ヒトと微生物との関係は複雑である。どこのスーパーマーケットに行っても、抗菌性セッケンと体に良い細菌の増殖を助けるヨーグルトという相反するような商品が並んでいる。細菌には病気の原因になるものもたくさんあるが、Caltechの生物学と生体工学の教授、Dr. Sarkis Mazmanianと彼の研究チームは、人体内に棲み着いて、われわれを健康に保つ働きのある何千という種類の細菌に注目している。

 

Dr. Sarkis Mazmanianの過去のマウスを使った研究でも、善玉菌を増やすことで、炎症性腸疾患、多発性硬化症や自閉症でさえ症状を緩和できることが示されている。博士の研究チームは、血中の免疫細胞が悪玉菌感染と戦うために、善玉菌が役立っていることを突き止めた。

2014年3月12日付「Cell Host & Microbe」に掲載された最近の研究で、侵入者の病原菌に対して防衛前線の役目を果たす先天免疫細胞という特殊化した白血球の成長にとって善玉菌が必要不可欠であることを突き止めている。免疫細胞は血中を循環するだけでなく、脾臓や骨髄にも備蓄されている。


研究チームが、腸内細菌を持たずに生まれた無菌マウスと、正常な腸内細菌数を持っている健康なマウスのこれらの器官での免疫細胞数を調べたところ、無菌マウスでは免疫細胞独特のマクロファージ、単球、好中球などの数が健康なマウスに比べてかなり少ないことが突き止められた。また、無菌マウスは、いくつかの成熟免疫細胞に分化することのできる幹細胞に似た顆粒球や単球の前駆細胞もかなり少なかった。さらに、脾臓に備蓄されている先天免疫細胞には欠陥があり、様々な腸内細菌を持った健康なマウスに比べるとかなり数が少なかった。
Dr. Mazmanian研究室の大学院生、Arya Khosraviは、「このような微生物が自分たちの棲んでいる腸内に留まらず、体の免疫に影響しているというのは興味深い。細菌が居るはずのない血液、脾臓、骨髄などにも免疫力での影響を及ぼしている」と述べている。

さらに、Khosravi院生と同僚研究者は、無菌マウスの血中の免疫細胞を減らした場合、有害な細菌のListeria monocytogenesによる感染を抑えることができるかどうかを調べた。このListeria monocytogenesはかなり研究が進んでいるヒトの病原菌で、マウスの免疫反応を調べる時によく用いられている。健康なマウスならListeria菌を注射されても菌を抑え込むことができるが、無菌マウスにとっては感染は致命的である。
そこで健康なマウスの腸内細菌を無菌マウスに移植すると免疫細胞が増加し、マウスはListeria菌感染にも打ち勝つことができるようになった。次に研究者は、悪玉菌も善玉菌も死滅させる広域スペクトル抗生物質を健康なマウスに投与した後、Listeria菌を注射した。興味深いことに健康なマウスがListeria菌感染に対して苦戦した。

Dr. Mazmanianは、「この研究の臨床データは見ていないが、臨床的にも同じ結果が出るのではないかという仮説を立てている。たとえば、股関節手術の後、患者に抗生物質が投与されるが、そのため腸内細菌に損害を与え、手術とは何の関係もない感染に対して抵抗力を奪うことになっていないか?」と述べている。さらに重要なことは、この研究で健全な数の腸内細菌があれば、むしろ抗生物質に変わる感染予防効果があることが示されており、Khosravi院生は、「現在、抗生物質乱用による耐性菌のスーパーバグが増えており、細菌感染症を治療することが難しくなってきている。感染しやすさを抑え込むことは感染予防対策として有効ではないか」と述べている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Relationship Between Gut Bacteria and Blood Cell Development Helps Immune System Fight Infection

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