordaria macrosporaの生殖組織である子実体を集めて、研究を行なう。研究チームは、この子実体から遺伝子の活性を反映するRNAを単離して使用した。そして「次世代」シーケンサーを用いて、同時に全遺伝子の活性を解析した。ボーフムの2種のゲノム分析法を組み合わせた研究で自閉症を引き起こす免疫系の存在を裏付ける
自閉症を引き起こす遺伝子を突き止めるため、新しいスキームと新しい方法論で取り組んできた研究グループが、いくつかの免疫系関連遺伝経路に撹乱が起きた場合に自閉症スペクトラム障害が起きやすいという証拠を発見した。2012年12月4日付のオープン・アクセス学術誌「PLos ONE」で発表された研究報告は、自閉症に関連するDNA塩基配列変異の分析と自閉症児のいる家族の研究で突き止められたマーカーの分析とを統合することで、自閉症における免疫機能の役割を裏付けている。 PLos One論文の共同筆頭著者、マサチューセッツ総合病院 (MGH) 神経科のVishal Saxena博士は、「これまで他の研究者は、免疫機能が自閉症を引き起こしているとは言っていたが、私たちは、まったく偏見を持たずに取り組み、免疫系が自閉症に関わっていることを突き止めた。何がもっとも重要なのかを偏見なしにデータに語らせるという方法を取った結果、自閉症の背後にある免疫系の機序では、ウィルス感染経路がもっとも重要だということが顕著に現れていた」と述べている。 自閉症児の個人を含む複数の家族の遺伝学的な研究では、ゲノム上のいくつかの位置に遺伝的連鎖が見つかった。従来のゲノムの解読法では、マーカーの位置にもっとも近い遺伝子がその遺伝形質の原因とされているが、それでは、家族によって異なる遺伝子が自閉症を引き起こしていることになる。しかし、Saxena博士の研究チームでは、自閉症には共通した典型症状があり、同じ生物学的過程が影響を受けているのだから、異なる家族であっても、共通の分子生理学的作用が起きているはずだと考えた。ゲノム上のこれらの自閉症関連の位置を含み込んだ遺伝経路を探すため、チームは、「Linkage-ordered Gene Sets (LoGS)」と名付けられた手法を開発した。この手法では、マーカーの位細胞死の決定的瞬間を捉える
Walter and Eliza Hall 研究所の科学者が、世界で初めて、細胞死を誘導するアポトーシス調節タンパクの分子変化を画像に捉えた。この成果は、細胞死の過程について重要な理解の手がかりになるもので、将来には、病気にかかった細胞の生死を管理する新しい種類の医薬の開発につながるかもしれない。管理された細胞死、アポトーシスは、体内の細胞の数の管理調節に重要な役割を果たしている。 細胞死の過程に欠陥があれば、ガンや神経変性症状を引き起こすと考えられており、また、細胞死が適切に行われなければ細胞が不死になり、ガンを引き起こすことがある。一方、ニューロンの細胞死が過剰に起きると神経変性症状になることがある。同研究所構造生物学部のPeter Czabotar博士、ピーター・コルマン教授とその同僚は、同研究所ガン分子遺伝学部のDana Westphal博士と共にこの発見を行い、2013年1月31日付の論文誌「Cell」にその研究論文が掲載された。 Czabotar博士は、「Baxと呼ばれるタンパク質の活性化がアポトーシスを引き起こす重要な事象であることは以前から知られていたが、この活性化の機序はこれまで知られていなかった。細胞死の重要な第一歩は、細胞内の膜、ミトコンドリア膜に孔が開けられることで、一旦これが起きると、その細胞は死滅する。Baxが、このミトコンドリア膜に孔を開ける役割を担っているのであり、このBax活性化の過程を画像におさめることができたことで、細胞死の機序の理解にさらに近づいたと言える」と語っている。Czabotar博士とその同僚は、オーストラリアのシンクロトロンを使い、Baxが、不活性形から活性形に移行する様子を3次元画像で捉えることに成功した。活性形で、Baxがミトコンドリア膜を破り、細胞のエネルギー源を取り除くことで細胞死を引き起こしている。Czaハーバードの研究チームが多目的多機能の「折り紙式」蛍光バーコードを開発
スーパーのレジ係りが、商品パッケージに付いているバーコードをスキャンして客の買い物を処理するように、研究者は高性能の顕微鏡と独自に作成したバーコードを用いて、膨大な数の細胞の同定や疾患部位のマーカー分子の同定の管理に利用する。しかし、そのバーコードは僅かなパターンしかないので、細胞の研究を行う様な一度に多くの情報のラベリングが必要な場合には、対応できない。 ハーバード大学のワイスバイオ工学研究所の研究チームがこの度、新しいデザインのバーコードを開発したが、これは無限に近い配列の組合わせが可能なもので、一度に膨大な生きた情報をコード化できる、過去に無いものとなっている。この方法は、DNAの生来の機能によって自動的に構造化されるもので、2012年9月24日付けのNature Chemistry誌オンライン版に発表され、同年10月に印刷版に掲載された。 「この新しい方法が、蛍光顕微鏡を用いて生物学の複雑系を研究するための分子ツールとなる事を期待しています。」とワイスの研究中心メンバーで同研究の心臓部である「DNA折り紙技術」を開発している共同著者のペン・ユィン博士は語る。蛍光顕微鏡はバイオメディカル領域では過去数十年に渡って「傑作」と言える技術である。判りやすく言えば、今回の発明は、蛍光素子―バーコード―と、研究対象の細胞の或る部位に結合する分子とを一緒にしたものである。サンプルトリガーのそれぞれのバーコードが、赤や青や緑の蛍光を発する事によって、目的の分子がどこにあるのかを提示する。しかし、この技術では使用できる蛍光色が3-4色に限られており、時々色がぼやける。ここにDNAバーコードの意味が出てくるのだ。色のドットが幾何学的模様に形成されたり、蛍光線状バーコードに形成されたり、その組み合わせは無限に近い。研究者たちが観察する分子や細胞の数が増えて行っても、色によって識体細胞遺伝子の変異が片側性巨脳症を引き起こす
片側性巨脳症は稀な疾患であるが、通常対称性を保つ脳の形状が異常化し、片側だけが肥大化する。重度の癲癇を持つ子供によく見受けられるが、その原因は判っておらず、且つ治療法は極めて苛烈であり、肥大化した脳の一部や全てを切り取る手術が行なわれる。カルフォルニア大学(UC)サンディエゴ医学校とハワード・ヒューズ医学研究所の研究者らが主宰する、臨床医と科学者で構成されるチームが、ネイチャー・ジェネティクス誌2012年6月24日のオンライン版に、興味深い論文を発表した。 それによれば、細胞の大きさと細胞増殖とを制御している3つの体細胞遺伝子が新たに見つかったが、これらが変異する事が、どうも片側性巨脳症の原因のようであるが、それらの変異だけに限らないようでもある。新たに見つかった3つの変異は無性細胞で起こる遺伝子変化であるが、これは両親が有していたり、両親から遺伝したりするものではない。UCサンディエゴ医学校とラディ・サンディエゴ子供病院の神経学と小児科学教授であるジョセフ・G・グリーソンM.D.研究室と、UCロサンジェルス・マーテル子供病院の神経外科のギャリー・W・マシェーンM.D.研究室との共同研究チームが示唆するのは、これらの変異遺伝子から発せられるシグナルを、薬剤によって阻害したり弱めたり出来れば、外科手術の必要性を低減させたり、予防的に使用することが可能になるという事だ。 グリーソン博士の研究室では、マシェーン博士が手術した20人の片側性巨脳症患者を対象にして、切除された脳組織とその患者の血液と唾液をサンプルとして、DNAの解析と比較を実施した。「マシェーン博士は1卵生双生児の家族について報告しています。1人は片側性巨脳症ですが、1人は正常なのです。1卵生双生児は完全に同じDNAを継承しますので、疾患のある脳において何らかの変異が発生し、巨脳症の起因となるのではないかとグルコース欠乏が、ガン細胞を殺傷するフィードバックループを活性化させる
正常細胞と比べて、ガン細胞は並外れた量のグルコースを欲しがるので、それによる細胞代謝の変化は、好気性解糖とか「ワールブルク効果」として現れる。研究者は、ガン治療の標的にこの効果を利用できないかと着目しており、代謝状態が変化したガン細胞において、生化学的シグナルがどのように現れるのかを解析している。興味深い研究として、UCLAの分子生物学と臨床薬理学教授である、トーマス・グレーバー博士に率いられる研究チームが、これまでと逆のやり方を採用している事だ。 つまり、グルコースの代謝が、ガン細胞に現れる生化学的シグナリングに、どのような影響を与えるかという事である。Molecular System Biology誌2012年6月26日号のオンライン版に掲載された研究報告によれば、グレーバー博士等は、グルコース欠乏状態が−この状況がガン細胞からグルコースを奪い取ることになる−活性酸素類の蓄積を誘発し、結果としてガン細胞の死滅に繋がる代謝とシグナル経路の促進ループを活性化する事を明らかにした。この活性酸素類は、ビタミンCのような抗酸化物質の作用対象となる、細胞障害の原因分子やイオンなどである。 本研究は、UCLAの研究チームにより行なわれ、代謝とシグナリングの関係をネットワークレベルで明らかにする、システムバイオロジーの実力を実証するものである。そのチームを構成するのは、UCLAの、クランプ分子イメージング研究所、分子医療研究所、カルフォルニア・ナノシステムズ研究所、ジョンソン総合ガン研究所、イーライ・イーディス再生医学ブロードセンター&幹細胞研究所、そして病理学部と医学研究所に所属する多くの研究者たちである。更には、スローン・ケッターリング記念ガン研究所の、神経学部、ヒト腫瘍学部、発症機序プログラム学部の研究チーム、ヴァイル・コーネル医学校薬理学部の研究チーム等と共同研究体制老いたミツバチの脳が若返る
通常若いミツ蜂が行う巣作りを、年を取ったミツ蜂が引き受ける場合、脳の老化が逆行、つまり若返る事を、アリゾナ州立大学(ASU)の研究チームが明らかにした。人の加齢性認知症についての現在の研究トレンドは新しい治療薬の開発にシフトしているが、今回の発見が示唆するのは、社会活動への参加が加齢性認知症の進展を遅らせたり、治療効果を発揮したりする可能性である。 Experimental Gerontology誌2012年5月21日号のオンライン版に発表された報告によれば、ASU生命科学部の准教であるグロ・アムダム博士に率いられる、ASUとノルウェー大学生命科学部の研究チームは、老齢の働き蜂を巣の内部で”社会的”な仕事をさせた場合、脳内の分子構造が変化することを実証した。「以前の研究で、蜂が巣内で蜂の赤ん坊である幼虫の世話をする時は、観察している期間を通して知的能力を維持していました。しかし、養育期間が終了し、巣外へ食料を採取に行き始めると急速に老化するのです。わずか2週間で羽が退化し体毛が抜け、重要な事は、脳の機能−学習機能テストで診断しましたが−が低下するのです。」とアマダム博士は語る。 「そこで私たちは、働き蜂の老化に柔軟性があるかもしれないと考え、もし老齢の働き蜂にもう一度幼虫を養育させたらどうなるかを研究することにしたのです」と同博士は続ける。実験期間を通して、巣から若いナースビー(幼虫に餌を与える蜂)を全て除外して、嬢王蜂と幼虫だけにした。老齢の働き蜂が餌を運んで巣に戻ると、餌取りの活動は幾日か終息した。その後、一部の老齢の働き蜂は餌取りを再開したが、残りの老齢の働き蜂は巣作りと幼虫の世話を開始した。10日後、約半分の老齢の働き蜂が、巣作りと幼虫の養育に携わるようになり、それらの蜂の学習機能は著しく改善したのである。 アムダム博士の国際研究チームは、蜂の学習機能の回復だ関節リューマチにおける遺伝子のエピジェネティックな変化
DNAだけのせいで、私たちの病気に成りやすさや、影響を受けやすくさが決まる訳ではない。昨今の研究によれば、DNAの配列の変化には関連しないようなDNAの変化、つまりエピジェネティクスと呼ばれる変化によっても、配列変化と同じくらいの大きな影響を受ける事が、明らかになってきている。カルフォルニア大学(UC)サンディエゴ医学校・リューマチ・アレルギー・免疫学部の教授であるギャリー・S・ファイアーステイン博士に率いられる研究チームが、通常はガンや胎児発達の分野で研究対象となる、DNAメチル化と呼ばれるメカニズムが、関節リュウマチ(RA)の進行に大きく関与している事を突き止めた。 メチル化応じたエピジェニック変化が、炎症や関節の損傷に関与している事が明らかにされた。研究結果はAnnals of the Rheumatic Diseases誌オンライン版の2012年6月26日号に発表された。 「ゲノミクスの研究が進み、私たちは関節リュウマチの重症度や罹患しやすさ等の理解を、大いに深めることが出来ました。但し、この疾患に関与する多くの遺伝子学的な因子が見つかっていますが、私たちは、例えば瓜二つの双子の一人がRAを患っているケースにおいて、片方が同じように患っているケースは12%から15%に過ぎない事も知っています。この事実は、他に要因がある事を示唆しており、それがエピジェネティックの関与なのです。」とファイアーステイン博士は語る。DNAのメチル化はエピジェネティック変化の一例だが、DNAが2重らせん構造をとった後、4つの塩基のうちの一つであるシトシン(C)のどれかに、メチル基が結合するのである。このメチル化によって、遺伝子の発現が制御されているのだが、ガンの場合はこのメチル化が異常になり、臓器の生育ではメチル化のパターンが重要な役割を果たす。自己免疫疾患において、個々の遺伝子のガン治療薬においてパスウエイを理解する重要性
アメリカモデル生物遺伝学会(MOHB):ワシントンD.C.ガン遺伝学会議で、ポストゲノム時代におけるガン治療薬開発には、パスウエイの理解がより重要であることが確認された。パウウエイとは、細胞内で複数の信号が種々の経路を辿りながら最終的な指示を完了するまでの、順序付けられた一連の機序を指す。モデル生物―ショウジョウバエ、回虫、イーストやゼブラフィッシュなど−はヒトのそれと関連を持つ多くのパスウエイを共有しており、一方で構造が平易なので研究に使い易い。 したがって、モデル生物のパスウエイに焦点を当てることは、ヒトの疾患の治療に有用な新薬の開発につながると考えられる。「進化について調べていくと、ゲノムこそが重要であることが分かります。」と、ブロード・インスティテュート(ハーバード大学と米国マサチューセッツ工科大学が共同で運営する研究施設)の創設ディレクターおよびMIT生物学教授、エリック・ランダー博士(Ph.D.)は2012年6月19日のMOHB:ワシントンD.C.ガン遺伝学会議で語った。 ガン細胞ゲノムにおいて最も重要なのは、ガン細胞が薬剤に対して耐性を獲得していく原因の究明である、とジョンズホプキンス大学ルートヴィヒセンターディレクターおよびハワードヒューズ医学研究所の研究員、バート・ヴォゲルシュタイン博士(M.D.)は6月17日の講演で述べた。単剤における薬剤耐性は「回避できない事柄」であり、ガンの進化の副作用であるとヴォゲルシュタイン博士は述べる。「約3,000もの耐性細胞が、目に見える転移全てに存在するのです。そのため、耐性は有効性の有無に関わらず全ての治療において起きます。これは単剤では回避することが出来ないため、ガン治療には複数の薬剤を組み合わせる必要があるのです。」と、ヴォゲルシュタイン博士は説明した。会議全体を通して、モデル生物におけるガンの進行に関与非侵襲的な、母親の血液解析によって、胎児の遺伝子情報を得る
