胎盤を介して母親の抗体が胎児へ移動するメカニズムを調査。新生児を保護するためのより強力なワクチンの開発へ。
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世界中で感染症を減らす上で最も成功した介入の1つであるワクチン接種だが、新生児を保護する上では依然として有効性が限られている。 マサチューセッツ総合病院(MGH)、MITおよびハーバード大学によるラゴン研究所の研究は、妊娠中のワクチン誘発免疫がどのようにして胎児に移るのかを決定した。これはより効果的な母体ワクチンの開発に影響を与えるだろう。
Cellの6月27日号に掲載されたこの論文のタイトルは「Fcグリカンによる胎盤抗体導入の媒介調節(Fc Glycan-Mediated Regulation of Placental Antibody Transfer)」と題されている。
「新生児は、子供自身の成長と同じく、自ら有益・有害な微生物の両方に対処することを学ぶ必要がある真新しい免疫システムと一緒にこの世界に到着する。」と、Cell論文の共著者でラゴン研究所およびマサチューセッツ総合病院(MGH)医学部のGalit Alter博士(写真)は語った。「新生児の免疫システムが敵と味方を区別することを学ぶのを助けるために、母親は胎盤を介して抗体を胎児に移す。胎盤がこの絶対的に不可欠な機能を果たす規則は知られていなかったが、これが解明されれば新生児を保護するためのより強力なワクチンとなるだろう。」
はしかなど一部の病気に対する母親の抗体は母親から乳児に移すことができ、子供が個々のワクチン接種に十分な年齢になるまである程度の保護を提供するが、ポリオのような他の深刻な病気に対する抗体はあまり効率的に移転されない。
抗体が母親から子供へと伝達されるメカニズムを調査するために、Alter博士と彼女のチーム(前MGH産科婦人科、現在はWeill Cornell Medicineの産婦人科長である共著者のLaura Riley医師を含む)はシステム血清学と呼ばれる新しいツールを使用して、母親の血液サンプルと、乳児への胎盤への血液、栄養素、および免疫因子を含む臍帯から百日咳に対する抗体の品質を比較した。
彼女らの調査により、胎盤は先天的免疫システムの重要な要素であるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する抗体を胎児に優先的に送達することを明らかにした。 いくつかの重要な免疫細胞は、新生児に効果的な防御を提供するには未熟すぎるが、NK細胞は人生の最初の日に最も豊富で機能的な免疫細胞の一つだ。
同チームは、小児期の一般的な病気であるインフルエンザおよびRSウイルスに対するNK活性化抗体の胎盤への移入が同様に好まれることを見出し、また胎盤への選択を規制すると思われる抗体の特徴、母親から子供への抗体移転を伴う次世代ワクチンに組み込まれる可能性のある特徴を特定した。
共著者のRiley博士は、「我々は今、より良い母体ワクチンを作製し、妊娠中の理想的な時期にそれらを送達する機会を得て、新生児が最も脆弱なときに最大限に保護するだろう」と述べた。
Riley博士は、世界中で予防接種を受けやすくするための主要な支持者であるSabin Vaccine Instituteから旅費サポートを受けている。 彼女とAlter博士は、母性乳児免疫のさらなる側面を積極的に調査し、改善された母性ワクチンの開発への道を切り開こうとしている。
Alter博士はハーバード大学医学部の医学教授、Riley医師はWeill Cornell Medicineのギブ財団の産婦人科教授である。 Cell紙の筆頭著者はラゴン研究所のMadeleine Jennewein氏である。
ラゴン研究所
MGH、MITおよびハーバード大学の共同によるラゴン研究所は、Phillip T.とSusan M. Ragon Foundationからの寄付を受け、免疫システムを利用したヒトの病気と闘い治癒するための科学的使命のために2009年に設立された。
この研究所の主な目的は、効果的なエイズワクチンの開発に貢献することだ。 ラゴン研究所は、免疫コントロールや免疫不全のメカニズムを解明し、患者に利益をもたらすために、ハーバード、MGH、MITの各コミュニティ、そして世界中の様々な専門分野の科学者やエンジニアを集めている 。
BioQuick News:Researchers Gain Useful Vaccination Clues from Studying Mother’s Transfer of Antibodies Across Placenta to Fetus
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