樹状細胞由来のエクソソームが多発性硬化症の治療候補に - Neuroscience 2013
サイエンス出版部 発行書籍
現在、多発性硬化症 (MS) の治療方法には髄鞘再形成を促進するようなタイプのものはない。しかし、2013年5月10日、サンディエゴで開かれていたSociety for Neuroscience 2013年総会において、取材に対して、University of Chicago Medicine, Director of the Migraine Headache ClinicでProfessor in Neurosciencesを務めるRichard Kraig, M.D., Ph.D.は、「血液中に存在する免疫細胞の一種、樹状細胞を骨髄から採取培養し、刺激を与えることで エクソソーム (画像参照) と呼ばれる小粒子を放出させることができる」と述べた。 このエクソソームを脳に送り込むと、エクソソームは髄鞘形成を著しく促進し、一方、MSなどによる脱髄的な損傷が起きているところでは髄鞘再形成を促した。MSは炎症性の疾患で、希突起膠細胞減少、脱髄、脳の損傷を受けた領域の髄鞘再形成不能などを伴う。中枢神経系の希突起膠細胞は、軸索を取り巻く絶縁体のミエリンを生成し、これは神経信号伝達に不可欠である。希突起膠細胞の損傷と、それに伴って起きるこのミエリンが消失する脱髄は重大な神経障害をもたらすことになる。 髄鞘再形成は、希突起膠細胞前駆細胞を損傷領域に集めることで自動的に始まる修復作業といえる。その後、前駆細胞が希突起膠細胞に分化し、消失したミエリンを補うことができるようになる。一般にMS患者は、初めのうち再発寛解という疾患経過をたどり、不完全な髄鞘再形成による部分的な回復を見せる。しかし、時間経過とともにこの修復能力が衰え、二次性進行型多発性硬化症に至り、疾患経過は着実に悪化していく。現在、アメリカ国内のMS患者は40万人を超えており、医療にとっても非常な重圧になっている。最
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