スタンフォード大学医学部の研究チームが世界で初めて、母親の血液サンプルから胎児のゲノムを解析する事に成功した。この新規的な試みはNature誌2012年7月4日のオンライン版に発表されたが、これは1ヶ月前にワシントン大学から報告された研究と深く関連している。 この研究で用いられた解析技術は、以前にスタンフォード大学のグループが開発したもので、胎児のゲノムシーケンスを行うに当たり、母親の血液サンプルと、母親と父親のDNAサンプルを必要とした。しかし今回の研究では父親のDNAを必要としないので、例えば本当の父親が不明の場合や(米国では10人に1人の割合でそうである)、父親がDNAを提供できない場合や提供を拒む場合も、問題なく胎児のゲノムシーケンスが可能となる画期的な方法なのである。つまりこの方法は、胎児のゲノムシーケンス検査を、通常の臨床検査のレベルに1段階近づける技術と言って良い。 「私たちの興味は、生まれる前に或いは生まれた直後に、治療を施す事が出来る条件が整っているかどうかを、確認しておきたいという事です。このような診断法がなければ、治療法がある代謝系や免疫系の疾患があっても、生まれて暫くして兆候が現れたり、疾患が重篤になったりするまで対処できないのです。」と、工学系研究科のLee Otterson教授職であり、生物工学科と応用物理学科の教授職でもある、本研究の上級著者のステファン・クエーク博士は語る。当時大学院生で現在はImmuMetrix社の上級研究員であるH・クリスチーナ・ファン博士と、現在大学院生であるウェイ・グウ氏が、本研究の共同主著である。この種の技術に掛かる費用は年を追う事に下がっていくので、遺伝病を診断する本診断法も、妊娠第一期で行うことが現実的になるであろうと、研究チームは期待している。実際に彼らは、ゲノムのコード領域であるエキソームだけのシー体重を調節する新たな遺伝子を発見
RGS9-2と呼ばれる脳タンパク質が体重を調節する役割を有することを、ロードアイランド大学薬学科准教授のアブラハム・コボー博士が発見した。コボー博士は、パーキンソン病および結合失調症の治療薬の副作用であるジスキネジアとRGS9-2との関係の研究中に、今回の発見に至った。ジスキネジアとは、身体が無意識かつランダムに動いてしまう運動障害である。研究結果は2011年11月23日付けのPLoS ONE誌に掲載された。 コボー博士および共同研究者達は、RGS9-2を減少させる遺伝子変異を有するヒトのBMI(肥満度指数)が、通常に比べて著しく高いことを発見した。また、RGS9-2タンパク質を生産できぬようRGS9-2遺伝子を除去されたマウスの系統と、野生株を比較したところ、RGS9-2遺伝子を除去されたマウス系統の方が体重も重く、体脂肪率も高かった。反対に、RGS9-2タンパク質が過剰発現された場合、マウスの体重は減少した。 RGS9-2は通常、脳の線条体内で発現される。この部分は運動制御や報酬反応に携わっているため、体重増加は、摂食の報酬反応の増加によるものだとコボー博士と研究員たちは考える。「普通、(体重が増えたため)RGS9-2を除去されたマウスの摂食量の方が多いと 考えられるでしょうが、そうではありませんでした。」と、コボー博士は説明する。「ヒトやマウスやラットでの研究は、RGS9-2が体重の調節因子であることを結論付けました。しかし、我々は摂食行動以外の事に目を向けなくてはならなかったのです。この研究は、線条体がRGS9-2を通して体重を調節する役割を有することを示しました。これは、モチベーションや行動、また報酬反応とは無関係であります。我々は、新陳代謝を通して体重増加を調節するであろう、新しい遺伝子を発見したのです。」と、コボー博士は続けた。コボー博士とチームは、エクソームシーケンシングで感受性遺伝子の同定が可能である
最良の健康状態時と最悪の健康状態時の両極端で患者のDNAを比較することで、耐性および感受性遺伝子を同定することが出来る。このアプローチによって、早期の慢性気道感染症を発症しやすい嚢胞性線維症患者間のDCTN4遺伝子変異が発見された。DCTN4遺伝子はダイナクチンをコードする。このタンパク質は、問題となる微生物を死滅させる為に、分子ベルトコンベアでリソソームと呼ばれる極小の化学タンクに移動する、分子モーターの一部分である。 ワシントン大学(UW)が率いる本研究は、国立心肺血液研究所GOエクソームシーケンシングプロジェクトおよび肺GOの一貫である。これら二つはアメリカ国立衛生研究所の主要研究である。このように“両極端をテストする”方法は、心臓の健康状態など、より一般的な体質の遺伝的要因を明らかにするであろう。嚢胞性線維症患者の易感染性の研究結果は2012年7月8日付けのNature Genetics誌に掲載された。問題となった感染は緑膿菌であった。緑膿菌は一般的に嚢胞性線維症やその他の気道閉鎖障害を持つ患者の肺に感染する日和見土壌細菌である。この細菌は合体してツルツルのバイオフィルムを形成し、肺組織を傷害し、呼吸を妨害する。慢性感染症は、嚢胞性線維症患者間の肺機能および寿命の低下につながる。これらの細菌が正常な肺および免疫機能をもつ人々に、害を与えることは極稀である。 本研究では、緑膿菌感染にもっとも耐性があった嚢胞性線維症患者間にDCTN4変異は見られず、早期の慢性感染症に感染しやすい患者では、DCTN4ミスセンス変異体が少なくとも一つは存在した。ミスセンス変異体が生成するタンパク質は正常に機能しない可能性が高い。本研究レポートの責任著者はUWシアトル公共健康医学部生物統計学准教授のマリー・J・エモンド博士、首席著者はUW遺伝子医学部門小児科教授、臨床遺伝専門医のマソルトクレスの遺伝子情報により、塩生植物のメカニズムが明らかに
中国サイエンスアカデミーのゲノム&発生生物学研究所と、世界最大の遺伝子研究所であるBGIとに率いられる国際研究チームが、野生の塩生植物であるソルトクレス(Thellungiella salsuginea)のゲノムシーケンスと解析に成功した。ソルトクレスのゲノム情報は、適応進化のメカニズム解明と、植物の非生物的ストレスへの耐性の底流を成す遺伝子機能の理解に、新たな道標となるものだ。 PNAS誌2012年7月9日オンライン版に発表された内容によれば、塩性植物は、寒冷・干ばつ・酸化ストレス・塩害などに対して、強い耐性を有する。 サイズが小ささに由来する短いライフサイクル、産生する種子の多さ、小さなゲノムサイズ、効率の良い形質転換等の理由によって、ソルトクレスは、植物学者や遺伝子学者そして育種家等にとって、非生物的ストレス対する耐性研究のための、最善の研究モデルと成り得る。本研究においてソルトクレス(Shandon ecotype)は、Solexa社のペアードエンド法を用いたシーケンス法で、解析された。 ソルトクレスのドラフトシーケンスデータは、カバー率134で読まれている。確定したシーケンスは233.7Mb長で、推定されるゲノムサイズ260Mbの凡そ90%をカバーしており、タンパクコード部位は、合計28,457と推定される。ソルトクレスとシロイヌナズナのエクソンの平均長は同等であり、イントロンの平均長はソルトクレスの方が、シロイヌナズナのそれよりも30%長い。進化学的研究によれば、ソルトクレスとその近縁種であるシロイヌナズナは、凡そ700−1200万年前に分科したと考えられる。ソルトクレスとシロイヌナズナの違いを検討すれば、ソルトクレスのほうが、生育環境の違いや遺伝的相補性の面で大きく異なり、特に特徴づけられるのは、オルソログの発現とゲノムサイズの大きさであろう。明白皮膚ガンの新しい遺伝子モデルが発表される
癌性腫瘍における2種類の抑制因子の関係を明らかにする上で初となる、包括的研究が発表された。発表したのはケンタッキー大学(UK)毒物学およびジェームス・グラハム・ブラウン寄付講座教授、ダレット・セント・クレア博士である。本研究結果は発ガンにおける転写機構への理解を深めることとなるであろう。 本研究は国立ガン研究所よりグラントされ、2011年11月1日付けのCancer Research誌に掲載された。セント・クレア博士と研究チームは、ヒトMnSODプロモーター/エンハンサー分子の元でルシファレーゼ•レポーター遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作成した。そして、7,12-ジメチルベンズアントラセン(DMBA)/12-O-テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)多段階皮膚発ガンモデルを用いて、MnSOD転写の変化を調査した。 マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)は、好気性生物の生存において不可欠な役割をもち、これの異常発現が発ガンおよび治療における腫瘍耐性と関係しているのである。MnSOD制御およびガンにおけるMnSODの役割など、広範な研究が行われているのにもかかわらず、生体内腫瘍形成におけるMnSODの発現変化がいつ、どのようにして起こるのかは未だ解明されていない。現段階での研究結果は、MnSOD発現が皮膚発ガンの初期では抑制され、後期では増加することを示している。MnSOD発現の抑制およびその後の増加は、Sp1とp53の二つの転写因子によって媒介されている。DMBAおよびTPAへの曝露はp53を活性化すると同時に、MnSOD発現を低下させる。この発現低下は、正常皮膚および良性パピローマにおいて、p53を介するSp1のMnSODプロモーターへの結合が抑制されるためである。扁平細胞ガンにおいては、機能性p53の損失によりSp1結合が増加したティーンエイジャーの薬物乱用は脳内ネットワークに起因―大規模臨床研究で明らかに
どうしてティーンエイジャーの中には、同年代の周りの人間がそうしなくても、喫煙を始めたり、薬物に手を出したてみたりするケースが出てくるのだろうか? 過去最大規模で行なわれたヒトの脳の大規模イメージング研究によって−1,896人の14歳のイメージングも含まれている−これまで判らなかった多くの脳内ネットワークの解明に繋がる知見が得られた。ベルモント大学のロバート・ウェラン博士とヒュー・ギャラバン博士は、海外の研究者達の協力も得て、脳内ネットワークの違いによって、一部のティーネイジャーは特異的に薬物やアルコールに走る高いリスクを抱えている事を実証した。単純に脳の働きが他のティーンエイジャーとは違うことが原因で、極めて簡単に衝動的行動を起こすように働くのである。 ネイチャー・ニューロサイエンス2012年4月29日号オンライン版に発表された報告によると、昔からある「鶏が先か、卵が先か?論争」に似た、薬物乱用以前に特異な脳のパターンを示すのか、或いは薬物乱用によってそうなるのかという疑問に、答えを与えるものなのだ。「特異的な脳パターンの違いは、薬物乱用以前に観察されています。」とベルモント大学精神医学科でウェラン博士の研究仲間であり、IMAGENプロジェクトのアイルランド分科会の主席研究員であるギャラバン博士は語る。このIMAGENプロジェクトとは、ティーンエイジャーの精神衛生や異常行動の研究を行なう欧州の大規模な臨床研究プロジェクトであり、今回のテーマでデータを収集した。明らかになった事は、眼窩前頭皮質を含む脳内ネットワークの活動減退が、青年期の早い時期に、アルコール、喫煙、違法ドラッグ等に手を出す行動と関連しているということだ。「このネットワークが他の子ども達のように働かない子ども達もいます。」とウェラン博士は話すが、その子ども達は更に衝動的行動を取りがちなのだ。喫煙や飲酒が分子プロファイリングによって明らかになった原発および再発卵巣ガンの違い
卵巣ガン再発の際に腫瘍検体を分析する必要がある、ということが2012年2月号のMolecular Cancer Therapeutics誌に掲載された研究で明らかになった。本研究チームは分子プロファイリングと呼ばれる診断技術を使い、原発および再発卵巣腫瘍における分子特性の違いを調べた所、特定のバイオマーカーにおいて著しい違いを発見した。 本研究は原発および再発卵巣ガンにおける患者対比研究で広範なバイオマーカーパネルを試験した初めての研究であり、患者に対して再発治療に関するインフォームド・ディシジョンを行なう際には、再度腫瘍組織を分析することの重要性を強調している。卵巣ガンは婦人科ガンの中でも極めて致命的なものであり、米国女性のガン関連死ランクでは第5位にあたる。再発した卵巣ガンの治療は、治療法を選択する分子プロファイリング技術があるにも関わらず試行錯誤で進められることが多いのである。 卵巣ガン再発の際にプロファイリング技術が利用されるが、その際に分析される腫瘍検体は初診の時に得たものであることが多い。このような原発腫瘍のプロファイリングは再発腫瘍における変化を考慮しておらず、そのために化学療法後の生存期間の改善に有効に機能していなかった可能性も考えられる。「これらの結果は、再発卵巣ガン治療における新たな可能性を強調しています。本研究は、治療法を決定する際に役立つかもしれない腫瘍の特徴が、疾患の経過とともに変化する可能性があるということを我々に認識させてくれました。」と、本研究の責任著者、クリアリティ財団サイエンスディレクターのデブ・ザチョウスキー博士は語る。ザチョウスキー博士およびクリアリティのサイエンスアドバイザー、シダーシナイ女性ガンプログラムのベス・Y・カルラン博士と研究チームは、クリアリティおよびダイアン・バートン・データベースによって収集されたデータを分ビタミンEの本来の機能が明らかに
肌の老化防止のために皮膚に塗ったり、運動選手が疲労回復のために服用されたりするビタミンEの本来の身体に対する機能が最近の研究によって明らかになってきた。ビタミンEは強力な酸化防止剤として多くの食品に使用されており、細胞膜の損傷を修復する作用を助ける機能がある。細胞膜は外部の刺激から細胞を護り、細胞への物質の出入りをスクリーニングする機能を有しているが、このあたりの本来的な機能がジョージア健康科学大学(GHSU)の研究チームによって明らかにされ、2011年12月20日付けのネイチャー・コミュニケーション誌に発表された。食事をしたり、運動したりする日常の活動によって、細胞膜は様々な損傷を被り、ビタミンEがその修復に重要な役目を果す事が最近の研究で解ってきた。もし筋肉細胞が修復されなければ、筋肉は筋ジストロフィーで観察されるのと同じように、衰弱し死滅する。細胞膜の修復が覚束無い事に起因する他の疾病例には糖尿病があり、筋肉の脆弱化が主訴の一つとなっている。「特に意識しなくても、私達は毎日ビタミンEを体の中で使っていますが、それがどのような役割なのかは、よく知られていません。」とGHSUの細胞生物学者で本論文の主筆であるポール・マックネール博士は語る。少なくとも役割の一つは明らかになったのだ。「1世紀前の動物実験ではビタミンE欠乏症が筋肉疾患に関係していることは分かったのですが、それがどのようにして起こるのかは今まで謎のままでした。」と、マックネール博士は言う。 細胞膜の修復不足が筋消耗や筋壊死を引き起こすということが、マックネール博士がビタミンEの研究に興味を持った理由である。ビタミンEが修復を助ける方法は複数存在する。一つ目は酸化防止剤として、体内での酸素の使用に由来し、修復作用を阻害する副産物の産生を防ぐ事に役立つ。二つ目は、脂溶性の性質により、細胞膜内に潜り込む事が出来るの全エクソーム・シーケンシングによって代謝性疾患の原因を突き止めることが可能である
患者のゲノムをシーケンシングし、疾患の原因を突き止める。このようなルーティンは未だ実施されてはいないが、遺伝学者チームはこれに近づきつつある。2012年2月2日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌に掲載されたケース・レポートの研究チームは、血液検査をゲノムの“エグゼクティブ・サマリー”スキャンと組み合わせて行うことにより、重度の代謝性疾患を診断することが可能であると示している。 エモリー大学医学部およびサンフォード・バーナム医学研究所の研究チームは、“全エクソーム・シーケンシング”を用いて、グリコシル化疾患を患う男児(2004年生まれ)の疾患原因である変異を突き止めた。男児の疾患原因であるDDOST遺伝子変異は、従来のグリコシル化疾患では見られておらず、本ケースが初めてであった。全エクソーム・シーケンシングは、科学者達が疾患の診断のために最も重要であると考えるゲノム部分をより早く、そしてより安く読み込むことができる。本レポートでは、2011年に初めて臨床診断用に提供された全エクソーム・シーケンシングが、診療に用いられ始めていることを示している。 エモリー遺伝学研究所は現在、臨床診断サービスとして全エクソーム・シーケンシングを提供する準備を勧めている。疾患の原因となる変異のほとんど(約85%)が、ゲノム上のタンパク質をコードする部分で起こると推定されている。全エクソーム・シーケンシングは、このゲノム上のタンパク質をコードする部分だけを読むため、他の99%は未読のまま終わる。ケース・レポートの男児の変異は、サンフォード・バーナム医学研究所遺伝性疾患プログラムディレクター、ハドソン・フリーズ博士と研究チームにより同定された。疾患の原因である遺伝子を同定したのは、エモリー大学医学部人類遺伝学准教授およびエモリー遺伝学研究所ディレクタ急性リンパ性白血病(ALL)の新たな治療法が開発される
