リボソームの製造工場「核小体」、その設計図はRNA自身だった!構造操作も可能に
私たちの細胞が生命活動を維持するために欠かせないタンパク質。その製造工場である「リボソーム」が、どこで、どのようにして生まれるのか、その誕生の瞬間は長らく謎に包まれていました。特に、リボソームRNA(rRNA: ribosomal RNA)が新しいリボソームへと姿を変える場所である、細胞核内の高密度領域「核小体」の内部を覗き見る方法がなかったためです。しかし今回、ついにそのブラックボックスの扉を開く画期的な研究成果が発表されました。 2025年7月2日に科学雑誌Natureに掲載されたこの論文は、ロックフェラー大学、プリンストン大学、ブリュッセル自由大学の共同研究によるものです。この研究は、rRNAがどのようにしてリボソームを作り出すのかを明らかにしただけでなく、rRNA自身が核小体の「設計図」の役割を果たしていること、そして、その設計図を少し書き換えるだけで核小体の形や構造を作り変えることさえ可能であることを示しました。このオープンアクセスの論文のタイトルは、「Mapping and Engineering RNA-Driven Architecture of the Multiphase Nucleolus(RNAが駆動する多相的な核小体の構造のマッピングと操作)」です。 「私たちは今や、細胞小器官(オルガネラ)全体の構造を設計し、操作することができるのです」と、ロックフェラー大学タンパク質・核酸化学研究室を率いるセバスチャン・クリンゲ(Sebastian Klinge)博士は語ります。「これにより、原子レベルの構造と細胞全体の構成との間のギャップを埋め、オルガネラの形と機能を司る正確な分子メカニズムを解き明かすことに、また一歩近づきました。」 リボソームの誕生 核小体は、初めて観察されたオルガネラのひとつで、細胞核の中でひときわ濃く見えるため、見
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Edited by Michael D. O'Neill

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