人間と同じように、細菌や古細菌もウイルスに攻撃されることがある。これらの微生物は、病原体に対する免疫防御戦略を独自に開発してきた。CRISPR-Casシステムなど、細菌が外敵から身を守るための防御システムは、多様なタンパク質と機能を有している。
CRISPRリボ核酸(crRNA)は、「ガイドRNA」として、ウイルスのDNAなど、外来ゲノムの標的を切断するための領域を検出する。crRNAによって誘導されたCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)は、ハサミのように標的を切断することができ、この自然界の戦略を人間は多くの技術で利用してきた。

「これまでさまざまなヌクレアーゼが新しい技術や改良技術に応用されてきたことを考えると、この分野の発見は社会に新たな利益をもたらすかもしれない」と、ヴュルツブルク・ヘルムホルツRNAベース感染症研究所(HIRI)のチェイス・バイゼル博士は研究動機を語っている。この研究所は、ブラウンシュヴァイク・ヘルムホルツ感染研究センターとヴュルツブルクのユリウス・マクシミリアン大学(JMU)の協力のもとで運営されている。バイゼル博士は、Benson Hill社(ミズーリ州)のマシュー・ベゲマン博士、米国ユタ州立大学のライアン・ジャクソン博士とともに、CRISPR-Casシステムの特定のセットに関する今回の研究を開始した。

この成果は、2023年1月4日付のNature誌に掲載され、同じくライアン・ジャクソン博士が率いる第2チームとテキサス大学のデイビッド・テイラー博士による詳細な構造解析も併せて発表された。このオープンアクセス論文は「Cas12a2はRNAをトリガーとしたdsDNAの破壊により、感染を中断させる(Cas12a2 Elicits Abortive Infection Through RNA-Triggered Destruction of dsDNA)」と題されている。

他のCRISPRヌクレアーゼとは一線を画す。

「我々は、もともとCas12aとひとくくりにされていたCRISPRヌクレアーゼを探索していた。」と、本研究の筆頭著者であるオレグ・ドミトレンコ博士は語っている。「一旦、それらの多くが確認されると、それらはCas12aとは十分に異なっており、より深く掘り下げる価値があることに気付いた。この探索は、我々がCas12a2と呼ぶこれらのヌクレアーゼが、Cas12aだけでなく、他の既知のCRISPRヌクレアーゼとも非常に異なることを発見することにつながった。」

その決定的な違いは、その防御作用のメカニズムにある。Cas12a2は、侵入したRNAを認識すると、それを切断するが、細胞内の他のRNAやDNAにも損傷を与え、細胞の増殖を阻害し、感染の拡大を抑制することができる。
HIRIのポスドクであるドミトレンコ博士は、「一般に、感染を阻止するこのような防御戦略は、細菌で知られている。他のいくつかのCRISPR-Casシステムも、このような仕組みになっている。しかし、単一のヌクレアーゼに依存して侵入者を認識し、細胞のDNAとRNAを分解するCRISPRベースの防御機構は、これまで観察されていなかった。」と言う。

調査結果の詳細

Cas12a2は、そのタンパク質配列と構造から、Cas12aとは区別されたヌクレアーゼである。プロトスペーサー・フランキング配列(PFS)により活性化されたCas12a2は、ガイドRNAと相補的な標的RNAを認識する。標的RNAは、RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNAを分解する付随的な核酸切断を誘発する。この活性は細胞停止につながり、おそらく細胞内のDNAとRNAを損傷することで成長を損なうと考えられる。Cas12a2は、原理実証により、分子診断やRNAバイオマーカーの直接検出に利用できることが示された。

破壊的な裂け目

Nature誌の同号に掲載された論文の著者である別の研究チームが行ったこのヌクレアーゼの構造解析では、Cas12a2は免疫反応の様々な段階で標的RNAに結合した後、大きな構造変化を起こすことが示された。これにより、RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNAなど、遭遇したあらゆる核酸を切断することができる核酸分解酵素の裂け目が露出するのである。また、Cas12a2を変異させることで、RNAを認識した後に分解する核酸を変化させる方法も発見された。
これらの具体的な内容は、将来的に幅広い技術的な応用を可能にする可能性を持っている。この2つ目のオープンアクセス論文は「RNA標的がCRISPR-Cas12a2の無差別ヌクレアーゼ活性を引き出す(RNA Targeting Unleashes Indiscriminate Nuclease Activity of CRISPR-Cas12a2)」と題されている。

ヘルムホルツRNAベース感染症研究所

ヘルムホルツRNAベース感染症研究所(HIRI)は、リボ核酸(RNA)研究と感染症生物学を融合させた世界初の研究機関だ。強力な基礎研究プログラムから得られた新しい知見に基づき、ヒトの感染症をより適切に診断・治療するための革新的な治療法を開発することが、この研究所の長期的な目標である。
HIRIは、ブラウンシュヴァイク・ヘルムホルツ感染研究センター(HZI)とユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク(JMU)の協力のもと、ヴュルツブルク・メディカルキャンパス内に設置されている。
詳細は、www.helmholtz-hiri.deを参照されたし

[News release] [Nature article 1] [Nature article 2]

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