急性リンパ性白血病(ALL)における最初のセラノスティック薬が開発された。開発したのはケースウェスタンリザーブ大学医学部の研究チームであり、2012年3月5日付けのACS Chemical Biology誌に掲載された。ALLは小児がんの最も一般的なタイプであり、米国で新たに診断される数は毎年約5000人にものぼる。本研究知見は、小児腫瘍学における新たなセラノスティック薬の開発の提示となるであろう。 セラノスティックとは、テスト結果に基づいた治療法と診断テストを組み合わせた、治療システムのことである。これらの新種の薬は、新たな診断マーカーおよび治療方法の開発への第一歩となるであろう。 「本発見は、ALLに対し化学生物学的アプローチを採用しています。我々が人工的に開発したヌクレオシドは、小児白血病患者のためのテーラーメイド治療を可能にする、新しいクラスのセラノスティック薬なのです。診断と治療をセラノスティックに組み合せる事によって、イオンチャンネル、ガン細胞を死滅させ、正常な細胞に影響を与えない、患者にとって最適な投与量を計ることが可能になります。この選択性により、従来の抗がんヌクレオシド関連で見られた一般的な副作用を最小限に押さえることが出来るのです。」と、ケースウェスタンリザーブ大学医学部准教授、アンソニー・J・ベーディス博士は説明する。本疾患と関連している酵素、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)は、バイオマーカーとして機能し、またALL患者の90%において過剰発現されている。ベーディス博士と研究チームはTdTを使用し、新しい選択性抗がん剤を開発したのである。研究チームは2つの人工ヌクレオシド、5-NITPおよび3-Eth-5-NITPの抗白血病機能を調べ、これらに蛍光色素でタグ付け出来るよう、新たな官能基を配置した。これらのタグ付けされたヌクレオチドはプロテアソームが機能する詳細なメカニズムが解明された
生細胞におけるタンパク制御機構の最も重要なメカニズムについて、アメリカ・エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所(バークレー研究所)とカルフォルニア大学(UC)バークレー校とが、新たな研究成果を発表した。プロテアソームとして知られるタンパク質は、除去するようにマーキングされたタンパク質類を、同定し破壊する機能を有している、タンパク制御装置とも言える物質である。研究チームは、そのメカニズムに使用されている「制御因子」に至るまで、詳細な解析を行なった。 この制御因子によって調節される活性は、細胞内タンパク質の品質制御だけでなく、DNA転写、DNA修復、免疫防御システムなどを含む広範な生命活動にとって、極めて重要な役割を担っている。「電子顕微鏡によるイメージングと、タンパク翻訳を解析する最新の装置とによって、サブナノメーターレベルの計測が可能になりました。その技術を用いれば、プロテアソームを制御する因子であるタンパク複合体の相対的な結合位置を含む、詳細な構造が分かるようになりました。」と研究チームの共同主席研究員で生物物理学者であるエバ・ノガレス博士は語る。「これによって、プロテアソームがどのようにして不要なタンパクを認識し破壊するのかを、そして細胞内に存在するどのようなタンパクでも調整する機能を、分子構造の観点から解析できるようになりました。」と、もう一人の共同主席研究員で論文責任著者である生化学者アンドレアス・マーチン博士は説明する。 そして「プロテアソームの生化学的機能の多くと、サブナノメーターレベルの分子構造も既に研究はされているのですが、まだ不明な部分が多く、これまでは、どのタンパクユニットがどこへ行き、どのユニットと相互作用を持つのかは分かっていませんでした。今回の研究結果によって、プロテアソームの持つタンパク制御装置としての機能をより詳しく解明すること免疫システムを潜り抜ける、死を招く菌体
カンジダ・アルビカンスのような日和見感染を起こす菌体が、宿主細胞の免疫応答状態を感知し、それに対応することで、宿主の免疫防護システムから首尾よく逃れていることを明らかにしたのは、ルイジアナ州立大学(LSU)ヘルスサイエンスセンター・ニューオリンズ校の微生物学・免疫学・寄生虫学の准教授であるグレン・パルマー博士だ。同博士はイタリアのペルージャ大学のルイジナ・ロマーリ博士が率いる国際研究チームのメンバーでもあった。 これまでの研究と異なり、この研究では感染事象を両面の視点から、即ち、菌体と感染相手の細胞との相互作用の観点から行なわれた。研究結果はネイチャー・コミュニケーション誌の2012年2月21日オンライン版に発表された。そして、この感染プロセスが、従来考えられてきた以上に、精巧且つ複雑であることが判ってきた。報告によると、C.アルビカンスは免疫信号を出す宿主の生体分子であるインターロイキン(IL)17Aと結合することにより、健康な宿主細胞が有する免疫応答に耐えられる環境を得て、宿主の免疫反応に対応するのだ。IL-17Aは通常、菌体の内在的な毒性を加減することによって、疾患の感受性を調節している。 本研究では、IL-17Aの振る舞いを精査し、菌体は生き延びるだけではなく、疾患の進展にも関与していることが明らかになった。「それはまるで菌体が私たちの免疫システムの防護作戦に聞き耳を立て、どうやったら宿主の組織内で対応し生き延びるかを画策しているようなものなのです。それはまた、この“日和見主義者”が免疫不全患者に致命的なダメージを与えようと、どのタイミングで感染してやろうかと様子を伺っている状態でもあるのです。」とパルマー博士は説明する。疾患予防対策センターによれば、ヒトに感染するカンジダ酵母菌は20種類以上あり、最も多いのがカンジダ・アルビカンスである。カンジダ酵母菌は飼い犬に感染したエプスタイン・バー様ウイルスが、ガンを誘発
90%以上の人は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に対する抗体を有している。そうでない人にとってこのウイルスは、短核球症や「キス病」の病因としてよく知られているが、その他にもこのウイルスは、ホジキンスリンパ腫、非ホジキンスリンパ腫、そしてバーキットリンパ腫等のより重篤な疾病にも関与している。このEBVがリンパ腫の発症にどのように関与しているのかは未だ明らかにはされていないが、このたび、ペンシルバニア大学獣医学部とペンズ・ペレルマン医科大の研究チームが、「人間の最も良き友人」に対してエプステイン・バーウイルスが感染し、リンパ腫の発症に関与していることを実証した。 この研究によれば、EBVの感染においては、飼い犬は人間と同様の感染メカニズムを有しているようだ。これは、EBVが特定の条件の人にガンを発生させるメカニズムを解明する手がかりとなる。「これまでは、EBV感染とウイルス関連疾患研究のための、大型動物のモデルがありませんでした。そしてウイルス感染研究の多くはヒト以外の霊長類で行なわれ、大変コストが掛かっていたのです。」と本論分の上級著者で、ペンシルバニア大学獣医学部の医薬・病理バイオロジー学准教授であるニコラ・メイソン博士は語る。そして「犬が人間と同じようにこのウイルスに感染することが判明したので、EBVが関与する疾病の、長期的な研究モデルとして活用できるようになったのです。」補足する。 ペンシルバニア大学獣医学部のメイソン教授の研究チームメンバーは、シンフン・フアン博士、フィリップ・コザック氏、ジェシカ・キム氏、ジョージ・ハビネザ・ヌディクエーゼ氏、チャールス・メーデ氏、アニタ・ゴーニエ・ハウザー氏、そしてリーマ・ペイテル氏等である。同チームはペレルマン医科大・微生物学教授のエール・ロバートソン博士と共同研究体制をとっている。彼等の研究成果はjournalゴリラのゲノムシーケンスが明らかに
大型類人猿のものでは最後となる、ゴリラのゲノム配列がデコードされ、2012年3月7日付けのNature誌オンライン版に掲載された。今まで、人間に最も近い動物はチンパンジーであると確信されていた。しかし、本研究チームがデコードした結果、ヒトゲノムにより近いのはゴリラのゲノムであることが明らかになった。大型類人猿の4種(ヒト、チンパンジー、ゴリラ、そしてオランウータン)全てのゲノムを比較することが可能になったのは、今回が初めてある。本研究は、ヒトの起源についてユニークな見方を提供すると同時に、ヒトの進化および生物学の研究、またゴリラの生物学および保全のための重要なリソースになる。 「我々の祖先が、我々に最も近い生物と分岐した点を明らかにするためには、ゴリラのゲノムが重要なのです。また我々ヒトと、霊長類最大のゴリラの遺伝子の類似点や相違点を探ることが、本研究により可能になりました。」と、責任著者、ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のアリウィン・スカリー博士は語る。「我々はニシローランドゴリラの雌、カミラのDNAを使用してゴリラのゲノム配列を組み立て、他の大型類人猿のゲノムと比較しました。また、ゴリラの種間遺伝子差異を探るため、他のゴリラからもDNAシーケンスをサンプリングしました。」と、スカリー博士は説明を続ける。研究チームは進化過程における重要な遺伝的変化を見つけるため、ヒト、チンパンジー、そしてゴリラから11,000以上もの遺伝子を調べた。 ヒトとチンパンジーは遺伝子ゲノムの大部分を介してお互いに最も近いが、そうではない点も複数発見された。ヒトゲノムの15%はチンパンジーよりもゴリラに近く、チンパンジーのゲノムの15%はヒトよりもゴリラに近い。3種全てにおいて知覚、聴覚、そして脳の発達に関する遺伝子が加速進化を示しており、特に人間とゴリラでこれが著しく見られた。「ガン治療薬が糖尿病リスクを増加?
ラパマイシン(免疫抑制薬)を投与された一部の患者が糖尿病の様な症状を発症する理由を、Dana-Farberガン研究所の科学者チームが発見した。ラパマイシンは臓器拒絶反応を防ぐために幅広く使用され、さらに抗がん作用もあり、老化を遅らせる可能性もあるため、ガン治療への使用を臨床治験中でもある。しかし、患者の約15%は薬剤服用後にインスリン抵抗性およびグルコース不耐性を発症し、この理由は今まで不明瞭なままであった。 2012年4月4日付けのCell Metabolism誌に掲載された本研究では、通常のマウスでラパマイシンを与えられたものはインスリンシグナル伝達が低下するため、血糖を調節することが困難であったと報告されている。インスリンシグナル伝達はYY1タンパク質の活性化により引き起こされる。このYY1タンパク質が筋肉から“ノックアウト”された動物は、糖尿病の様な症状を発症することはなかった。この結果は、正常なインスリン機能の損失の原因がYY1にあることを表している。 本知見の意味することは、医師はラパマイシンと共に抗糖尿病薬も与えることを考慮するべきであると言う事だと、本研究の責任著者、ペレ•プレイグセルペル博士は述べる。本結果はさらに、ラパマイシンの寿命を延ばす効果を期待している者達に対して注意を促す。ラパマイシンおよび関連化合物のアンチエイジング効果については「糖尿病リスクの増加を考慮する必要がある」と、プレイグセルペル博士は語る。ラパマイシンはイースター島で発見されたバクテリアに由来する薬剤であり、移植患者の免疫抑制剤として1999年にFDAにより認定された。その作用の一つが、細胞内のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)シグナル経路の抑制である。mTOR経路は細胞の成長、増殖、生存および運動性に欠かせないものであり、mTOR活動の上昇は多くのガンに見られ「自殺行為に関与する遺伝子」を確定
特定の遺伝子が自殺行為と関連することが、やカナダ嗜癖・精神保健センター(CAMH)の最新の調査で実証され、複雑多岐に渡る自殺の要因について新たな知見が得られた。これにより将来的には医師が遺伝子治療によって自殺予防措置を講じる事が出来るようになるであろう。これまでの研究では、神経システムの構築に関与している脳由来神経栄養因子(BDNF)が自殺行為と関連していると考えられてきた。 これまで報告されていた11の研究結果に、総合失調症の症例を含む独自の研究データを加えたて検討した結果、CAMHの研究チームは、精神医学的診断が成された患者においてはBDNF遺伝子のメチオニン(Met)変異が、バリン(Val)変異と比較してより強く自殺行為を行なうリスクと関連している事を確認した。 本研究結果は「国際神経精神薬理学(International Journal of Neuropsychopharmacology)誌オンライン版2011年8月30日号に発表され、1,202人の自殺未遂者を含む3,352人の調査結果から成っている。この発表はたまたま10月2-8日の「精神疾患啓発週間」と10月8日の「国際精神保健デー」と同じタイミングとなった。「私達の発見は、自殺予防を治療する為に、この目的遺伝子を検査し治療する方法の開発につながるでしょう。そして将来的には、多くの研究者たちが私達の結果を追試し発展させて、自殺のリスクの高くなっている人を確定診断する方法が可能となるでしょう。Met変異によりBDNF遺伝子の活性が低下すると自殺行為に走るリスクが増加すると考えれば、BDNF活性を上昇させる化合物を開発すれば解決できます。」とCAMH神経科学研究所長のジェームス・ケネディ博士は語る。 自殺者の凡そ90%が少なくとも1つの精神衛生疾患を有していることを研究者たちは指摘している。本研究で採用ヒト腸内ウィルスの遺伝的変異が進化の元であった
腸内細菌がヒトの健康や代謝および疾患を調節する上で重要であることが、様々な証拠と共に注目されてきている。しかし、細菌はその役割の一部でしかない。これらの細菌に感染するウィルスもまた、ヒトを形成していくと言っても過言ではない。2012年3月6日付けのPNAS誌に掲載された本研究は、ペンシルベニア大学医学部ペレルマン学校微生物学教授、フレドリック・D・ブッシュマンが主導したものだ。健常者の腸内に存在するウィルスのDNA(virome:ヴィロム)をシーケンシングした本研究では、12人の便から約480億個のDNA塩基、または遺伝子のビルディングブロックが収集された。 研究チームはこれらのブロックをパズルピースの様に組み立て、ウィルスゲノムを再現した。個人ごとに数百から数千の異なるウィルスが集められ、それら一つを除いた全てが、研究チームが予想した通りバクテリオファージ(バクテリアだけに感染するウィルス)であった。異なる一つは、1検体のみに観察されたヒト病原体のヒトパピローマウィルスであった。 バクテリオファージは多くの細菌にとって天敵のようなものであるが、ヒトのミクロビオームにおけるこれらの役割はごく最近研究され始めている。大学院生、サムエル・マイノット率いるブッシュマン博士の研究チームは、研究対象である12人のヒト検体のウィルス数の違いを調べるため、配列の違いが最も顕著である塩基の広がりを探した。研究チームの調査の結果、51の高頻度可変領域が12人の間で同定され、驚くことにこれらは逆転写酵素遺伝子に関連していたのである。一般的にHIVなどのレトルウィルスの複製と関連付けられている逆転写酵素は、RNAをDNAにコピーする。研究しつ尽くされている逆転写酵素であるボルデテラ・バクテリオファージの高頻度可変領域、BPP-1との配列および構造的類似性を有する領域が、51領域中29領新たな乳ガン感受性因子がエクソーム・シーケンスによって発見される
