癌細胞は遺伝子の異常を獲得することで、無制限に成長・増殖することができる。X染色体は、通常XXの女性細胞でのみ不活性化されるが、男性由来のさまざまな癌細胞で不活性化される可能性があるという。本研究は、2022年11月9日、Cell Systems誌に掲載された。

このオープンアクセス論文は、「ヒトの男性癌における体細胞性XISTの活性化とX染色体不活性化の特徴(Somatic XIST Activation and Features of X Chromosome Inactivation in Male Human Cancers)」と題されている。

 

男女間の遺伝子発現のバランスをとるため、正常な発生では、女性のX染色体の1コピーが、人体全体でランダムに不活性化される。我々は、正常な発生で起こるこのプロセスが、遺伝的に不安定な男性または女性の癌細胞で狂うかどうかを知りたかった」と、ボストンにあるダナファーバー癌研究所の癌遺伝学者で腫瘍内科医のスリニヴァス・ヴィスワナサン医学博士は言う。

研究チームは、世界中の癌患者から採取した数千のDNAサンプルからなる公開データセットを用いて、分析した男性の癌サンプルの約4%に、X染色体上の遺伝子発現を停止させる役割を持つ遺伝子「XIST」が高発現していることを突き止めた。

XISTは男女を問わず発生のごく初期に発現している可能性があるが、Xの不活性化は発生後期の女性特有のプロセスであると考えられている。以前、一部の女性の癌細胞がX染色体の一方をオフにする能力を失い、X連鎖遺伝子の発現が増加する可能性が示されたが、このX不活性化の能力は、まだ主に女性の細胞でしか研究されていなかった。

4%の異常な男性の癌サンプルのうち、74%はすでにX染色体が不活性化されている生殖器系の癌であったが、その他の癌種のサンプルは26%であった。その中には、肝臓癌、脳腫瘍、皮膚癌、心臓癌、肺癌、甲状腺癌などが含まれていた。

「XISTは通常、女性の癌を分類するのに使われる転写産物なので、この結果が単に誤ったアノテーションの結果ではないことを確かめたかった。しかし、実際には、多様なサブタイプの男性癌の中には、XISTを活性化し、X不活性化の特徴を示すものがあることがわかった」とヴィスワナサン博士は言う。

「我々は、この種のデータセットを扱う際の注意点を認識しておく必要がある。」と、ダナファーバー癌研究所の癌生物学者であるチャン・チェンチョン博士(共著者)は述べている。「これは、我々にとって、最大の不確実性の源だ。我々は、どのようにデータを見て、コントロールを見つけるかについて、創造的でなければならない。」

なぜこのような現象が起こるのか、その説明の一つとして考えられるのは、遺伝子の不安定性だ。癌は染色体のコピーが複数あることが多く、たまたま1つの細胞に2本のX染色体がある場合、その細胞が女性か男性かにかかわらず、XISTを活性化して片方を不活性化する必要があるのかもしれない。

「もう一つの可能性は、X染色体上に重要な遺伝子があり、それが不活性化されると癌が増殖することだ。この点については、今後の研究で調査する予定だ。」「ある意味、性別はヒトを細分化する究極のバイオマーカーだ。しかし、性別による遺伝子の違いが、癌の予後や治療に対する反応にどのように影響するかについては、あまり考えられていない。」とヴィスワナサン博士は述べている。

[News release] [Cell Systems article]

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