エキソソーム由来MicroRNAが多発性硬化症のパワフルなバイオマーカーになり得るとの新研究

エキソソーム由来MicroRNAが多発性硬化症のパワフルなバイオマーカーになり得るとの新研究

University of SydneyのBrain and Mind CentreとRoyal Prince Alfred Hospitalが中心となって行った画期的な研究で、多発性硬化症 (MS) の患者の血液中に疾患特有の物質が含まれていることを発見、若年成人の神経障害としてはもっとも一般的なこの疾患を確実に診断するバイオマーカーになるという結果を得た。2017年10月30日付Scientific Reportsオンライン版に掲載された研究論文は、簡単な血液検査だけで、「調節異常」のmicro-RNAの微小分子を発見し、それによってMSを正確に診断し、また患者の疾患の段階の違いも判定できたと記述している。



オープンアクセス論文として掲載されたこの論文は、「Exosomal MicroRNA Signatures in Multiple Sclerosis Reflect Disease Status (多発性硬化症固有のエキソソーム由来MicroRNAが疾患状態の指標に)」と題されている。

現在のところ、MSを確実に発見する検査法はなく、疾患の診断と観察は、臨床診察、MRI、脳脊髄液検査、電気生理検査などに頼っている。MSは慢性疾患であり、しかも現行の診断、観察検査は金がかかる上に疾患の異なる段階を判定するにもその能力には限界がある。同研究チームは、健康人とMS患者を識別するバイオマーカーを発見しただけでなく、再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) と進行型多発性硬化症という2種のMS亜型を判別する9種の固有なmicro-RNA分子を見つけている。

MS患者の70%ほどが再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) であり、これはしばしば二次進行型MSに発達することがある。MS患者の10%から15%は、発症当初から進行型と診断される一次性進行型MSである。研究チームはさらに研究の対象にされなかった他の進行型MS患者グループでも9種のmicro-RNA分子のうち8種の検証に成功し、この研究結果の再現性を実証した。RPA HospitalのDepartment of NeuropathologyとUniversity of SydneyのBrain and Mind Centreの長を兼任するAssociate Professor Michael Bucklandは、「この研究で、血中循環エキソソーム由来のmicro-RNAがMS診断のバイオマーカーとして優れているだけでなく、MSの亜型を高い精度で予測するのにも優れていることが初めて確認された」と述べている。


この研究は、Royal Prince Alfred HospitalとUniversity of Sydneyが、Brain & Mind Centreに共同で運営している学際的なMultiple Sclerosis Clinicの患者の好意によって可能になった。また、研究資金はMS Research Australiaのインキュベータ助成金によってまかなわれた。

MS Research AustraliaのCEO、Dr. Matthew Milesは、「この血液検査でMS患者の早期治療が可能になっただけでなく、それぞれの症状に最適な治療を判断することができるようになった。その研究成果から、再発を減らし、脳容積の減少を抑え、それによって患者のMS進行を遅らせ、できれば食い止められるようになるかも知れない。さらには、個別患者の疾患の亜型を早期に判定することで症状や治療の不確実さを取り除き、どの患者にも最善の治療結果をもたらすことができるようになる」と述べている。
MSは、中枢神経系 (CNS) の慢性炎症性脱髄疾患である。


研究チームは、MS疾患のバイオマーカーとしての血清(血液)エキソソームにおけるマイクロRNA(miRNA)の有用性を評価した。
マイクロRNAは、代謝、発達および免疫系などの細胞生命にとって不可欠な多くの遺伝子およびプロセスを制御する、小さな非コードRNA分子である。それらは非常に短く、18-25塩基しかないので、miRNAと呼ばれています。科学はこれまでに約1,800のヒトmiRNAを同定してきた。

エキソソームは、体内のほぼすべての細胞型によって放出されるナノサイズの粒子であり、時にはマイクロRNAおよび他のタイプの小型RNAでパックされる。研究チームは以前、いくつかのマイクロRNAが細胞からの放出のためにエキソソームに選択的にパッケージングされることを示した。
エキソソームは体内の健康な細胞と病気の細胞の両方から放出される小さなパッケージです。それらは血液中を循環し、血液の単一のバイアルから数百万で精製することができます。エキソソームは体内を循環し、情報の積み荷をほぼリアルタイムで複数の細胞に運ぶことができます。
MSなどの炎症性疾患では、循環するエキソソーム濃度の有意な増加がある。

「健康なボランティアとMS患者の血液エキソソームを研究するにあたり、研究チームはMSの正確な診断だけでなく、病期の異なる患者の差別も行うMSの「分子サイン」を確認しました」とBuckland准教授は述べています。

「脳細胞によって放出されたエキソソームは血液中を循環するので、脳の病気を監視するために簡単にアクセスできる方法を提供しており、臨床試験として大きな可能性を目の当たりにしています。

エキソソームが血液脳関門を通過すると、MS患者の循環エキソソームの一部は、冒された中枢神経系細胞または関連炎症環境に由来する可能性がある。

研究者らは、MSに関連する生理学的変化およびその進行が、血清エキソソームマイクロRNAの違いに反映されると仮説を立てた。
次世代シーケンシングとインテグレーテッドバイオインフォマティクスを用いて、血清エキソソームのミクロRNAプロファイルはMSを健常対照と区別するだけでなく、再発寛解型MS(RRMS)と進行性MSを高精度で区別することができました。

BioQuick News:Exosome-Associated MicroRNAs May Be Powerful Biomarkers for Multiple Sclerosis, New Study Shows

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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