XRCC2遺伝子に稀に起こる突然変異が、乳がんのリスクを高めることが判明した。2012年3月29日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌に掲載された本研究は、乳がんの病歴をもち、なおかつ現在知られている乳がん感受性遺伝子変異を持たない家系を調べたものである。本研究はハンツマンがん研究所(HCI)研究員およびユタ大学(U of U)腫瘍医学准教授、ショーン・タブチギアンPh.D.、ユタ大学皮膚学教授およびHCI研究員、デイビッド・ゴルガーPh.D.、そしてオーストラリア、メルボルン大学病理学教授、メリッサ・サウジー教授の3人の共同主任研究者によって行われた。 「我々は、乳がんを引き起こす遺伝子突然変異のリストに新たに1つを加えました。この新たな知見によって乳がん診断が改善され、患者の生存率も増加することでしょう。 さらに、ガンには至っていなくとも、この変異を持つ人々の役にも立ちます。なぜなら自分がリスクにあることを知った上で、ガンにならない生活を心がけるか、早期発見することが可能になるからです。」と、タブチギアン博士は語る。XRCC2はさらに、化学療法における新しいターゲットを提供する。「PARP抑制剤と呼ばれる薬が、特定のDNA修復パスウエイに遺伝子変異を持つガン細胞を死滅させることが可能だと思われます。そしてXRCC2はBRCA1やBRCA2のようにこのパスウエイに入っています。そのため、XRCC2変異による乳がんの患者には、PARP抑制剤治療が効く可能性が高いのです。」と、タブチギアン博士は続ける。タブチギアン博士によると、乳がんのケースの多くは病歴のあまりない家系に起こるという。突然変異および乳ガン感受性因子における配列多様性の組み合わせによるものは、家系リスクのわずか30%である。「これまでのところ、臨床診断のほとんど骨髄移植がレット症候群の症状を改善
2012年3月18日付のネイチャー誌オンライン版に、レット症候群モデルにおける免疫機能が障害された細胞を、骨髄移植(BMT)によって置き換える試みの結果が掲載された。レット症候群マウスモデルを用いた研究結果では、小児期症例の重篤な症状の多くが改善され、例えば、呼吸障害や動作障害の改善や寿命の延長などが観察された。小グリア不全におけるMecp2タンパクの機能を精査し、「レット遺伝子」にコードされる事を明らかにしたのは、バージニア大学医学部の主任研究者ジョナサン・キプニス博士とその研究チームである。彼らは神経学的症候群に対処する初めての研究手法の提唱者といえる。 レット症候群が示す最も顕著な症状は、自閉症スペクトラム障害であり、Mecp2遺伝子のランダム変異によって引き起こされ、おびえ退行が始まる6カ月−18か月齢の女児に最も多く発症する。発症した子供たちは、言語機能と手先の機能を失い、レット症の進行と共に、運動機能が損なわれていく。呼吸障害、パーキンソン病様震え、強い不安感、消化・循環器障害、広範囲にわたる自立神経失調、そして整形外科的異常などの症状が観察される。患者の寿命のほとんどは成人するが、多くが車いすに座りっきりで、食事はチューブを必要とし、コミュニケーションもできず、これらが一生続くのだ。 キプニス博士は神経学者としての予見から、レット症候群に注目したのである。「医科学的興味から研究を始めたのですが、」と同博士は話を切り出す。「レット症候群における、神経学的な機能と免疫システムの関連性を研究することに夢中になりました。骨髄移植療法が症候群の様々な症例に期待されるので、私達は全力で実験に取り組んでいます。」脳の大部分はいくつかのタイプのグリア細胞で構成されており、多様性のある複雑な機構には、神経細胞の成長とメンテナンスを司り健康を維持する機能も含まれている。VSVウィルスが膵臓ガン治療に効果的であると動物実験で証明される
2012年3月付けのVirology誌に掲載された研究によると、膵管腺癌マウスにウィルスを腫瘍内投与した所、膵腫瘍の成長が阻害され、根絶された。ただし、いくつかの腫瘍はこの治療にかかわらず成長を続けたため、ウィルスに対する耐性も証明された。膵臓ガンの約95%は膵管腺癌(PDAs)である。PDAは最も致命的な悪性腫瘍の一つで、患者の5年生存率は8-20%でしかない。ノースカロライナ大学シャーロット校のバレリー・Z・ゼリシュビリ教授率いる研究チームは、膵腫瘍に対する数種類のウィルス、特に水疱性口内炎ウイルス(VSV)の実験を行った。 これまでの研究から、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、そしてレオウィルスを含むいくつかのウィルスが膵臓ガン細胞を死滅させるために使用できと動物実験で実証されている。VSVはそのような腫瘍退縮ウィルスとなる性質をいくつか持っているのである。まず、VSVの複製では、感染するガン細胞が特定の受容体を発現する必要がない。そのため、他のウィルスとは異なり、ほとんど全てのガン細胞に感染することができるのである。第二に、複製は宿主細胞の細胞質内で起こるため、正常な宿主細胞がガン性のものに変わるリスクがない、とゼリシュビリ教授は言う。第三に、このウィルスのゲノムの扱いはとても容易であり、外来遺伝子の発現レベルを調節することが実際的である。そうなればガンに対するウィルスの特異性およびそれを死滅させる能力を高めることが可能になる。第四に、他のいくつかのウィルスと違い、ヒトはVSVに対する既存免疫をもっていない。 本研究ではいくつかのVSV変種におけるガンを死滅させる潜在力を、臨床的関連性をもつ13のPDA株細胞でテストした。この株細胞は原発腫瘍および肝臓やリンパ節転移の両方を含み、全てヒトから得られたものである。これらをアデノウィルス、センダイウィルス、そしハンセン病におけるT細胞活性の新たなパスウエイが見つかる
UCLAの研究チームが、T細胞を活性化させる機能の新たなメカニズムを正確に同定した。T細胞とは、感染源と闘う事が主たる役目である白血球の一種だ。2012年3月25日付けのネイチャー・メディシン誌のオンライン版に掲載された論文によると、感染箇所に現れる免疫細胞である樹状細胞が、ハンセン病の病原菌と言われるMycobacterium leprae(ハンセン病菌)と闘うために、より特異的な機能を獲得する様子が、論じられている。 樹状細胞は軍事行動における偵察機のように、進入してきた病原菌の重要な情報を提供し、T細胞が活性化する契機となり、より効果的な攻撃が出来るようにする。樹状細胞は、強い免疫反応に重要な役割を担い、感染箇所におけるT細胞の数に応じて強固な免疫反応が生じることは、既に理解されていた。しかし、樹状細胞がどのようにして感染源に応じて、特異的な応答様式を獲得していくのかは、よくわかっていなかった。研究チームは、NOD2と呼ばれるタンパクが、インターロイキン32という細胞シグナル分子を活性化させ、単球という一般的な免疫細胞を誘起して、情報伝達に特化された樹状細胞へと分化させることを明らかにした。「感染と闘う樹状細胞による、この機能のパスウエイが、初めて明らかにされたのです。感染症の治療を進める上で大変重要になると考えられます。」とUCLAデイビッド・ケッフェン医学部皮膚科学のポスドクであり、本論文の主筆であるミルジェム・シェンク博士は語る。 この研究を進めるに当たり、健常人ドナーやハンセン病ドナーから提供された血液由来の単球を用い、ハンセン菌と共培養を、或いは、ハンセン病菌に含まれており免疫システムの活性化に関与するとされる、NOD2とTLR2とを誘発する抽出成分と共培養を行なった。これらのタンパクが、異なる免疫レセプターをどのように活性化させ、感染した菌体の認遺伝子導入法による鎌状赤血球症の治療が、現実性を帯びてきた
ワイルコーネル医科大の研究グループが、βサラセミア症と鎌状赤血球貧血とを遺伝子治療するための新規的な方法のデザインを完成させた。更に、治療前に各患者の治療応答を予め予測する診断方法も、このチームは開発しているのだ。2012年3月27日付けのPLoS ONE誌に発表された研究成果によると、重篤な赤血球不全症に関連する疾病に対して、新しい治療戦略を提供するものだ。 「この遺伝子治療技術は多くの患者を治療できる可能性を秘めています。特筆すべきは、ほんの僅かな血液サンプルがあれば、予め患者をスクリーニングして治療応答の予測を診断することも出来るのです。」と、ワイルコーネル医科大遺伝准教授で、この研究を主宰するステファノ・リベラ博士は語る。3カ国から集まった17人の研究チームを率いる同博士の説明では、ベータグロビン正常遺伝子の疾患細胞への導入と、正常ヘモグロビンの産生の増加との関連性を証明する初めての試みであり、これがうまくいくかどうかが、長い間に渡る赤血球不全症治療の課題であったのだ。これまでのところ遺伝子治療は、βサラセミア症患者に対してフランスで1例行なわれているだけだが、リベラ博士の研究グループは本方法の方がより顕著な効果が得られると期待している。鎌状赤血球症患者が、この遺伝子治療の治験を受けたケースはまだ報告されていない。βサラセミア症は遺伝性疾患であり、ベータグロビン遺伝子の異常に起因する。この遺伝子は、赤血球に含まれるヘモグロビンタンパクの重要な部分を形成するもので、ヘモグロビンは生命活動に必要な酸素を全身に運ぶのが役割である。 リベラ博士のチームが開発した遺伝子導入技術は、導入されたベータグロビン遺伝子の活性が維持されるので、より治療効果があるベータグロビンタンパクを供給することが出来るのだ。「サラセミアの不全は、赤血球内においてベータグロビンタンパクが産生エピジェネティック・マーカーの安定に必須である卵子タンパクがみつかる
母親の卵子に存在するタンパク質、TRIM28が受精後特定の化学修飾、または特定の遺伝子上エピジェネティック・マーカーを保存するために必要不可欠であると、A*STAR医学生物学研究所(IMB)の国際研究チームが発表した。本研究は2012年3月23日付けのScience誌に掲載され、不妊症におけるエピジェネティクスの働きを研究するスタート地点になると思われる。これまでの研究では、核の初期化およびインプリンティングの両方が、胚の生存および成長にとって不可欠であると示されてきた。 しかし、初期の胎児期における、これら二つのプロセスの複雑な関係を管理するメカニズムは、今まで明確にされていなかったのである。DNA上のエピジェネティック・マークのほとんどは、受精後すぐに消されてしまう。核初期化とよばれるこの消去プロセスは、初期の 胚細胞があらゆる細胞型に発展できるように、両親からの遺伝子をリセットするのである。一方、母親と父親からの特定の遺伝子上のエピジェネティック・マークのいくつかは保存されなければいけない。これらの遺伝子は“インプリント”と言い、胚の生存のために重要である。これらのインプリント遺伝子の適切な発現が、正常な胚の成長につながるのである。 インプリント遺伝子のエピジェネティック・マークが保護されなかった場合、重度の胚発達異常が複数起こる。IMB責任研究員、デイボー・ソルター博士およびバーバラ・ノウルズ博士は、遺伝的に同一の近交系マウスを研究に使用し、TRIM28欠損卵子から生じた胚は受精後どれも生き残らなかった事を見せた。胚は発生の様々な段階で死亡し、異なった発達障害をもっていた。単一遺伝子の欠如による遺伝性疾患をもつ個人間では一貫して似たような障害が見られるが、母性TRIM28欠損マウスでは遺伝的に同一であるのに異なる奇形が見られた。これらの知見および核初期化に家族性パーキンソン病の新たな遺伝子変異を発見
パーキンソン病の原因と考えられる遺伝子の変異が新たに発見された。この変異はパーキンソン病の罹患者が多いスイスの大家系を対象として最新のDNA配列解析技術を用いて調査研究した結果判明した。この研究はフロリダのメイヨクリニックキャンパスの神経医学者グループが主宰し、米国・カナダ・欧州・英国・アジア・中東等の共同研究グループを加えて行なわれ、American Journal of Human Genetics誌2011年7月15日号に発表された。「この発見はパーキンソン病の研究に新しい道を作ったのです。私達が発見した新たな遺伝子変異はどれもがこの複雑な疾患を読み解く助けとなるし、新たな治療法の可能性も秘めているのです。」と共同執筆者のズビグニュー・ゾレック博士は話す。 研究チームが見つけたこの変異は、細胞内でタンパクを再利用するサイクルに関与するタンパクVPS35内に存在し、これがこのスイスの家系にパーキンソン病をもたらす原因になっている。変異したVPS35タンパクは細胞内で必要なタンパクを再利用する機能が抑制されているので、それが原因となって、パーキンソン病患者やアルツハイマー患者の脳に見られるような異なる構造のタンパクが生成されるのだろうと、共同執筆者であるフロリダのメイヨクリニックの神経医学者オウエン・ローズ博士は説明し、更に「実際、アルツハイマー疾患ではこの遺伝子の発現が抑制される事が観察されており、細胞内でタンパクの再利用が阻害されれば他の多くの神経変性疾患を誘発します。」と語る。 メイヨクリニックが行なった共同研究の成果として、6つの遺伝子変異が家族性パーキンソン病に関与している事は明らかになった。ゾレック博士はパーキンソン病研究の世界ネットワークを構築しており、その多くはメイヨクリニックで研究経験を持つ。本研究の主筆であるチャールス・ビラリーニョ・グレル博ショウジョウバエの遺伝子がガン治療薬に。
ロヨラ大学シカゴストリッチ医学部の研究チームが、ショウジョウバエの遺伝子の特徴を生かした抗がん薬を開発している。新しく発見されたショウジョウバエの遺伝子は、癌発生およびいくつかの先天性欠損症において、重要な役割を持つ二つのヒト遺伝子の複合体に対応しているものである。このショウジョウバエの遺伝子が進化し、二つに分化されたのだ。 この分割のおかげで研究が容易くなり、そのおかげで新しい癌治療薬の開発が進むと考えられる。本研究は2012年6月1日付けのDevelopment誌に掲載された。「これは進化が我々に残したプレゼントです。」と、本研究の責任著者、アンドリュー・K・ディングオール博士は語る。本論文はその発見の重要性から、American Association for the Advancement of Science (AAAS)誌より出版されているScience Signaling誌の“エディターズ・チョイス”に選ばれた。正常細胞は、発達中に骨細胞や筋細胞など特定のタイプに分化し、整然とした方法で複製する。このプロセスは遺伝子やホルモンなどにより正しく制御されている。 これらの遺伝子の二つが、MLL2とMLL3である。対照的に、癌細胞は制御不能な分化と複製を繰り返す。2010年以来、複数の癌がMLL2およびMLL3の突然変異と関連していることが発見されており、それらには、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、腎臓がん、膀胱がん、そして髄芽腫などが含まれる。また、MLL2およびMLL3の突然変異が乳がんおよび前立腺がんに関与しているという証拠もある。これら2つの遺伝子は互いに似通っており、15,000個を超える塩基対で構成され、この数は一般的な遺伝子構造の10倍の大きさとなっている。これらの遺伝子は非常に大きく複雑なため、研究するのが困難なのである。ショウジョウバエホジキンリンパ腫患者の生存率を改善する新薬登場
