第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会レポート3

第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会レポート3

サイエンス出版部 発行書籍

ロッテルダムで開かれていた第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会金曜日全体会議では、著名な免疫学者で細胞生物学者のFrancisco Sanchez-Madrid, PhDが、「Immune Cell-Cell Communication: Mechanisms of MicroRNA and Protein Sorting into Exosomes (免疫細胞間情報伝達: microRNAやタンパク質がエキソソームに入り込むメカニズム)」のタイトルで講演した。



Dr. Sanchez-Madridは、Universidad Autonoma de Madridの教授であり、マドリッドのLa Princesa Hospital, Immunology Departmentの長も務めている。ひな段会議室をぎっしりうめた800余人の参加者を前に、博士の講演は2つの主題を中心にして行われた。

一つは、免疫シナプスを通してエキソソームによって行われる遺伝子とミトコンドリアの構成物質の輸送(免疫シナプスとは、抗原提示細胞または標的細胞と、エフェクターT細胞またはナチュラル・キラー細胞などのリンパ球との接点のインターフェース。また、免疫シナプスは、免疫細胞間の情報伝達のために、その接触面に一時的に構成される膜とも定義される)。もう一つは、miRNAやタンパク質がエキソソームに収まるメカニズムについてだった。


博士は、まず免疫シナプスにおいて、miRNAを含んだエキソソームが活性T細胞から一方通行で放出されることについて語り、ついで、このエキソソームにはmtDNA結合タンパク質も含まれている証拠を提示した。事実、次世代シーケンシングにより、エキソソームの中にはミトコンドリア・ゲノム全体を含んでいるものもあることが示されている。さらに博士は、mtDNAが受容細胞のシグナル応答を引き起こすかどうかを調べた。博士は、「T細胞エキソソームには、本来の免疫反応の阻害因子としての役割があるのではないか」と述べている。そこから、話題はmiRNAやタンパク質がエキソソームに入り込むメカニズムに移った。

博士は、miRNA中の短いモチーフがmiRNAをエキソソーム中に送り入れることを決めるものであり、hnRNPA2B1と呼ばれる分子がその短いモチーフを介してエキソソームのmiRNAに結合すると語った。また、タンパク質については、一部はユビキチンで分解されるが、分解されずにエキソソーム内に放出されるものもあると述べている。また、ISGylationは、多胞体 (MVB) の数を減らし、リソソームによるMVB分解を引き起こすと述べ、さらに、TSG101サイレンシングがエキソソームの放出を阻害すると語った。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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