AIを活用した仮想実験室「CREME」が遺伝子研究に新たな可能性を開く
遺伝子変異の中には、治療法として活用できるものが隠れているかもしれません。しかし、その可能性を証明するためには、膨大な時間とコストを要する実験が必要です。Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)のピーター・クー博士(Peter Koo, PhD)とその研究チームは、この課題に革新的なアプローチを提供しました。新たに開発されたAI搭載の仮想実験室「CREME(cis-regulatory element model explanations)」は、わずかな操作で数千の仮想実験を実行できるプラットフォームです。このツールを活用することで、遺伝子研究者はゲノムの重要領域を特定し、その機能を理解する第一歩を踏み出すことが可能になります。
CREMEの基本原理とCRISPRiとの関連性
CREMEは、CRISPR干渉法(CRISPRi)に基づいて設計されています。CRISPRiは、特定の遺伝子の活性を抑制する技術ですが、実験室で実施するには非常に手間がかかり、スケールも限られています。一方、CREMEは仮想環境で同様の遺伝子操作を行い、その影響を予測します。この点について、クー博士は次のように述べています。
「現実の実験では、CRISPRiの規模や範囲に制約があります。しかし仮想実験では、この制約を超えることができ、前例のない規模で数十万の実験を行うことが可能です。」
CREMEの応用とAIツール「Enformer」の解析
CREMEの初期試験として、研究チームはAI駆動のゲノム解析ツール「Enformer」を使用しました。EnformerはDNA配列から遺伝子発現を予測する強力なアルゴリズムを備えていますが、その内部プロセスについては十分に理解されていません。クー博士の研究では、Enformerがゲノム解析中に学んだ「遺伝子調節のルール」をCREMEを通じて明らかにしました。
「強力なモデルが正確な予測を行う理由は、遺伝子調節のルールを学習しているからです。しかし、その予測の根拠を十分に解明する方法がこれまでありませんでした」とクー博士は述べています。
この研究により、Enformerが学んだ一連の遺伝子調節ルールが明らかになり、この知見が今後の創薬研究に役立つ可能性が示唆されました。
創薬とアクセスの未来
CREMEのさらなる改良によって、遺伝子発現を正確かつ予測可能な方法で調整する新たな選択肢が開かれると期待されています。また、実験室を持たない研究者でもこの技術を活用し、新しい治療標的を発見することができる可能性が広がります。
この新たな研究成果は、2024年9月16日にNature Geneticsに掲載されました。論文のタイトルは「Interpreting cis-Regulatory Interactions from Large-Scale Deep Neural Networks(大規模深層ニューラルネットワークによるシス調節相互作用の解釈)」です。