副作用の非常に少ない新抗がん薬が、他の治療に失敗して後がないホジキンリンパ腫患者の生存率を劇的に改善している。ロヨラ大学医療センター腫瘍内科医、スコット・E・スミス博士(M.D., Ph.D.)が、この新薬ブレンツキシマブベドチン (Adcetris®)の生存データを17回欧州血液学会で発表した。スミス博士はロヨラ血液系腫瘍研究プログラムのディレクターである。この多施設共同研究は、幹細胞移植後に再発した102例のホジキンリンパ腫患者を含む。 患者の32%は腫瘍が無くなり、40%は少なくとも腫瘍が半分以下に縮小した。さらにこの他の患者の21%においてもいくらかの腫瘍の縮小が見られた。新薬への反応を示さなかったのは、患者のわずか6%であった。患者の65%は24ヶ月後も生存しており、その内25%はガンの進行が皆無であった。「これは、これまで予後が思わしくなかった患者にとって勇気付けられる結果です。」と、研究チームは語る。ロヨラの患者、ミシェル・サレルノはブレンツキシマブベドチン治療の前に二つの幹細胞移植(一つは自分の幹細胞を使用し、もう一つは兄弟から提供された細胞であった)および複数の化学療法に失敗していた。 しかし3、4回の輸液後、彼女は悪寒や発汗、および高熱と全身の痒みのような痛みから解放された。また、化学療法に共通する副作用もほとんど経験していない。「私は髪も保ち、嘔吐を感じたこともありません。輸液し、家に帰るととても快い感じがするのです。」と、彼女は語る。標準的な療法は、30分の点滴を3週間毎行う。患者は通常、48週間で16用量受け取るのである。ヨロラはこれまで約500用量を患者60人に投与している。「我々の患者の多くはこの療法が効いています。」と、スミス博士は語る。ホジキンリンパ腫は免疫系の癌である。患者のほとんどは、特に初期段階で診断された場合、化学療法や放加齢と乳ガンリスク増加の細胞ベースの関連性
乳ガンのリスクが50歳以上の女性において劇的に増加することは周知の事実であるが、増加における細胞生物学的な原因は謎であった。この謎に対するいくつかの答えが、米国エネルギー省(DOE)ローレンス・バークレー国立研究所(バークレー研究所)の研究チームによって発表され、将来的な予防対策の可能性も出てきたのである。 バークレー研究所の細胞・分子生物学者、マーク・ラバージュ博士によって率いられた研究により、老化によって多能性前駆細胞が増加することが示された。多能性前駆細胞は成体幹細胞の一種で、多くの乳ガンの原因であると考えられている。また、腫瘍抑制因子機能があると考えられている管腔細胞の基底となる筋上皮細胞が老化によって減少することも示された。「これは、乳ガンに対する年齢的な脆弱性の細胞生物学的な理由を理解するための大きな一歩です。老化プロセス間の上皮における細胞および分子的変化を定義し、これらを機能的にアッセイすることも可能である今、我々は老化によるこのような状態を回避、もしくはリバースさせる方法を模索するべきです。」と、著者であるラバージュ博士は語る。 本研究は2012年5月2日付けのCancer Research誌に掲載された。米国では毎年20万人以上の女性が浸潤性乳ガンと診断され、内約75%が50歳以上である。内分泌プロファイルや乳ガン細胞を取り巻く微小環境の変化を含む、加齢に伴う生理的変化は、ガンリスクの増加と関連付けられている。しかし、その背後にある基本的な細胞メカニズムの説明は無い。「サンプルへのアクセスが制限されるため、ヒト組織における老化過程を研究するのはとても困難なのです。老化過程の細胞または分子基盤を取得しようとした研究のほとんどはイーストやハエ、ワーム、およびマウスなどのモデルを使用しました。これらのモデルは寿命が短く、遺伝子がコントロールされているDNA複製タンパクが有糸分裂と発ガンにも関与
生物学的遺伝はDNA複製を基盤とし、何百何千もの異なるDNAサイトを、同時に正確に複製する工程である。もしこの複製工程が予定通り行なわれない場合、細胞に必要な材料が欠けたり不要な材料が増加したりし、不完全な遺伝子複製の特質として、出生異常や発ガンが見受けられる。ノースカルフォルニア大学(UNC)医学部の研究チームは、DNA複製に必要なタンパクであるCdt1が、細胞分裂後期の有糸分裂に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この発見により何故多くの発ガンが、遺伝子の不完全さだけでなく、通常46個の染色体数の増減にも起因するのかが説明できる。 研究結果はネイチャー・セルバイオロジー誌2012年5月13日号のオンライン版に発表されたが、DNA複製タンパクがこのような2つの役割を有することを明確に示したのは世界初である。「私達はこのタンパクの役割は既によく知っていると思っていました、つまり、複製するDNA上に複製開始を準備するタンパクをロードするのだと考えていたのです。ところがこのタンパクは、もう一つの顔を持っていて、細胞サイクルの別の部分を相補的に司っていたのです。」とUNC医学部の生化学、生物物理、薬理学准教授で上級著者であるジーン・クック博士は語る。 細胞サイクルは幾つかの工程から成り立ち、複製によって2個の娘細胞に分裂する事によって、細胞の成長をおこなっている。4つの明確な工程から成り、それらは;G1 期(Gap 1)、S 期(DNA 合成)、M期 (有糸分裂)、そしてG2 期(Gap 2)である。クック博士のチームはG1期、つまりCdt1が遺伝子上にDNA複製を行なうタンパク類をロードするサイクルに注目している。本研究でクック博士のチームは、細胞内でCdt1が相互作用を有する他のタンパクをスクリーニングした。同博士が期待したことは、複製開始に関与する他の要素アワのゲノムシーケンスが完了する
世界最大のゲノミクス機関であるBGIは、張家口農業科学アカデミーとの共同研究でアワのゲノムシーケンスおよび解析を完了した。アワはキビの中で二番目に最も広く植えられている種であり、本研究はアワおよびキビ作物の遺伝子改良のための貴重な資源となる。研究結果は2012年5月13日付けのNature Biotechnology誌に掲載された。アワは半乾燥地域において食料および飼料となる貴重な穀物であり、中国では最大の作物である。 アワはゲノムサイズが小さく(〜490M)、遺伝的多様性に富み(〜6,000種類)、自家受粉をし、生殖質データが完全で、さらに形質転換のプラットフォームが効率的であるため、比較ゲノミクスおよび遺伝子機能研究のための重要なモデルとして役立つのだ。また、アワはスイッチグラスやネピアグラスなど複数のバイオ燃料草と進化的に近いのである。「伝統的な品種は収率が低く、アワの栽培および利用を大幅に制限していました。張家口農業科学アカデミーのジアイ・ザオ博士によって最近開発されたハイブリッド品種は、アワの収率を倍増しました。私はこの研究により、これまで軽視されてきた作物の収率や穀物品質を上げ、ストレス耐性を持つ新品種開発のためにゲノムシーケンスが役立つ良い例になると思います。」と、BGI副社長、ゲンギュアン・チャン博士は語る。 本研究でBGIの研究チームは“Zhang gu”と呼ばれる中国北部のアワの一系統の次世代シーケンシングおよびde novoアセンブリを行った。最終ゲノムアセンブリは423Mbになり、38,801ものタンパク質コーディング遺伝子が予測され、内~81%が発現していた。研究チームはまた、他系統のA2およびZhang guとA2の交雑種であるF2個体群の再シーケンシングによって識別された遺伝子マーカーを使用して高密度遺伝子連鎖マップを作成した。A2はウィルスの変異種を迅速に検出する「バーコード」が見つかる
リーズ大学・生物科学部のジュリアン・ヒスコックス博士とジョン・バール博士は、ポルトン健康保健局(HPA)と共同で、細胞内のマーカー特性の変化によってウィルス感染の重症度を測る、ウイルスバーコードバンクを確立した。現在研究チームは、インフルエンザウイルスと幼少期の喘息発症の契機となるヒトRSウィルス(HRSV)とについて、それらの複数の異なる種をバーコードする研究を行なっている。 「インフルエンザのような感染症は、感染したウィルスが私達の体の細胞で増殖し、その細胞自身がウィルス増殖生産工場のような役割を果たしてしまうのです。感染によって細胞内のタンパクバランスが破壊されます。あるタンパクは過剰に生成され、あるタンパクは生成量が減少します。どのタンパクの生成量が影響され、どのような割合なのかを調べることによって、どんなウィルスの感染症であるのかがわかるバーコードとなるのです。」とヒスコックス博士は話す。 2009年に大流行したブタインフルエンザと季節性インフルエンザを比較して、感染した肺細胞の状態の違いを解析したこの研究結果は、Proteomics誌の2012年5月14日号に発表された。研究チームはSILACという名の標識化技術を用いてサンプル中の何千もの異なるタンパクを比較解析した。この技術では同時に質量分析装置が用いられ、ウィルス感染によって最も影響を受けるタンパクを同定し、それらを、疾患情報を与える“分子指紋”として解析したウィルスによると、ウィルス感染によって影響を受けるタンパクのうち、細胞複製に関わるタンパクが最も多かった。「ブタインフルエンザは季節性インフルエンザと同様な機序で感染し、それは我々の“バーコード”に反映されています。もしこの試験法を使っていたなら、2009年のブタインフルエンザ大流行の際に、その重症度が低い事を明らかに出来たので、あれほどの世糖尿病とアルツハイマーに関与する遺伝子
近年明らかになって来た事だが、糖尿病患者にとって悪い知らせであるのは、糖尿病はアルツハイマーの高いリスクを有しているという事だ。ニューヨーク市立大学(CCNY)の研究チームがそのメカニズムを明らかにした。生物学教授のクリス・リー博士の研究チームは、一つの遺伝子がこの二つの疾患を関連させていることを明らかにした。 博士らが見つけたのは、アルツハイマー病においてよく見受けられる遺伝子で、これはインシュリンのパスウエイにも関与している。Genetics誌2012年6月号に掲載された記事によれば、このパスウエイの破壊が糖尿病に直結する一方で、この発見は、両方の疾患の治療ターゲットとしても考えられる。「2型糖尿病患者は、高い認知症リスクを有しています。インシュリンパスウエイは多くの代謝経路に含まれており、同時に神経系の健康を維持する機能も有しているのです。」と、リー教授は、この関連性が決してとんでもない話ではない事を説明する。 アルツハイマーの病因は未だ不明な点は多いとは雖も、死後の病因の判定基準としては、患者の脳の破壊が進んだ部分に、粘着性のアミロイドタンパク斑が観察される事となっている。ヒトにおいて、「アミロイド前駆タンパク(APP)」遺伝子やAPPを処理する遺伝子が変異する事によって、家族性アルツハイマーの症例が出てくる。リー教授とその研究チームはAPL-1と呼ばれるタンパクを精査したのは、このタンパクがC-エレガンス(線虫)に由来する、ヒトアルツハイマー遺伝子の完全なモデル遺伝子から生成されるからである。「私たちが見つけたのは、線虫モデルにおいて、APP遺伝子の変異により代謝経路の幾つかを破壊され、線虫の成長が減退した事です。私達は、どのように線虫モデルAPPが複数の代謝経路に作用し、そのAPPがどのようにインシュリンパスウエイを阻害するのかを調べ始めました。」とリ初めてトカゲのゲノム配列解析が完了
グリーンアノールトカゲの全ゲノム配列解析が世界で初めて完了し、その敏捷で活動的な性質も遺伝子に帰する事が出来るようになった。哺乳類と爬虫類の祖先が3億2000年前に分化した後、爬虫類と対応する部分の遺伝子が人間や哺乳類でどのように進化してきたかを洞察する手掛かりとなるであろう。ゲノム解析プロジェクトの完了結果は2011年8月31日付のNatureオンライン誌に発表された。このグリーンアノールトカゲ(Anolis carolinensis)はアメリカ南東部に生息しており、鳥以外では爬虫類として初めてそのゲノム配列が明らかにされた。 ブロード研究所の研究グループは類人猿を含む20以上の哺乳類の遺伝子配列解析評価を実施したが、爬虫類の遺伝子の全体図は未だ解析が進んでいなかった。「ヒトのゲノムがどのように進化してきたかを学習するには時には一定の距離を置かねばならない。過去に見てきたものを遥かに超える新しい発見があるだろう。」と第一共同著者であり、ブロード研究所の脊椎動物ゲノム研究グループの研究科学者であるジェシカ・アルフォルディ博士は語る。 トカゲはどちらかと言えば鳥に近く(鳥は爬虫類とも言えるが)全ゲノムが解読された他のあらゆる生物よりも役に立つ情報を有する。哺乳類のように、鳥類と爬虫類は羊膜類であり、水中に卵を産む必要は無い。「研究者達は脊椎動物の系統樹のいろんな位置に属する動物の遺伝子解析を実施してきましたが、トカゲについては試みていません。注目すべき系統ブランチなのです。」とブロード研究所の脊椎動物ゲノム研究所科学部長でNature誌上席著者であるカースチン・リンドブラッド・トウ博士は話す。400種を超えるアノールトカゲがカリブ海、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカの島々に生息し、進化の研究を実施するには最善のモデルと考えられる。それらのトカゲの生態については既コウモリ狂犬病ウィルスの進化率は地域によって異なる
コウモリ狂犬病ウィルスの進化速度は宿主の生態に深く関わっている、と米国ジョージア大学(UGA)疾病管理・予防センターおよびベルギー・ルーベン、カトリック大学(KU)の研究チームが発表した。本研究は2012年5月17日付けのPLoS Pathogens誌に掲載され、宿主の地理的環境がウィルス進化率の最も正確な予測値であることを説明している。熱帯・亜熱帯のコウモリ種は、温帯地域に住むコウモリのウィルス変種よりも4倍速く進化するのである。「広く分布している種属は、地域によって異なる行動を見せます。 熱帯のコウモリは年間を通して活動的なため、狂犬病ウィルスの感染が毎年多く起こります。一方、冬眠中のコウモリのウィルスは伝染する機会を6ヶ月も失う可能性もあります。」と、本研究のリーダー、UGAオダム生態学準学士、ダニエル・ストリーカー博士は語る。宿主の生態とウィルスの進化率との関係を理解することは、インフルエンザなど多地域にわたり起こり、複数の宿主種に感染するウィルスの伝染ダイナミクスや、ウィルスの人為的変化による伝染ダイナミクスなどを理解することにつながる。本研究チームによる知見は、異なる環境および環境の変化に応じていつ狂犬病ウィルスが伝染するのか、公衆衛生局の立てる予測に役立つかもしれない。 しかし、そのためには狂犬病ウィルスのゲノムおよびコウモリの越冬生態の研究がさらに必要であるとストリーカー博士は述べる。「ウィルスの進化が早い場合、ウィルスゲノムの重要な部分に大きな遺伝的多様性を生み、宿主をシフトすることができるかもしれません。狂犬病に関してはこれが何なのか知られていないため、それを識別することが鍵となります。同様に、気候変動がウィルスの進化をスピードアップするかどうかを理解する前に、環境の変化が宿主の生態や行動にどのような影響を与えるのかを知る事が必要なのです。」とウイルス発電という新しい方法
靴の裏に装着された紙のように薄い発電機によって、歩きながら携帯電話が充電できれば素晴しいではないだろうか?この夢のようなシナリオに現実味が出てきたのだ。米国エネルギー省ローレンス・バークレイ国立研究所(バークレイ研究所)が、無毒性のウイルスを利用して機械的エネルギーを電気に変換する発電方法を開発した。 小さな液晶画面であれば動作させる程度の発電容量は既にテスト済みだ。特別に作製されたウイルスを内包した郵便切手サイズの電極を指でタッピングするのが、発電の方法である。ウイルスがタッピングによるエネルギーを電気に変換する。これは、生物材料による圧電デバイスを用いて電気を起こす、世界で初めての発電システムである。圧電デバイスは機械的ストレスに呼応して、電荷を固体内に蓄積する。狙っているのは、ドアの開け閉めや、階段の昇り降りなどの日常活動から生じる「振動」を集めて電気にする、マイクロデバイスの開発である。もし簡単なマイクロサイズのデバイスが出来れば尚良いので、フィルム内に整然と並ぶようなウイルスを活用できれば、大変都合が良いことになる。「自己組織化」は、いろいろ注文の多いナノテクノロジーの世界では、引っ張りだこの技術と言えるであろう。 研究チームの成果は、ネイチャー・ナノテクノロジー誌2012年5月13日号の特集記事として掲載された。「更なる研究は必要ですが、私達の研究は、ウイルス発電を基盤とした個人レベルの発電システムや、ナノデバイスで使用する作動装置など、様々な用途を実現するための第一歩となるでしょう。」とバークレイ研究所生物物理科の指導教官でUCバークレイ校生物工学科准教である、セウン・ウー・リー博士は語る。同博士と共同で研究を行なっているのは、バークレイ研究所材料科学科の研究者でUCバークレイ校の材料科学と工学と物理学の教授であるラマムーシィ・ラメッシュ博士と、バーマイクロRNAの標的を捕まえる新技術
