幼児の稀で致命的な障害であるクラッベ病の原因が特定された。薬物療法の実証試験は疾患マウスモデルに効果を示した。

幼児の稀で致命的な障害であるクラッベ病の原因が特定された。薬物療法の実証試験は疾患マウスモデルに効果を示した。

セントルイスのワシントン大学医学部の研究者らは、通常3歳前後で発作、発達退行、および死をもたらす小児の致命的な遺伝子障害「クラッベ病」に至る正確な生化学的パスウェイについて、数十年にわたる謎を解決したようだ。このクラッベ病のヒト疾患マウスモデルを用い、この研究者らは可能な治療戦略を見つけ出した。

 


2019年9月16日にPNASでオンラインで公開されたこの論文は、「クラッベ病における酸性セラミダーゼの遺伝的アブレーションによりサイコシン仮説が確認され、新しい治療標的が特定された。(Genetic Ablation of Acid Ceramidase In Krabbe Disease Confirms the Psychosine Hypothesis and Identifies a New Therapeutic Target.)」と題されている。

クラッベ病としても知られる乳児球状細胞白質ジストロフィーの患者は、神経ワイヤーの軸索を絶縁する保護被覆を徐々に失う。この稀な状態(出生100,000人に約1人に影響を及ぼす)は、通常1歳前に診断され、急速に進行する。 研究者らは、サイコシンと呼ばれる有毒化合物の蓄積がこの障害で神経の絶縁が破壊される原因であると長い間疑っていた。 遺伝性疾患の患者は、サイコシンの分解に関与する重要なタンパク質を欠いている。 しかし、クラッベ病のサイコシン源はとらえどころのないものであり、問題を解決することは不可能だ。

「幼児期のクラッベ病は常に致命的だ。」と、ワシントン大学医学部の教授である上級著者のMark S. Sands 博士は述べた。 「これは、1世紀以上前に発見された神経変性疾患だが、効果的な治療法はまだない。ほぼ50年間、サイコシンの仮説は正しいと想定されてきた。 しかし、我々はそれを証明することができなかった。」
驚くべきことに、大学院生の Yedda Li 氏が率いたSands 博士と彼のチームは、本質的にマウスに別の致命的な遺伝病を与えることによって、サイコシン仮説が正しいことを証明した。

「ファーバー病とクラッベ病の両方を引き起こす遺伝的変化を伴う胚発生を通じて、これらのマウスが生き残ることは期待していなかった」とSands 博士は述べた。 「これらの遺伝的問題の組み合わせが、マウス胚にとって致命的であるか、少なくとも両方の疾患に特徴的な問題の何らかの組み合わせを引き起こす可能性が高いと感じていた。マウスが生きているだけでなく、 原因となる遺伝学を持っているにも関わらず、我々は考えうるあらゆる方法でそれをテストしたが、それは衝撃的な結果だった。」
サイコシンの蓄積がなければ、これらのマウスはクラッベ病を発症せず、50年に渡る仮説が証明された。

サイコシンの毒性蓄積の引き金として酸性セラミダーゼを特定した後、Sands 博士と彼の同僚は、クラッベ病のマウスに酸性セラミダーゼ阻害剤として知られている薬(カルモフール:carmofur)を与えた。この薬物は、がんの治療に使用される一般的な化学療法剤だ。この薬は、クラッベ病のモデルマウスの寿命を少し延ばした。
「カルモフールはそれ自体非常に有毒であるため、この病気の治療薬としては決して使用できないが、適度な治療効果を示した。」とSands 博士は述べた。 「この研究は、薬物で酸性セラミダーゼを阻害でき、クラッベ病の症状のいくつかを緩和するという概念を実証している。しかし、それを過度に阻害するとファーバー病を引き起こすため、バランスを取る必要がある。 」

Sands 博士は、医薬品開発を専門とする研究者がこの障害に対する安全で効果的な酸性セラミダーゼ阻害剤の開発に取り組むことを望んでいると述べた。
この研究はBioMarin Pharmaceutical、テイラー研究所 、MACC基金そして国立衛生研究所(NIH)によって支援された。


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写真(左):マウスの神経の正常な断面。ミエリンの保護層は、軸索と呼ばれる神経ワイヤーを取り囲んでいる
写真(右):ミエリンの保護層の損失とその後の神経破壊を引き起こすクラッベ病のマウスの神経断面
(Credit: Sands Lab)

BioQuick News:Cause of Rare, Fatal Disorder (Krabbe Disease) in Young Children Pinpointed; Proof-of-Concept Drug Therapy Benefits Mouse Model of Disease

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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