寒さで自己免疫疾患に立ち向かう:寒さで免疫系のエネルギーを奪うことで、多発性硬化症の症状を緩和できることが実証された。

寒さで自己免疫疾患に立ち向かう:寒さで免疫系のエネルギーを奪うことで、多発性硬化症の症状を緩和できることが実証された。

進化生物学において、1950年代に提唱された「生活史理論」は、環境が整っているときには、生物が使用する資源は成長と繁殖に充てられるとしている。逆に、敵対的な環境下では、エネルギーの節約や外部からの攻撃に対する防御など、いわゆる維持プログラムに資源が振り向けられる。ジュネーブ大学(UNIGE)の科学者らは、この考えを、自己免疫疾患の原因となる免疫系の異常な活性化という特定の医学分野に発展させた。研究チームは、多発性硬化症のモデルマウスを用いて、寒さにさらされた生体が、免疫系から体温維持に資源を振り向ける仕組みを解明した。実際、寒さの中では、免疫系の有害な活動が減少し、自己免疫疾患の進行が大幅に抑制された。この結果は、Cell Metabolism誌の表紙を飾っており、エネルギー資源の配分に関する生物学的な基本概念に道を開くものである。この研究論文は、2021年10月22日にオンライン公開され、「寒冷環境下での免疫系リプログラミングによる神経炎症の抑制 (Cold Exposure Protects from Neuroinflammation Through Immunologic Reprogramming)」と題されている。

自己免疫疾患は、免疫系が自分の体の器官を攻撃することで起こる。例えば、1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓細胞が誤って破壊されることで起こる。多発性硬化症は、中枢神経系(脳と脊髄)の最も一般的な自己免疫疾患だ。この病気は、神経細胞を保護するミエリンが破壊されることが特徴で、ミエリンは電気信号を正しくかつ迅速に伝達するために重要な役割を果たしている。ミエリンが破壊されると、麻痺などの神経障害が生じる。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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