miRNAとは、遺伝子の小片であり、遺伝子のオンとオフをどのタイミングで行なうかを調整しており、ヒト細胞は何千ものマイクロRNA(miRNA)を産生していると考えられている。miRNAは正常細胞のコントロールに重要な役割を持っている一方で、疾患にも関わっている。例えば、ある腫瘍では産生量が増加し細胞の増殖に関与する。 miRNAが健康や疾患にどのように関与しているのかをより良く理解するには、どのmiRNAがどの遺伝子に作用するのかを正確に知る必要がある。とは言え、その数は膨大であり、例えばたった一つのmiRNAが何百もの遺伝子を制御しているのである。miR-TRAPを使えば、細胞内でmiRNAが標的としている遺伝子を直接同定することが簡単にできる。この技術は、サンフォード・バーンハム医学研究所(サンフォード・バーンハム)の教授でプログラムディレクターであるタリク・ラナ博士とその研究チームにより、2012年5月8日付けのAngewandte Chemie誌国際版で初めて明らかにされた。「この方法は、様々な生理学的条件化におけるいくつもの疾患のmiRNA標的を発見するのに利用できます。 miR-TRAPはRNAフィールドのギャップを埋める橋のようなもので、ガンのような疾患の理解を助け、裏に潜む遺伝子学的な標的を基にして、診断法や治療法を明らかにするのに役に立ちます。新しいハイスループットRNAシーケンス技術によって、多くのmiRNAとその標的が判るようになることは大変重要です。」とラナ博士は語る。miRNAはDNAに直接結合して遺伝子発現をブロックするのではなく、メッセンジャーRNA(mRNA)に結合してブロックする。mRNAは通常DNAの情報を細胞核から細胞質へ運び出し、そこで配列情報はタンパクへと翻訳される。続いてこれらのmRNAに、RNA由来サイレンシング複合体網膜血管新生症のアンチセンスオリゴ新薬の候補
血管新生を起因とする疾患の新規的な治療薬を開発しているスイスの企業Gene Signal社が、2012年5月8日、フロリダ州フォート・ローダーデイルで開催された2012 ARVO 年次大会において、脈絡網血管新生症の新薬候補aganirsen(GS-101, 点眼薬)の霊長類モデル試験が、良好な結果を示した事を発表した。Aganirsenの局所投与によって血管新生の成長と漏出を阻害出来る事が、このモデルにおいて確認され、加齢性黄斑変性症(AMD) や虚血性網膜症のようなヒトの脈絡網血管新生症における新薬候補の役割が強調された。 Gene Signal社のaganirsenは、アンチセンス・オリゴヌクレオチドで、2012年には角膜の進行性血管新生症の治療薬としてのフェーズ?試験を完了する予定である。網膜疾患の治験は2012年の第二四半期から開始される。 「この治験では、aganirsenが、血管由来タンパクIRS-1の発現を阻害することによって、網膜における血管新生の形成に対処する機能を有する事を、実証しようとしています。重要なことは、この阻害機能は、正常な血管新生は邪魔しないことなのです。効果的な新たな血管新生阻害剤の要望は、複数の眼疾患に処方し易い事であり、今回の実証データが役に立つと信じています。」と、インフォマティックスを担当しているRxGen社のマシュー・ローレンス博士は注釈する。AganirsenはIRS-1を阻害することによって、病理学的血管新生をブロックする。今日までの治験データでは、進行性角膜血管新生の成長を安全に且つ効果的に抑制することが可能で、更には、角膜移植を必要とする化学熱傷や感染性角膜炎の治療効果も期待できる。「血管新生疾患の局所投与薬は治療方針を根本から変えるものです。これまで処方が困難であった、AMD、虚血性網膜症、そして特定の緑内障オランウータンは、古代ジャンピング遺伝子のホスト
ルイジアナ州立大学のマーク・バッザー博士が、研究員のジェリリン・ウォーカー博士と准教のミリアム・コンケル博士と共同で、現在のオランウータンがAluと呼ばれる1,600万年前の古代ジャンピング遺伝子のホストである事を解析した研究を発表した。この研究は、サイディエゴ動物学協会とシアトル・システムバイオロジー研究所との共同研究で、新しく公開型学術誌として出版されているMobile DNA誌の2012年4月30日号に発表された。 トランスポゾンのサイズは大変小さく、レトロウイルスが行なうのと同じような方法で自己複製する。分子の化石のようなもので、共有されるAlu 因子配列と箇所によって、共通祖先がわかる。しかしこれは不正確なプロセスであり、“ホスト”DNAのセグメントはAlu挿入位置で複写され、標的部位の複製として知られる“足跡”はAlu挿入位置の同定に利用される。「しかしながら、これらの因子のほんの小さな領域だけが新たな複製を行なう“ドライバー”として機能し、ほとんどは不活性であることが判っています。そしてヒトにおいては、違いを明らかにするのは大変困難であることが判っています。 何故ならヒトゲノムでは比較的新しいAluの挿入が沢山見受けられ、同時に、Aluの伝播を簡単に観測できる情報が欠けているので、どのデータも少しずつ違って来るからです。そういう訳で、Aluの“親”や“ソース”を見つける事が困難であり、何百種類もある筈の違いが同じに見えるのです。」と、生物化学科のボイド教授兼Dr.Mary Lou Applewhite Distinguished教授である、バッザー博士は語る。ヒトや他の哺乳類の場合とは対照的に、オランウータンにおける比較的新しいAlu因子の動きは大変遅く、一握りのケースの比較で事足りる。この事こそ、バッザー研究室が以前に明らかにしネイチャー誌で議論さ来診断困難であった疾患が次世代シーケンシングで解明へ
不明瞭な原因により発達遅延や先天性異常を持つ小児患者12人中7人の診断法を見つけるため、最先端の高速遺伝子シーケンシングが使用された。「 我々は12人の患者から比較的確実な診断法を2つ程手に入れられると思っていました。そしてそれにより不確定ではあるが遺伝的な原因を持つ疾患において、シーケンシング法が有効であることを示すことが可能です。 多様な患者の遺伝子解析を行なう方法はこれまで無く、しかも従来の半分の時間で有力な診断を得る事は驚くべきもので、従来の遺伝子診断で結果を得られなかった患者全てのための次世代シーケンシングに新たな道を開くことでしょう。」と、デュークセンター・ヒトゲノムバリエーション分子遺伝学および微生物学教授、デイビッド・ゴールドステイン博士は語る。研究チームはヒトの全ゲノムまたは生理活動を指揮するタンパク質を生産するDNAの一部、エクソームを高速に読み取ることが可能な次世代シーケンシングを使用した。このようなシーケンシングのコストは段々低くなってきており、臨床研究を行うのも可能になって来ている。 本研究は2012年5月8日付けのJournal of Medical Genetics誌に掲載された。「アメリカでは本研究で見られたような発達遅延や知的障害または先天性異常を持つ子供が年間5万人生まれます。これらの子供のほとんどは診断されぬままですが、我々は原因を見つける手助けを組織的に出来るかもしれません。」と、デュークセンター・ヒト遺伝学小児学教授および共同著者、バンダナ・シャシ博士は語る。本研究に関与した家族は、治療不可能または困難な疾患でも診断されることで安心感を示した。「問題の原因を知る事で謎が明らかになり、家族は少しばかり安堵するのです。」と、シャシ博士は語る。シーケンシングツールを使用してより多くの患者を研究すれば、同じまたは類似した遺伝子に変エボラウィルスワクチンの開発に進展
1976年8月26日、ザイール地方(現コンゴ民主共和国)の小さな村ヤンブクで時限爆弾が爆発した。エボラとして知られる糸のようなウィルスが出現し、感染者は出血熱と呼ばれる数々の恐ろしい症状を発症し、約90%が死に至った。地球上で最も致命的な天然由来の病原体の一つと認識されるまでに、時間はかからなかった。そして今、アリゾナ州立大学(ASU) Biodesign Institute(バイオデザイン研究所)のチャールス・アンツェン博士は、ASUとアリゾナ大学医学部(アリゾナ州フェニックス)、そして米国陸軍感染医学研究所(メリーランド州フォートデトリック)の研究者達と共に、この恐ろしいウィルスに対するワクチンの開発に向かって研究を進めている。 この研究結果は、ラリー・ザイトリン博士率いるカリフォルニア州サンディエゴMAPP医薬品の共同研究チームのコンパニオン紙と共に、2011年12月5日付けのProceedings of the National Academy of Science誌にオンライン版に掲載された。 アンツェン博士のグループは、エボラに対する植物由来のワクチンが、マウスモデルで強力な免疫力を発揮することを実証した。この努力が実を結べば、エボラワクチンを米国で使用するために備蓄することも可能である。そうすれば、感染が突発した場合、またはバイオテロで武器化されたウィルスが兵士や社会環境に対して放出された場合などに役立つであろう。有り難い事に、今までエボラ出血熱の大流行は稀であった。しかし、アンツェン博士のような研究者にとってこれはチャレンジを意味するのである:「HIVのような他の致命的なウィルスの発生には、共通するパターンがあり、ワクチンのテストを可能にします。例えば、AIDSワクチンの研究は現在、疾患の発生率が高いタイの2カ所で進行中です。これとは対照的に、エボ変異ではなく低酸素こそがガンの原因
いくつかの癌における制御不能な腫瘍増殖の主な原因は、細胞内の低酸素環境である可能性がある、とジョージア大学の研究が明らかにした。本発見は幅広く受け入れられている‘遺伝子変異が癌の成長の原因である’という説に逆らうものである。「低酸素症、または細胞内の低酸素レベルが、特定の癌タイプの主な原因だとしたら、悪性腫瘍の治療法が著しく変わることでしょう。」と、リージェンツ・ジョージア研究同盟学者、そしてフランクリン・カレッジの生物情報学および計算生物学教授、イン・ズー博士は語る。研究チームは公的データベース内の、七つの異なる癌タイプより集めたRNA(トランスクリプトーム)データを解析した。 そして、細胞内における長期的な酸素不足が癌の成長を促している要因である可能性が高いことを発見したのである。本研究は2012年4月20日付けのJournal of Molecular Cell Biology誌のオンライン版に掲載された。以前の研究では、細胞内低酸素レベルは癌の成長における要因の一つとされてはいたが、主な原因としてはリンクされていなかった。世界中における高い羅患率は遺伝子変異のみでは説明出来ない、とズー博士は述べる。また生物情報学は生物学および計算化学を結合したものであり、癌を新たな視点から見る事が可能であるとズー博士は考える。 遺伝子レベルの突然変異は、ガン細胞に通常細胞に対する優勢力を与えるが、新しい癌の成長モデルでは癌遺伝子の増殖など、一般的な機能不全の存在を必要としない。「ガン治療薬は、特定の変異の分子レベルでの根本的原因叩く設計が成されていますが、ガンはしばしばそこをバイパスしてしまうのです。そのため、遺伝子変異はガンの主な原因でないかもしれない、と我々は思うのです。」と、ズー博士は説明する。これまで多くのガン研究は、特定のガンに関連付けられている、遺伝子変異に対高血圧の遺伝学的原因を追究する
英国レスター大学循環器科学科の研究チームが、高血圧の原因について画期的な研究を行なった。2011年10月31日付けのHypertension誌オンライン版に発表された成果は、ヒトの腎臓内の遺伝子物質を探索し、高血圧に関与すると考えられる遺伝子を発見したというものだ。これにより今後、高血圧の原因を究明する研究に、新しい道が開かれるであろう。腎臓内にヒト高血圧に関与する重要な遺伝子とmRNA、そしてmicroRNAが存在することが明らかにされた。 さらに、高血圧をコントロールするホルモンとして考えられてきたレニンの調節に寄与する2つのmicroRNAも同定された。腎臓が血圧の調節を行うことは昔から知られていたが、そのプロセスにおける重要な遺伝子が発見されたのは、今回が初めてである。これは、大規模で包括的なヒト腎臓遺伝子の発現解析を実施した結果であるが、レニンの発現をコントロールする遺伝子の発見も初めてである。研究グループは、高血圧の男性患者15人と正常血圧の男性患者7人の腎臓から得た組織サンプルを分析し、それらのmRNAとmicroRNAとを比較した。mRNA(メッセンジャーRNA)はDNAからのタンパク生産情報を伝達する単鎖分子である。 遺伝子情報はDNAからmRNA鎖にコピーされ、細胞が必要なタンパク質を作る際に必要なテンプレートを提供する。microRNAはmRNAのタンパク質変換情報の伝達プロセスを調整する非常に小さな分子である。この研究は、レスター大学循環器科学科の循環器学専門臨床講師であり、レスター血圧クリニックのコンサルタント医師、マシージュ・トマゼスキー博士との共同執筆である。「この論文について、私は非常に興奮しています。レニンは血圧調節に関与する最も重要な物質の一つです。それがヒト腎臓内で発現しているという発見は、新しい降圧剤の開発への新しい道を開くカンガルーの遺伝子配列解析が完了
カンガルーは進化系統樹において特異な位置を占めているが、今日までそのDNA配列は解析されていなかった。この度、BioMed Central誌のオープンアクセスジャーナルGenome Biology 2011年8月19日付に、国際研究チームによるカンガルーのゲノムシーケンスが発表された。タマーワラビーと呼ばれるカンガルー種で、その遺伝子に隠されたカンガルー独特の「跳躍」に関与する遺伝子が見つかったようである。 「タマーワラビー遺伝子解析プロジェクトにより有袋類が私たちのような哺乳類とどのように違うのかを理解する事ができるでしょう」と話すメルボルン大学のレンフリー博士はこのプロジェクトを引っ張ってきた人物で、その国際研究チームはオーストラリア、米国、日本、英国、ドイツからの研究者によって構成されていた。タマーワラビーには大変興味深い生物学的特徴があり、例えば、12ヶ月の妊娠期間中11ヶ月は子宮の中で仮死状態である。生まれる時にはたったの0.5グラムの体重しかなく、それから9ヶ月は母親の腹袋に中で護られながら過ごす。研究者たちは、このようなタマーワラビーの興味深い生態にどのような遺伝子が関与しているのかを、配列解析によって手掛かりを掴みたいと考えている。 「跳躍」に関する遺伝子に照準を合わせるのに加え、タマーワラビーが持つ鋭い嗅覚に関与する1,500個の「嗅覚」遺伝子や、大腸菌や病原バクテリアから新生児を守る為に母乳中に抗生物質を生成する遺伝子などの探索が計画されている。レンフリー博士が説明するように、タマーワラビーの遺伝子から教わることは、きっと将来に「人間の疾病治療探索」の役に立つと考えられる。カンガルーの遺伝子を知ることは哺乳類の進化の研究につながる。カンガルーの祖先が少なくとも1億3000万年前に他の哺乳類に分化した事を考えれば、カンガルーのDNA解析は、人類のヒストンの変異が悪性小児脳腫瘍に関与
