癌細胞が独自のコラーゲンを作り、免疫反応から身を守ることを発見。特異性の高い治療法の可能性を示唆。

癌細胞が独自のコラーゲンを作り、免疫反応から身を守ることを発見。特異性の高い治療法の可能性を示唆。

テキサス大学MDアンダーソン癌センターの研究者らによる新しい研究によると、癌細胞は独自の形態のコラーゲンを少量生成し、腫瘍マイクロバイオームに影響を与え、免疫反応から保護する独自の細胞外マトリックスを形成していることが明らかになった。この異常なコラーゲン構造は、人体で作られる正常なコラーゲンとは根本的に異なるため、治療戦略上、極めて特異的なターゲットとなる。
2022年7月21日にCancer Cellに掲載されたこの新しい研究は、癌生物学講座およびジェームズ・P・アリソン研究所の運営ディレクターであるラグ・カルーリ医学博士(写真)の研究室で既に発表された知見を基に、線維芽細胞によって作られるコラーゲンおよび癌細胞によって作られるコラーゲンの固有の役割に新しい理解をもたらしているものであり、癌細胞によって作られるコラーゲンがどのように機能しているかということを明らかにするものだ。
このオープンアクセス版のCancer Cell論文は「癌細胞由来の発癌性コラーゲンIホモトリマーは、α3β1インテグリンに結合し、腫瘍のマイクロバイオームと免疫に影響を及ぼし、膵臓癌を促進する(Oncogenic Collagen I Homotrimers from Cancer Cells Bind to α3β1 Integrin and Impact Tumor Microbiome and Immunity to Promote Pancreatic Cancer)」と題されている。

「癌細胞は、非定型コラーゲンを作って、独自の保護細胞外マトリックスを作り、その増殖と生存能力、T細胞の撃退に役立っている。また、癌細胞が増殖するのに役立つように、マイクロバイオームを変化させる。このユニークな適応を解明し理解することで、これらの影響に対抗するための、より具体的な治療法をターゲットにすることができる。」と、この研究の筆頭著者であるカルーリ博士は述べている。

I型コラーゲンは、体内で最も多く存在するタンパク質で、線維芽細胞によって産生され、主に骨、腱、皮膚に存在する。これまで、腫瘍中のコラーゲンは癌の発生を促進すると考えられていたが、カルーリ博士の研究室では、膵臓癌の進行を抑制する保護的な役割を担っている可能性が高いことを明らかにした。
通常のコラーゲンは、2本のα1鎖と1本のα2鎖からなるヘテロ3量体で、細胞外マトリックスの一部として集合し、3重らせん構造を形成している。ところが、ヒトの膵臓癌細胞株を調べたところ、この細胞はα1遺伝子(COL1a1)しか発現しておらず、線維芽細胞は両方の遺伝子を発現していることが判明した。
さらに解析したところ、癌細胞はエピジェネティックな超メチル化によってα2遺伝子(COL1a2)をサイレンシングし、3本のα1鎖からなる癌特異的コラーゲン「ホモトライマー」を形成していることがわかった。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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