"ソフト" CRISPRが遺伝子欠損の新たな治療法を提供する可能性。1本鎖DNAの"ニック"による標的修復が、新しい疾患治療法の基盤になる可能性。
サイエンス出版部 発行書籍
遺伝性の衰弱性疾患を治すことは、現代医学の大きな課題の一つである。過去10年間、CRISPR技術の開発と遺伝学研究の進歩は、患者とその家族に新たな希望をもたらしたが、これらの新しい手法の安全性は依然として大きな懸念材料となっている。2022年7月1日発行のScience Advances誌に、カリフォルニア大学サンディエゴ校の博士研究員シタラ・ロイ博士、専門家アナベル・ギチャード博士、イーサン・ビア教授を含む生物学者チームが、将来的に遺伝的欠陥を修正できるかもしれない新しい、より安全なアプローチについて説明している。この自然のDNA修復機構を利用する戦略は、広範な遺伝性疾患を治療する可能性を有する新しい遺伝子治療戦略の基礎を提供するものだ。このオープンアクセス論文は「ショウジョウバエ体細胞におけるCas9/ニッカーゼによる相同染色体テンプレート修復による対立遺伝子変換(Cas9/Nickase-Induced Allelic Conversion by Homologous Chromosome-Templated Repair in Drosophila Somatic Cells)」と題されている。 多くの場合、遺伝性疾患の患者は、両親から受け継いだ2本の遺伝子のコピーに、それぞれ異なる変異を有している。つまり、一方の染色体上の変異が、もう一方の染色体上の機能的な配列と対応することがよくあるのだ。この研究者らは、この事実を利用するために、CRISPR遺伝子編集ツールを採用した。 「健全な変異体は、変異体DNAを切断した後、細胞の修復機構によって欠陥のある変異を修正するために使用することができる。驚くべきことに、これは単純で無害なニックによってさらに効率的に達成できる。」と、この研究の主執筆者のギチャード博士は述べている。 研究チームは、ミバエを用い、目の色素の産生によっ
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