小児脳腫瘍の中には、稀に脳幹に発生し致死性が高い症例がある。この腫瘍を研究しているグループが、この小児脳腫瘍症例のほぼ80%に共通して見受けられる遺伝子の変異を明らかにしたが、その遺伝子は、これまで腫瘍とは関連していないと考えられてきたものだった。この遺伝子の変異は、他の悪性小児脳腫瘍にも積極的に関与していることが、初めて明らかになってきた。この新たな知見は、聖ユダ子供病院研究所で実施されている、ワシントン大学小児腫瘍遺伝子研究プロジェクト(PCGP)の研究結果である。 2年以内に患者の90%以上が死亡するこの脳腫瘍については、まだほとんど研究が進んでいなかったが、ようやく重要な研究結果が得られたことになる。この、びまん性内在性橋グリオーマ(以下DIPG)の発生は、ほぼ児童期に限定され、脳や中枢神経系に生じる腫瘍の10-15%を占める。「これらの変異を同定することによって、これまでは外科的治療しかなく、効果的な治療法がなかったDIPGに対して、新たな選択的治療ターゲットが見つかる可能性があるのです。」と聖ユダ神経生物学と脳腫瘍プログラムの共同指導教官で、聖ユダ発達神経学部研究員である、スザンヌ・ベーカー博士は話す。 同博士は、2012年1月29日のNature Genetics誌のオンライン版に発表された本研究の責任著者である。DIPGは、呼吸や頭蓋の底部に位置しており、呼吸や心拍などの生命活動の根幹を司る脳幹部に発生する、大変浸潤性が高い腫瘍である。DIPGは外科的治療では治癒しないが、侵襲性の無い画像装置によって正確に診断される。それが理由でアメリカでは、DIPGのバイオプシが行なわれる事は極めて稀であり、結果として研究が進んでいなかった。腫瘍の発生は、遺伝子の正常な活動が阻害された場合に発生し、細胞増殖が野放しとなり、全身に広がって死をもたらす。DNAを細胞インフルエンザウイルスを目標とする人工設計タンパク質
「Science」誌(2011年5月13日号)の記事に、自然界には存在しない新しい抗ウイルス性タンパク質の設計へのコンピュータの活用方法について記載された。この新規タンパク質は、風邪ウイルス分子の特異的な表面を標的とすることが可能である。このようなタンパク質設計が目指すゴールのひとつは、細胞侵入とウイルス再生に関与する分子メカニズムをブロックすることであろう。コンピュータ上で設計した表面を標的とする抗ウイルス性タンパク質には、感染ウイルスの同定や制圧に関連した診断ならびに治療の可能性が示唆された。 本研究のリーダー的な著者は、ワシントン大学(UW)生化学部のDr. Sarel J. Fleishman氏とDr. Timothy Whitehead氏、同大学分子生物学部のDr. Damian C. Ekiert氏であり、彼はまたスクリップス研究所(Scripps Research Institute)の化学生物学Skaggs研究所(Skaggs Institute for Chemical Biology)の出身でもある。 上席著者は、スクリップス研究所のDr. Ian Wilson博士、UWならびにハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute)のDr. David Baker氏である。そのような人工設計タンパク質がウイルス性疾患の診断、予防、治療の際に利用可能であるかどうかを見極めるためには、さらなる研究が求められると、研究者達はコメントしている。抗ウイルス性という特性を有する新しいタンパク質の創出にコンピュータ設計を使用する可能性を示唆している。「インフルエンザは、深刻な公衆衛生上の課題である。また、新しい治療法は、既存の抗ウイルス剤に耐性を示す、あるいは、身体の防御システムを回避してしまうようなウイルスと戦うため全ゲノムシーケンスで疾病メカニズムの同定〜脳性麻痺で苦しむ双子の兄弟に治療の道
2歳の時に脳性麻痺と診断された双子のノア・ビーリイとアレクシス・ビーリイの両親は、生まれた時から我が子に降りかかった苦難を取り除く答えを、ようやく手にする事が出来たと思っている。但しこの双子の問題を解決するには母親の遺伝情報が詳細に調査される事が不可欠であり、手にした答えは「道半端」でもあった。その遺伝子調査はBaylorヒトゲノム解析センターと国中から集まった専門家達の特殊なスキルによって行われる。 Science Translational Medicine誌2011年6月15日号には、Baylor医科大学(BCM)の研究者、サンディエゴ大学とAnn Arborのミシガン大学の解析専門家たちが双子の全ゲノムを解析し、双子の兄や両親の全ゲノムと比較してどのような違いが遺伝疾患の原因となっているのかに照準を合わせ、そして臨床医が遺伝疾患治療を微調整最適化する方法が報告されている。更には、ヒトゲノムの解析が患者個々人の治療の最適化に適用される新たな段階に来ていることも示唆されている。Baylorヒトゲノム解析センター(HGSC)は、ノーベル賞学者であるジェームス・ワトソン博士の全ゲノムを2007年5月31日に最初に公開して以来、個人の全ゲノム解析の先駆者である。その後2010年には、Baylorヒトゲノム解析センター所長のリチャード・ギブス博士とBCM 分子ヒト遺伝学部の副学部長ジェームス・ルプスキー博士とがルプスキー博士の全ゲノムを解析し、同氏が罹患している遺伝性疾患であるシャルコー・マリー・トゥース病のタイプについてその遺伝子変異型を同定した。「Baylor HGSCがワトソン博士の遺伝子を解析した時、私達は全ゲノムの解析が出来る事が判った」と言うルプスキー博士は、「皆が私のゲノムを解析して判ったのだが、何百万もある遺伝子の多様性の中から疾病遺伝子を見つけるに足り白血病幹細胞を死滅させるフィッシュオイル代謝物
フィッシュオイルから産生される化合物は、白血病幹細胞をターゲットにするため病気の治療法につながる可能性がある、とペンシルベニア州立大学の研究者は推測する。「Δ12プロスタグランジンJ3、またはD12-PGJ3と呼ばれるこの化合物は、マウス実験において慢性骨髄性白血病(CML)の幹細胞をターゲットにし、死滅させる事が実証されました。」と、獣医医科学部免疫分子毒物学准教授のサンディープ・プラーブ博士は語る。「D12-PGJ3は、魚やフィッシュオイルに含まれるω3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)から生産されます。過去の研究では、脂肪酸は心血管系や脳の発達に良い影響をもたらし、特に乳幼児の健康に役立つものであると示されていました。 しかし、我々は今回、ω3の代謝体が白血病の原因となる幹細胞を選択的に死滅させる能力を持っている事を、マウス実験で明らかにしたのです。この注目すべき点は、マウスの白血病が無再発で完全に治癒されたと言うことです。」と、プラーブ博士は説明する。今回の発見は2011年2月22日付けのBlood誌に掲載され、研究者達はD12-PGJ3がマウスの脾臓および骨髄中の発ガン性幹細胞を死滅させることが可能だと述べた。 具体的には、この化合物は、白血病幹細胞自身の細胞死をプログラムするp53遺伝子を活性化するのである。「p53は DNA損傷に対する反応を調節し、ゲノムの安定性を維持する癌抑制遺伝子なのです。幹細胞が分裂すれば多くのガン細胞と幹細胞を生産します。そのため、幹細胞を死滅させることは、白血球の癌である白血病においてとても重要なのです。」と、プラーブ博士は説明する。「CMLの現治療法は、白血病細胞の数を低く保つことによって患者の生命を維持します。しかし、この薬は白血病幹細胞をターゲットとしないので、病気の完治は望めません。」と、今回の研究の共同ディレ「真菌1000ゲノム」プロジェクト
推定150万種ある真菌は、生命樹系図最大のブランチの一つでもあり、日常の生活や生態系の機能に、大きな影響を与えている。これは、真菌が、病原体としての機能や物質を分解する作用の保有、また宿主との共生関係の構築など、様々な性質を有しているからである。真菌類を人類の利益のために使用するためには、これらの振る舞い、機能、自然環境や人工環境における相互作用などを、明確に理解せねばならない。カルフォルニア大学・植物病理微生物学の准教授であるジェイソン・スタージック博士は「真菌1000ゲノム」プロジェクト国際チームの一員でもある。 この、5年掛りのプロジェクトは、米国エネルギー省共同ゲノム研究所との共同研究であり、真菌の生命樹系図から1000個の真菌をシーケンスするものである。この研究は、真菌の多様性についての研究者間の理解のギャップを埋める事を目的とし、米国エネルギー省2012年度コミュニティー・シーケンス・プログラムの41個あるプロジェクトの一つでもある。2011年11月3日にエネルギー省のグラントを得た本研究について、「全体的な計画としては、既知の真菌類全てから最低2種のシーケンスを行ない、真菌の生命樹系図のギャップを埋めるのが目的です。 プロジェクトの研究員は、収集されたデータを起点とし、これらの生物種が生存のためにどのように環境を変え利用するのかを、解析します。」とカルフォルニア大学リバーサイド校統合ゲノム生物学研究所の一員である、スタージック博士は説明する。スタージック博士は、オレゴン州立大学植物病理学のジョウィ・スパタフォラ博士と共同で真菌ゲノムプロジェクトを先導している。彼らのチームは共同研究グループと共に、真菌系を選択し、真菌の真菌界における進化や近縁性、及びそれらの遺伝子配列を解析する。 真菌は、死んだ有機物を分解する。これは地球規模炭素循環に欠かせない機能ブルーマーリン乱獲防止に新しい遺伝子マーカー
バージニア海洋科学研究所(VIMS)によって成された「海洋法医学」における新たな発見により、アメリカ連邦シーフード管理局は、カジキマグロの代表格であるブルーマーリンを遺伝子検査して元来生息していた海域を、素早く且つ正確に割り出す事が出来るようになった。この検査は、アメリカのシーフード市場で販売されているブルーマーリンが、大西洋で獲れたものではない事を確認するために、必要なのである。 アメリカにおいては、大西洋やインド洋や太平洋で捕獲されたブルーマーリンを、輸入したり販売したりするのは合法であるが、大西洋産の場合は、民事上や刑事上の罰則規定があり、罰金徴収や現品の差し押さえ、或いはフィッシング許可の取り消しなどが成される。アトランティック・ブルーマーリンの保護条例は、大西洋における過度の捕獲と生息数の激減に対応するためのものである。全長13フィート、体重2,000ポンドに達する、この堂々たるブルーマーリンは、マグロ漁やメカジキ漁に付随して捕獲されたり、レクレーション・フィッシングを楽しむ釣り師達の恰好の対象となる。マーリンはレストランの素敵なメニューになり、カリブ海一帯では魚肉バーベキューの串刺し肉として、或いは魚肉フライの恰好の食材になる。VIMSの研究チームの、大学院生ラウリー・ソレンソン、 分子生物学者ジャン・マックドイウェル博士、そしてジョン・グレイブス教授等は、研究成果を「ブルーマーリン、Makaira nigricansを同定するマイクロサテライトマーカーの分離と評価」として、Conservation Genetic Resources誌(Volume 3, Issue 4, 2011)に発表した。 Ms.ソレンソンは、VIMSウィリアム・アンド・マリーズ海洋科学カレッジの修士論文の一部として、同論文を発表した。グレイブス博士とマックドウェル博士は共同研MeCP2関連の不安症は二つの遺伝子の過剰発現によるものだった
過剰量のMeCP2タンパク質と関連する不安症や行動問題は、二つの遺伝子(Crh[コルチコトロピン放出因子]とOprm 1[μオピオイド受容体MOR 1])の過剰発現によるものであることが分かり、これらの問題を抱える患者の治療への道が開けるかもしれない。そう語るのは、ベイラー医科大学(BCM)の科学者達である。この研究レポートはNature Genetics誌オンライン版に掲載された。 この研究のほとんどは、テキサス州小児病院ジャン•アンド•ダン•L•ダンカン神経学研究所(NRI)で行われた。MeCP2は、タンパク質界での“ゴルディロックス(*1)”である。女性はこのタンパク質が欠けていると、幼い時期に神経障害であるレット症候群を発症する。過剰量にあると、MeCP2重複症候群に至る。この疾患は主に男児が発症し、遺伝子重複を母親から継承するか、まれに散発的に発生する。どちらの場合でも、不安症や社会的行動障害、また行動問題や認知障害が典型的な症状である。 「これは、翻訳過程の良い例です。最初に、MeCP2重複症候群のマウスを探し、その後クリニック内に疾患をもつ患者を探しました。研究所に戻り、MeCP2が実際に患者のフェノタイプに寄与する主な物質であることが分かりました。我々は、この疾患に見られる二つの主な症状に関連している、二つの遺伝子を同定したのです。後に、これらの情報をもってクリニックに戻り、患者の治療法を開発することが出来るかもしれません。」と、BCM分子ヒト遺伝学准教授であり、本論文の著者、ロドニー•サマコ博士は語る。「MeCP2の損失または増加は、数百もの遺伝子の発現に影響を及ぼします。しかし、不安や社会的行動障害を媒介するものが二つの遺伝子であったというのは、驚くべき発見です。」と、BCM分子ヒト遺伝学、神経学、神経科学そして小児科学の教授、フダ•ゾグビ博士脂肪の味を好むのは遺伝子が原因
私たちの舌は脂肪に対して親和性を有するようだと、セントルイス、ワシントン大学医学部の研究チームが明らかにした。遺伝子の変化によって、人は脂肪の味に多少敏感になるのだ。本研究は、脂肪を感知するヒトのレセプターを始めて同定し、食品中の脂肪に敏感な人々もいるであろうことを示唆している。本研究は2011年12月31日付けのジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ誌に掲載された。 研究チームは、CD36遺伝子変異をもつ人は脂肪の存在に、はるかに敏感であることを発見した。「最終的な目標は、食中の脂肪に対する味覚が、人が口にする食べ物や脂肪の量の摂取にどのように影響するのかを明らかにすることです。本研究で私達は、脂肪を感知する能力の個人差を説明する一つの仮説を得ました。それは今回証明されたように、人は脂肪分を摂れば摂るほどそれに対する敏感性を失っていき、そのため同程度の満足感を味わうためにより多くの脂肪分を摂取しなければいけなくなるからということです。食物中の脂肪分を感知する能力が、その人の脂肪分の摂取量に影響するのかどうか、ということを将来的に明らかにする必要があります。なぜなら、そのような影響があるとすれば、それは肥満にも多大な影響を及ぼすからです。」と、ロバート・A・アトキンズ教授医学•肥満リサーチセンター調査官、ナダ・A・アバムラド博士は語る。 CD36タンパク質の産生能力がある人ほど、脂肪分を感知する能力に優れていることが分かった。実際には、最もCD36の産生機能が高い被験者は、その約50%のタンパク質を産生した者よりも脂肪を感知する能力が8倍もあった。被験者はBMI指数が、肥満とされる30以上の21人。被験者はCD36の産生量が高い人、産生量が低い人、そして中間的な人で構成された。実験では、液体の入った3つのカップが用意された。一つ には少量の脂肪油が含まれ、他二つは油ヒトES細胞の5hmCについて全ゲノムマッピングが遂に完了
UCLAの幹細胞研究チームは ES細胞における5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)によるDNA修飾の全ゲノム解析を世界で最初に完了し、主にオン状態或いは活性化状態の遺伝子上に観察される事を発見した。このUCLAイーディスブロードセンター再生医学・幹細胞研究所とイーライリリーの研究チームによる発見は、ガンのような疾患では、特定の遺伝子を制御する事で疾患をコントロールできる事を明らかにするものと考えられる。「ともかく、遺伝子のコントロールはヒトの疾患とガンに大変有用なのです。 ガンは一般的に、腫瘍抑制遺伝子のような遺伝子が不適切に不活性化や変異する事で、或いはオフ状態にあるべき遺伝子がオン状態になる事によって引き起こされます。」とUCLA生命科学部分子・細胞・発生生物学教授のスティーブンE.ヤコブセン博士とハワードヒューズ医学研究所の研究チームは述べる。この研究はGenome Biology誌の7月号に掲載される予定。 5hmCは DNA塩基シトシンにヒドロキシ基のついたメチル基を追加することで生成される。「シトシンに追加されたこのヒドロキシメチル基は、その遺伝子をオンまたはオフにすることが出来る可能性があるため、この分子はエピジェネティクス(DNA配列の変動以外のメカニズムによって起こされる遺伝子発現の変化の研究)において貴重な存在なのです。5hmCはごく最近発見されたため、その機能はいまだ明確に理解されていません。今まで研究者達は5hmCがゲノムのどこに存在するかさえも知りませんでしたが、今ではこの分子がどう機能し、どのような役割を果たしているのか理解することが出来るのです。」と、ジョンソン総合癌センターの研究員でもあるヤコブセン博士は説明する。「私たちは5hmCによってDNAが修飾される事は知っていましたが、ゲノムのどの位置でこの変化が起こっているのかが分か遺伝性稀少疾患の原因はPLCG2変異であった
