人間や哺乳類やワームのヘモグロビンは全て同じ祖先遺伝子から進化したと新研究が示唆
ヘモグロビンはいくつかの種で独立して出現したが、実際には共通の祖先によって伝達された単一の遺伝子に由来することが、フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ大学、ソルボンヌ大学、サンクトペテルブルク大学そしてリオデジャネイロ大学の科学者らによる新研究で示された。これらの調査結果は、2020年12月29日にBMC Evolutionary Biologyのオンラインで公開された。 このオープンアクセスの論文は「海洋環形動物Platynereis dumeriliiのグロビンは、左右相称動物のヘモグロビン進化に新たな光を当てる。(Globins in the Marine Annelid Platynereis dumerilii Shed New Light on Hemoglobin Evolution in Bilaterians.)」と題されている。
赤血球を持つことは、人間や哺乳類に特有のものではない。 この色は、脊椎動物だけではなく環形動物(最も有名なメンバーがミミズであるワームファミリー)、軟体動物(特に池のスネイル)そして甲殻類( ミジンコ)の循環系にも見られる酸素の輸送に特化した複雑なタンパク質であるヘモグロビンに由来する。
ヘモグロビンがこのような多様な種に出現するためには、進化の過程で何度か「発明」されたに違いないと考えられていた。 しかし、最近の研究では、「独立して」生まれたと考えられているこれらのヘモグロビンはすべて、実際には単一の祖先遺伝子に由来することが示された。
フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ大学、ソルボンヌ大学、サンクトペテルブルク大学そしてリオデジャネイロ大学(ブラジル)の研究者 は、赤い血を持つ小さな海洋ワームであるPlatynereis dumeriliiについてこの研究を行った。
このワームは、その遺伝的特性がほとんどの動物の海洋の祖先であるUrbilateria(左右相称動物の最後の共通祖先)に近いため、ゆっくりと進化した動物と見なされている。 これらのワームについて赤血球を持つ他の種と比較研究することが、ヘモグロビンの起源を遡ることに役立った。
この研究は、ヘモグロビンが属する幅広いファミリー(グロビン:酸素や一酸化窒素などのガスを「貯蔵」するほとんどすべての生物に存在するタンパク質)に焦点を当てた。 しかし、ほとんどのグロビンは、ヘモグロビンのように血液中を循環しないため、通常は細胞内で作用する。現在の研究は、赤血球を持つすべての種において、「サイトグロビン」と呼ばれるグロビンを作るのは同じ遺伝子であり、独立して進化してヘモグロビンをコードする遺伝子になったことを示している。 この新しい循環分子は、祖先での酸素輸送をより効率的にし、より大きく、より活発にした。
この科学者らは今、規模を変えて、左右相称動物の血管系のさまざまな特殊な細胞が、いつどのように出現したかを研究したいと考えている。
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海洋ワームPlatynereis dumeriliiの血管系は3つのセグメントに分かれている。(Credit: © Song et al. / BMC Evolutionary Biology)
BioQuick News:Hemoglobins in Different Species Evolved from Same Ancestral Gene, New Study Suggests
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Edited by Michael D. O'Neill
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