NIHの研究チームが、稀な免疫疾患を引き起こす遺伝子変異を同定した。この遺伝子変異は血縁でない3家族から見つかり、過度の免疫系障害が特徴的である。症状は免疫不全、自己免疫、炎症性皮膚疾患、および寒冷蕁麻疹が含まれる。本研究は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)アレルギー性疾患研究所、ジョシュア・ミルナー博士および国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)所長、ダニエル・カスナー博士によって進められ、2012年1月11日付けのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された。 発見された突然変異は、免疫細胞の活性化に関与する酵素、ホスホリパーゼCγ2(PLCG2)の遺伝子に起こる。そのため、研究者は疾患状態をPLCG2抗体欠損免疫異常またはPLAIDと呼ぶ。「研究者は稀少疾患の研究をすることで、健康的な免疫システムがどのように機能しているのかを知る手がかりを見つける事ができるのです。さらには、これらの疾患の遺伝的原因を同定することで、これまで原因不明の症状で衰弱して一生を費やしてきた人々のために、より良い管理および治療を提供する可能性が開けます。」と、NIAID所長アンソニー・S・フォウチ博士は語る。 NIHにより行われた本研究は、3家族から遺伝性寒冷蕁麻疹を患う27人を調査の対症にした。このアレルギー性疾患はかゆみや痛みを伴う蕁麻疹および湿疹、そして場合によっては寒さに対する重篤なアレルギー反応を引き起こすことが特徴的である。血液サンプルの分析の結果、患者の多くは自身の細胞や組織に対して抗体(自己抗体)を生成していることが分かった。これにより、自己免疫疾患を発症しやすくなっているのだ。また半数以上は再発性感染症の病歴があることが分かった。臨床検査の結果、患者の大半は感染と戦う抗体の数が少なく、循環する免疫B細胞の活性度も減少していた。これらは糖尿病・がん・老化のプローブとなる摩訶不思議なタンパク
まるでマジシャンが奇術を見せるように、mitoNEETタンパク質(糖尿病や癌、そして老化において重要な役割をもつ、まだ謎の多い物質)は、1カ所で動きを見せたかと思うと、より重要な活動を別の箇所で行っていたりするのである。このタンパク質が鉄や硫黄など、有毒な物質の構造部をどのようにコントロールしているのかを理解するため、ライス大学およびサンディエゴ、カリフォルニア大学(UCSD)の研究チームは室内実験とコンピューターモデリングを駆使し、mitoNEETの活動の一部を解読した。 この研究は2012年1月23日付けのPNAS誌に記載された。「我々は特殊な方法を使ってタンパク質を精査するのです。」と、ライス大学Harry C. and Olga K. Wiessの物理学と天文学の教授であり、理論生物物理学センターの共同代表であるジョゼ・オニュキック博士は語った「我々は生物物理学を用いて生物学を行ないます。これは実験において認められている、いないに関わりません。そして、これらのロジックが生物学的に重要であるかどうかを問うのです。」と、本研究のリーダー、UCSD生物化学科教授のパトリシア・ジェニングス博士は語る。ジェニングス博士はオニュキック博士と15年に渡り共同研究を行ってきているが、構造生物物理学で研究を進めることで、大幅に時間を短縮してきたと説明している。 例えば、ジェニングス博士の研究室では5年ほど以前に、mitoNEETが特殊な折りたたみ構造を有していることを明らかにした。それ以降、彼女の研究室では、タンパクの統計学的そして動力学的スナップショットから得られる情報を用いて、生物学研究と生化学研究を行なってきた。「タンパクとは動く部品で構成された機会であることを、みなさんは忘れているようです。私たちは統計学的スナップショットを開始し、機能的な動きをモデル化しました。」高々度の適応は遺伝子によるものなのか
アンデス地方やチベット高原などの高地に住む人々は、幾代にも渡り低酸素条件での生活に適応してきた。このような特徴的かつ強力な選択圧で生活をする様は、進化論において教科書のように良い例である。しかし、その遺伝子がどのようにして生存優位性を得ているのかは未だ解明されていない。この謎を解くため、ペンシルベニア大学の研究チーム(以下ペン・チーム)は、初となるゲノムワイドな高々度適応性の研究を始めた。 研究は、高々度に適応する主要人口の3位にあたるエチオピア高地のアムハラ族を対象に行われた。 驚くべきことに、3つのグループは全て異なる遺伝的変異を持ち、この適応性は収束進化によるものであると見られる。「これらの3つのグループは異なる遺伝的アプローチをとり、高々度に対する適応性を身につけたのです。」と、本研究の上級著者、ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院遺伝学科および統合文化生物学科の統合知識学教授、セーラ・ティシュコフ博士は語る。本研究はティシュコフ博士に加え、ペレルマン医学大学院遺伝学科の研究員、ローラ・B・シェンフェルト博士のもと行われた。 その他遺伝学科の研究員で本研究に貢献したのはサミール・ソイ博士、サイモン・ソンプソン博士、アレッシア・ランシアーロ博士、ウィリアム・ベッグス博士、シャリア・ランベルト博士、およびジョセフ・P・ジャーヴィス博士である。本研究はペン・チームとアディスアベバ大学生物学科のドーウィット・ウォルド・メスケル博士、ドーウィット・アバーテ博士、そしてガリア・ベレイ博士の共同研究で、2012年1月20日付けのゲノム・バイオロジー誌に掲載された。進化論における基本原則の一つに、自然淘汰がある。生物が己の環境に適していればいるほど生存率は高まり、その遺伝子を残す事が出来る。高々度な環境は酸素濃度も低く、気候順化していない者は急激に気持ち悪くなり、死に腺組織形成には回転運動が重要であった
乳房細胞が腺房と呼ばれる乳腺中の球状組織を形成する上で 重大な役割を持つ回転運動を発見した、と米国エネルギー省(DOE’S)ローレンス・バークレー国立研究所(Berkeley Lab)の研究チームが発表した。本研究は乳がんリサーチにはもちろん、基礎細胞生物学にも重要な意味を持つ。その接着性角運動のために、”CAMo”と呼ばれるこの回転運動は、細胞が球体を形成するのに必要不可欠なのである。 CAMoなしでは細胞は球体を形成することが出来ず、形体を損なうランダム運動を引き起こし、最終的には悪性腫瘍に発展する「この発見の素晴らしい所は、生物学に適用する細胞運動の物理法則を解く鍵となる可能性を秘めているということです。」と、乳がん研究の第一人者であり、Berkeley Lab生命科学科の顕著科学者、ミナ・ビッセル博士は語る。ビッセル博士と研究グループのポスドク物理学者、キャンディス・タンナー博士は、PNASに本研究を記述している論文の責任著書である。本論文は2012年1月25日付けのPNASオンライン版に記載された。健康なヒトの乳房および他の腺組織の上皮細胞は、球状腺房またはチューブ状の管を形成する。腺房形成により起こる細胞および組織の極性(細胞および組織構造の空間定位機能を有するもの)は、乳房の健康状態を維持するために必要不可欠である。細胞が球体を形成出来なければ極性は失われ、これは悪性腫瘍へ発展するサインとなる。 しかし、細胞の形態形成がここまで判明しているにも関わらず、上皮細胞が生体内でどのように集合し、サイズや形の類似した球体を形成するのかは未だ解明されていない。「我々は、単一細胞が複数回回転し、腺房を形成する過程での分裂時および集合時にもその回転運動を保持する、新規の細胞運動を発見しました。我々はまた、CAMoが球体構造を樹立する上で重要な機能であり、単なる多細シーケンシングで院内感染抗生物質耐性クレブシエラの遺伝的多様性明らかに
National Institutes of Health (NIH) の研究チームは、ゲノム・シーケンシングを使って抗生物質耐性の (Klebsiella pneumoniae) 肺炎桿菌シーケンス・タイプ258 (ST258) の進化を追跡調査した。この菌は院内感染症を引き起こす菌としてごく一般的である。以前には、ST258 K. pneumoniae菌株は単一の祖先から広がったものと思われていたが、NIHの研究チームの研究から少なくとも2つの異なる系統があることが証明された。 しかも、この2つの系統の主な違いが、細菌がヒトの免疫系と最初に接触する外膜と呼ばれる組織の生成に関わる遺伝子にあることを突き止めた。2014年3月17日付PNASオンライン版に掲載されているこの研究結果は、公衆衛生上大きな脅威になっている耐性菌感染症の診断、予防、治療の新しい方法を開発する大きな助けになることが考えられる。ST258 K. pneumoniaeは、カルバペネム耐性腸内細菌 (CRE) に分類される細菌の中でもヒトの感染症を起こす病原体としてもっとも一般的なもので、アメリカでは年間何千人もの人がこの細菌感染を発症し、600人ほどが亡くなっている。 CRE感染のほとんどは病院や長期ケア施設で起きており、CREとは関係のない疾患ですでに体が弱っていたり、特定の医療を受けている患者が発症している。この新しい研究では、NIHのNational Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID) の研究者と共同研究者が、ニュージャージー州の病院の2人の患者から採取したST258 K. pneumoniae株のゲノムの完全なシーケンシングを行った。この対照グループ・ゲノムをさらに83個のST258 K. pneumoniae分離試LC-MS分析で食物摂取のタイミングが結核治療の効果に影響することを突き止める
結核治療の初期段階で食物摂取のタイミングが治療効果に思わしくない影響を及ぼすことがある。2014年9月7日にドイツのミュンヘンで開催されたEuropean Respiratory Society (ERS) International Congressでプレゼンテーションされた新しい研究によると、結核治療薬服用直前に食物を食べると薬の効果が弱まる可能性がある。研究チームは、初めて結核の治療を受けるという患者20人を対象に簡単な研究を行った。 患者にはisoniazid、rifampicin、pyrazinamide、ethambutolなど、ごく一般的な結核治療薬が与えられた。治療薬は初日は注射で、2、3日めは経口で、絶食中または高炭水化物食と一緒に投与した。各患者から血液サンプルを採取、LC/MS/MSと呼ばれる分析化学テクニックでサンプルを分離、サンプル中の化学物質を調べた。このテクニックは、医薬品の濃度と循環器系に届いた元のままの医薬品の比率を評価することができる。 次に、同じ患者、同じ実験条件で食物摂取のタイミングだけを変えて実験を繰り返し、血液サンプルを採取した。実験の結果、高炭水化物食と共に治療薬を投与した場合、絶食中に投与した場合に比べると、isoniazid、rifampicin、pyrazinamideの血中濃度は低くなっていた。このことから、治療薬投与直前に高炭水化物食を食べると治療薬の効果が薄れることが考えられる。首席著者は、当時インドネシアのUniversitas Gadjah Mada在籍であり、現在はUniversity of GroningenでPh.D.プログラムを間もなく終えようとするAntonia Morita Iswariで、その論文の中で、「研究は同じ患者を対象に同じ環境で実施された。この中で変数は食餌だけであり、従って食物が医薬アレル特異的RNA-SeqでX染色体不活性化の遺伝子抑制過程を研究
女性の体の細胞は、卵細胞を除いてすべて2本のX染色体を持っており、男性のXY染色体に対して適正な遺伝子量補償をするため、この2本のX染色体のうち1本が不活性になる。オランダのRadboud University Nijmegenの分子生物学者、Dr. Hendrik MarksとDr. Henk Stunnenbergと、同じオランダのErasmus MC in RotterdamのDr. Joost Gribnauの率いる研究グループの共同研究は、この不活性化のメカニズムがX染色体全体に及んでいることを示した。最終的な研究結果はGenome Biologyに掲載されることになっており、2015年8月3日付けで暫定的なPDF版論文がオンラインで掲載された。 この論文は、「Dynamics of Gene Silencing During X Inactivation Using Allele-Specific RNA-Seq (アレル特異的RNA-Seqを用いたX染色体不活性化での遺伝子抑制過程)」と題されている。 性染色体は基本的に男性がX染色体1本、Y染色体1本を持ち、これに対して女性はX染色体を2本持つ。X染色体不活性化と呼ばれるプロセスは、初期胚発生の時期に女性のX染色体の1本を不活性化する過程であり、2本のX染色体のうちのどちらが不活性化されるかは決まっていない。X染色体不活性化の好例としてメスの三毛猫の毛色が知られている。三毛猫の毛色の遺伝子はX染色体にあり、2本のX染色体の各1本が黒または茶のいずれかのコードを持っている。三毛猫の毛の茶色の部分は茶色のコードを持つX染色体が活性であり、黒色の部分は黒色のコードを持つX染色体が活性である。正常なヒトの胚発生では、女性のX染色体不活性化は胚発達初期に起きる。また、X染色体不活性化に「Xist」分子が重要な致死的なラッサ・ウイルスの起源と進化が明らかに
アメリカと西アフリカの国際研究チームに参加していたスクリプス研究所の研究者は、エボラ・ウイルスに近い種で致死的なラッサ・ウイルスの古代の起源と、ラッサ・ウイルスの進化過程を明らかにする研究成果を発表した。新研究の筆頭著者で、スクリプス研究所の生物学者、Dr. Kristian G. Andersenは、「これでラッサ・ウイルスの進化過程が解明された。この成果はワクチンや治療法を開発する上で重要なことだ」と述べている。 毎年少なくとも5,000人がラッサ熱で亡くなっている。 ウイルスは、感染している野ねずみの一種、マストミス (Mastomys natalensis rodents。また、メスには複数の大きな乳房があることから「multimammate rats」とか「multimammate mice」と呼ばれることがある) の尿や糞便に接触することで感染する。マストミスはこのウイルスの自然宿主となっており、また人から人へとも感染する。2013年8月13日付で名声の高いCell誌の巻頭論文に採用されたこの研究では、国際的な研究チームが次世代シーケンシングと呼ばれる技術を用いて、ナイジェリアとシエラ・レオネで野生のマストミスとラッサ熱患者から採取したラッサ・ウイルスのゲノムを解析した。 この研究チームの上級メンバーには、Harvard UniversityとBroad InstituteのDr. Pardis SabetiとDr. Joshua Levin、Tulane UniversityのDr. Robert F. Garry、NigeriaのIrrua Specialist Teaching HospitalとSierra LeoneのKenema Government HospitalのDr. Christian Happiが加わっている。この論文は、「Clイオン対試薬用ソルナックチューブ LC/MS用オンライン脱塩チューブ
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Edited by Michael D. O'Neill
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